2024年6月
6月23日 さよなら 予告 カーテン
1 予告状に記された指定場所は廃墟。崩壊を畏れず不気味に揺らめくカーテンに身を隠し、あちこちに穴を開けながら命の駆け引きをする。辿り着いた礼拝堂で、互いの額に銃口を突きつける。恐怖より、彼をこの手であの世に送れることに歓喜する。「さようなら」「あばよ」2つの銃声は聖歌のように響いた。
2 進路が違う俺たち。俺は最後の思い出が欲しかった。「さよならだ」予告もなしに唇を奪い、呆然としている彼を置いて逃げるつもりだった。「逃すかよ」想定外だったのは、彼は驚くことなく俺の腕を瞬時に掴んだこと。カーテンが靡き、桜舞い散る景色が広がる。彼は驚いて振り向いた俺の唇に齧り付いた。
6月25日 強ばる オーケーオーケー ベッド
1 口枷を噛まされ、ベッドに縛り付けられた俺に、奴は革製の巻物を広げた。ずらりと並ぶ卑猥な凶器。顔が強ばった俺を見て、奴は聖人のように微笑む。「オーケーオーケー。まずは優しいやつからいくって」白皙の手がパドルを選び取る。「大丈夫。天国みせてやるよ」ふざけんな。地獄の間違いだろ。
2 オーケーオーケー落ち着け俺。イケメンランキング1位の先輩にラーメンをぶっかけられた俺は彼の部屋にお邪魔していて、シャワーとシャツを借りてお暇するはずだったが、何故かベッドに押し倒されている俺!そりゃ体も強ばる。でも、先輩はごめんねと言いながら俺を美味しく食べてしまった。なんで⁉︎
6月26日 口説く まつげ 印
1 左頬に三つ並んだ黒子。その目印を手掛かりに見つけた。長いまつげに大きな目。薔薇のように赤い唇。この女顔をどうすれば扇状的に見えるかは自覚済み。毎夜酒場でさりげなく視線を送り、誘いをかける。そして、とうとう奴は俺を口説いてきた。俺が、自らの手で葬ったはずの、婚約者の弟とも知らずに。
2 バサバサと羽ばたくまつ毛と、左の目尻にある黒子。歩く色気と噂の社員がいると聞き、俺は空き時間に彼を観察した。なるほど?首に赤い印が付いている。相当遊んでるんだろう。俺と同じか。そう思った、その日の夜。俺は行きつけのバーで彼に口説かれていた。きっと彼は俺が社長だと気付いていない。
6月28日 おかしい ドロドロ 追わないの?
1 溺愛していた恋人の浮気現場を目撃した。心のどこかでやっぱりという言葉が浮かび上がる。「追わないの?」隣にいた、体の関係のある親友に問われたが、なんだかどうでもいいように思えた。だって、恋人を甘やかすより、こいつにドロドロに甘やかされる方が心地よくて好きなんだ。なあ、おかしいだろ?
2 彼の同僚にドロドロとした嫉妬を向けると、いつも彼は「おかしいね」とクスクス笑い、頭を撫で、唇を重ねてくれる。今日も秘書と談笑しながら廊下を歩く彼。「追わないの?」俺たちの関係を知っている同僚が俺をけしかける。「追うに決まってんだろ」俺は静かに立ち上がると、彼の背中を追いかけた。
6月29日 甘ったるい カレイドスコープ チラチラ
1 カレイドスコープの中はチラチラと雪が踊っているようだ。眺めていると思い出す。雪が舞い散る夜、二人で食べた甘ったるいケーキ。互いに差し出した小箱。中には相手のサイズの指輪。今は俺の胸に二つとも揺れている。「俺を置いていくなんて薄情だな」恨み言をユーモアで返してくれる君はもういない。
2 「カレイドスコープ?」初めて見る外国の玩具。中を覗くとチラチラと桜が降っているようだった。「綺麗」「そうですね」同意する彼は、甘ったるい表情と声で僕を見つめる。「どっちのこと?」「さあ?どっちだと思います?」そう言いながら僕を畳に押し倒す彼からは、外国特有の刺激的な香りがした。
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