第28話


「あー食った食った!」

「全部食いやがったな」

「あっはっは!やっぱり地上の食い物は美味いな!」

 腹をさするイスラ、これが天使だとは思わないだろ。

「俺は人間がすきだからよ!だから頑張れよ?」

「イスラは何をしに来たんだよ?」

「ん?お前を見にと、飯を食いにと、あー、あと、俺の仕事は地獄の監視人だ。悪魔が地上に出て来てないかを見て回ることかな?」

「とってつけたような言い訳だな、おい」

「あ、あははは、それじゃあな!」

「またな!」

「…おう!またな」

 イスラは消えるようにしていなくなった。


 あとはもう1人か、それにしても天使に認められたのなら大行進デスパレードってのはなくなったようだな。


「ふわぁぁ、眠いな」

 ベッドに横になるとそのまま眠ってしまった。


「はぁ、昨日のまんまだったな」

 朝から片付けをして着替えると出かける準備だ。

 またいつ57階層に行くかわからないからそのために食材やいろんなものを買いに出かける。

 インベントリは時間を思い通りにできるから時間を停止しておけばいつでも大丈夫だ。


 スーパーやコンビニ、ファーストフードなどを買い漁ると甘味処をみつけ、入って行く。

「とりあえず全種類ください」

「あ、これも」

「へ、あ、アズラーなんとか?」

「アズラーイールね」

「なんでお前が?」

「…それよりこれとこれも」

「はぁ、わかったよ!好きなの選べ」

 子供の姿のアズラーイールは甘味処のイートインで豆大福を頬張ると嬉しそうにしている。

「なんだよ、昨日のイスラといい、何しに来てんだ?」

「ん…イスラだけズルいから」

「そんだけかよ!」

 まぁ。他に何かあるよりはいいけどな。

 お茶を啜るアズラーイールはほんとに天使なのか?


「次はドーナッツ」

「へ?まだいくのか?」

「まだ入る」

「はぁ、わかりましたよ」

 白髪の男に銀髪の子供なんて見てくださいと言わんばかりだな。

「そう言えばミーカールもそのうち来ると思う」

「はぁ、最後の1人か、そいつは何が好きなんだ?」

「さぁ?」

 話の続かない子供だな。

「ほら、好きなの選べよ」

「こ、こんなに食べれない」

「しゃーねぇな。持ち帰りだ!」

 全種類持ち帰りにして持って行く。

「あとタピオカ」

「…なんでも知ってんだな」

 タピオカミルクティーを買って持たせてやると、

「じゃ、またね」

「おう、気をつけてな!」

「うん」

 と言って消えて行った。

 はぁ、買い物をしてても現れるんだな。

「そうだな」

「ウオっ!な、なんだよ!ミーカールか!?」

「そうだ。私は喫茶店でいいぞ」

「はいはい分かりましたよ」

 近くの喫茶店に入る。

 姿は銀髪のロン毛で黒い服を着ている美男子だな。両手にタトゥーが入っている。

 2人ともコーヒーを頼んで話をする。


「今回はジブリールが選んだ男を見に来た」

「あーそうですか」

 コーヒーが運ばれて来て砂糖とミルクを淹れるミーカール。

「お前は人間だ、神の力を甘く見るなよ?」

「わかってら!昨日釘刺されたからな」

「そうか、俺からはそれだけだ、聞きたいことはあるか?」

 初めて聞きたいことが聞ける気がした。


「全てのダンジョンにあれだけの数のエルフやダークエルフ達がいるのか?」

「それは違うな、50階層から下は全て繋がっている」

「そうか!ならあれだけの人数なんだな!よかった。…あと、神の力ってなんだ?俺が持っててもいいものなのか?」

「それは正しくもあり間違ってもいる。ジブリールが選んだならそれに答えればいい」

「…ハッキリしないんだな」

「ハッキリはしている。ただその道が今後どのような道になるかはお前次第だ」

 そうか、ハッキリしないのは未来だからか。


「分かった、ご期待に添えるよう頑張るよ」


 ミーカールはコーヒーを飲んでから一緒に外に出て雑踏の中に消えて行った。


 まだ買い物をしないとな。

 またファーストフードやスーパーを回りながら食べ物を中心に集めて回る。

 ようやくある程度買い物を終わりにして公園のベンチに腰掛けると。

「これくらいあればいいだろう!」

「なにが?」

「オワッ!」

 そこにいたのは叶だった。

「どうしたんだ?他の2人は?」

「ん?いつも一緒のわけないじゃない」

「まぁそうだな」

 叶とは2人は久しぶりと言うか最初に会った時以来だな。

 あの時は死にかけていて助けてもらったな。

「ハハッ」

「なーに?」

「いや、初めて会った時のことを思い出してな」

「あはは、そう言えば助けてその後助けられてだったね」

「そうだな!」

 叶は明るく素直だ。

「ここはよく来るのか?」

「うん、お父さんとの思い出の場所だから」

 そうか、大災害か。

「そうか、ならいい場所だな」

「うん!今はもういないけどたくさん遊んでもらったのよ?」

「そうか、いいお父さんだな」

「大災害で仕事に行ってたお父さんを亡くしたの」

「そうか、お母さんは無事だったんだな」

「そう、お母さんは今もここには来れない。思い出が多すぎるから」

「まだ抜け出せないんだな」

「うん」

「大丈夫だ!また大災害なんて俺たちで消してしまえばいいだろ!」

「そうね!そのためには強くならなくちゃね!」


 大災害の被害者は何も亡くなった人だけじゃなく残された人だって被害者だからな。

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