第7話 未来が少しずつ変わって行く。

「俺も今日が初出勤だから一緒に行く?」


「よかった~、一緒だね。あっ、わたし夢咲 奏ね、よろしくね」


「あっ、あぁ……俺は時野 拓朗だよ。よろしく……」


(そうだ、2週目だからこっちが一方的に奏を知ってるけど向こうは知らないんだった)


 初出勤日、どういうわけかはわからないが確かにそこにいたのは奏だった。しかも彼女も今日が初出勤日なのだと言う。


(おかしい……奏がこの職場でバイトを始めるのは大学生の頃のはずなのに。まさか、俺が色々と行動を起こしたことで未来が変わってしまったのか?)


 バタフライエフェクトという言葉がある。


 風が吹けば桶屋が儲かるというように、ほんの小さな出来事が、巡り巡って大きな出来事に繋がるという効果のことである。


 つまり拓朗が過去の出来事を次々と改変しているうちに、なんらかの形で奏がこの職場でバイトをすると決断する理由を生み出してしまったのかもしれない。


 そのように拓朗は結論付けた。


(なんにしても感慨深いな……高校生の奏か)


 奏は高校の制服を着ており、暗めの茶髪にミディアムヘアだった。大学生の頃の彼女は髪色が明るく、ロングヘアにウェーブもかかっていた。


 もちろん今でも十分お洒落だが、拓朗は大学生の頃の彼女を知っているために初々しさを感じる。しかし美人で圧倒的なカリスマ性を感じるところはこの頃からなんだな……と拓朗は思う。


 もちろんそんな心境を知られるわけにはいかないので、1周目の情報を先走って口にしないよう細心の注意を払いながら、拓朗は奏と歩いた。


(拓朗……今度こそ、絶対に離さないから)


 そんな奏の心の声には気付くこともなく――

 

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