第35話
僕に叩き起こされた母は、僕の勢いに圧されてか、一瞬ぼうっとしたかと思うと、ぼんやりした顔付きと声で幼馴染みは右隣の病室に居ると教えてくれた
僕はそれを聴くと一目散に痛む身体に鞭を打って、右隣の病室へと急いだ
頼むから無事でいてくれ―――
僕はただそれだけを願った
そんなに広くはない病室だったが、一歩一歩が物凄く遠く感じた
途中で転けそうになった時は母が慌てて支えてくれたので、倒れずに済んだ
そして、幼馴染みの病室にやっとの思いで辿り着くと、
幼馴染みが寝ているはずのベッドの周りには幼馴染みの母、悦子(エツコ)さんや医者、看護師が慌てた様子で居た
それに厭な予感は更に募る
「――と――の用意を!
急いで!!」
「はい!」
医者と看護師が叫ぶ様に会話して、幼馴染みに何かを注入したりしていた
状況から、幼馴染みの容態が芳しくない事を理解した瞬間に僕は幼馴染みに駆け寄った
「潤!!
起きろ、潤!!
約束――、約束したじゃないか!!
直ぐに追い付くって!!
だから………、だから早く戻って来いっ、潤!!!」
気付いたら僕は幼馴染みの頬をペチペチと叩きながら怒鳴っていた
どうしても、言いたい事があった
僕を助けてくれた幼馴染みに
目の前がぼやけてくる
幼馴染みの顔が僕の涙で歪んで見える
ぽつりと僕の涙が幼馴染みの頬に落ちた
そして、幼馴染みの瞼が揺れた
「……痛いよ、朱鷺音…」
「潤…!
良かった……っ」
目を覚ました幼馴染みに嬉しくて抱きつく
幼馴染みは痛みに呻きながらも僕の背中に腕をまわしてくれた
幼馴染みがここに生きていると確認できた安心感からか、僕の意識はここで途絶えた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます