傷物の花嫁

冬生まれ

1

白無垢衣装を身に纏い、角隠しで顔まで隠して、その花嫁は嫁いで行きます。


黒二羽織に袴を拵えた花婿は花嫁を見つめ、いつものように嫌悪な表情<かお>で言いました。


「よかったなぁ、婚約が出来て……」


花婿は花嫁に近付くと、角隠しを剥ぎ取って花嫁の頬を鷲づかみにします。


「こんな面<ツラ>でも俺がお前を娶ってやるんだ。有難く思えよ?」


焼け爛れた顔を花婿はまじまじと見つめ、舌でなぞる様に痣を舐め上げました。


「はい、有難く存じます」「そうだ。それでいい……」


花婿は花嫁をきつく抱き締め、命令する様に囁きました。


祝儀の後、私は貴方のモノになる……。


それは二人の間で昔から契られていた約束でした。


「大きくなったら娶ってやるよ!」


幼心に交わした誓い。


「何があっても絶対に」


火鉢で出来てしまった傷物の花嫁を。


「だから、心配するな!!」


花婿は言いつけ通りに。


「傷物なんてやめときな?」


周りの反対を押し切って。


「嬉しゅう御座います。旦那様……」


私を…嫌々ながらも、娶って下さいます。

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