3

二人の祝儀には、顰め面をした親族と泣いて喜ぶ親族が出席しておりました。


花婿は顔を隠した花嫁と酒を交わして契りを交わします。


花嫁もまた、静かに酒を飲み干しました。


「あんな傷物を欲しがるなんて……」

「仕方なく娶ってやったんだろう?」

「昔は見合い話もよく来ていたべっぴんさんだったのに……」

「家に押し入った男に火鉢で焼かれたんだとよ?」

「あの婿さんだって、いい処の見合い話があがっていたんじゃなかったかい?」

「あぁ…けど、あの花嫁さんが押し切ったって話だ」

「ホント、嫌な娘だよぉ……」

「可哀想にねぇ?花婿さんも」


ボソボソと聞こえる下世話は、確かに二人の耳に届いていました。


花婿は素知らぬ顔をして、花嫁は角隠しの下でひっそりと泣いておりました。


「久子<ひさこ>!」


花嫁は知りました。


幼馴染みが見合いをする事を。


「俺、今度見合いするんだ……」

「えっ…?」


昔の約束も忘れているのでしょう。


所詮は口約束。


そう思った花嫁は……。


「良かったじゃない。頑張ってね?」


彼を…幼馴染みを諦めました。

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