2024年4月

4月4日 足元 ステップ 締めつける


1 調子外れな鼻歌と、変なリズムのスキップ。俺は走っているはずなのに、なんで距離が縮まっていくんだ。「鬼ごっこ飽きたなぁ。もういいよね?」突然、耳元で聞こえた耳障りな声。地面に蹴り倒され、全身に鈍い痛みが走る。無様に転がった俺の手首に手錠をあてがうと、奴はそれを思いっきり締めつけた。


2 甥っ子にスキップの練習に付き合わされ、手本を見せろと足元を観察される。やめて、俺もスキップできない。プレッシャーで胃がキリキリと締めつけられたのは昼のこと。その夜、電話で付き合いたての彼に愚痴ると。「俺が教えてあげる。スキップも、夜のこともね」おッお手柔らかにお願いします。




4月26日 強ばる 呼吸 鳴らす


1 「あれ、して」そうねだると彼の顔が強ばった。鳴らされた喉。喉仏を指でなぞり催促すると、諦めが山茶花の花弁のようにはらりと落ちる。「わかった」首にかかる太い指。呼吸が制限されて視界が白み、支配された体が歓喜する。「好き」か細い声で彼への愛を謳う。狂ってるって?まさか。これは純愛。


2 目の前で繰り広げられるマジックは僕だけのもの。次は何が起こるのか胸を高鳴らせていると、目の前に一輪の薔薇が差し出された。「どうぞ」それを受け取るとパチッと指が鳴らされ、手の内の感覚が変わり体が強張った。覗いたそこには銀に輝く指輪。呼吸困難になるほど泣いて喜んだのは誇張ではない。




4月26日 下着 点滅 誘う


1 廊下の電気が点滅し始めたのは半年前。交換される気配のないオンボロアパートの、ベランダとも言えない小さなスペースに下着を干す。それは宴に誘う合図だ。鍵の締まらない角の部屋。縛られた生贄。集まった獣たち。俺は主催者として、狂乱の様相を肴に酒を煽った。その生贄に自己投影をしながら。


2 丘の上の洋館に幽霊が出るらしい。噂を確かめに足を踏み入れると、電気が通っていないはずなのにシャンデリアが点滅した。「幽霊を退散させる方法、知ってるか?」俺は今日のために新調した下着を披露してセのつく友人を誘う。「知ってる」丸出しの尻を撫でた彼は、獰猛な目を光らせ舌舐めずりをした。

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