第12話


 起きると昼まで寝ていたようだ。

 流石に昨日は激しく動きすぎたようだな。あちこちが筋肉痛で痛い。

 今日はもうゆっくりしとこうとソファーに座るとスマホが鳴るので取る。

「はい」

『あ、杏だよ!父に変わるね』

『もしもし、ご無沙汰してます』

「いえ、こちらこそ、どうしました?」

『あぁ、ポーションの売り上げが上がっていて薬草の供給が間に合わないほどです』

「それはうれしい悲鳴ですね」

『はい!ご無礼かと思いましたが開発者として三割を振り込ませていただきましたのでご確認ください』

「え!そんなにですか?よかったのに」

『だめですよ?あなたがいなければ救えない命もあったのです!そこはちゃんと受け取ってください』

「あはは。わかりました。ありがとうございます」

『それでは』

『まってまって!ユウ!ご飯行こうよ!』

「いいぞー、今日か?」

『うん!みんなにも言っとくね』

「わかったよー」

 と言ってスマホを切ると、どこに食いに行こうかと悩んでしまった。スマホで検索するか。


「こちらでございます」

「ありがとうございます」

 と座敷に通されたところは日本料理屋だ。

たまには贅沢に良いだろ?

「わー、旅館みたいやー!」

「良いんですがこんなところ?」

「あぁ、金は使わないとな?」

「えへへ、ありがと」

「そうだ、3人にこれをあげたかったんだ!」

 インベントリからスキルボールを三つ出す。

「え!スキルボール!」

「スキルボール!?」

 杏が起き上がって見てくる。

「なんで?」

 と叶が聞いてくるので、

「一つは俺が使わないから、二つは3人に必要だから」

 と話をする。


「うそ!え!これ何が入ってるの?」

「絶対高いやつやん!」

「あはは、二つは手に入れたのは偶然?かな、一つはこの前宝箱から出て来た」

「すっごーい!」

 宝箱からは結構な確率で出てくるが、低階層だとあまり良いものは出ない。


「一つは『瞬歩』、もう一つは『斬撃』、最後は『火炎魔法』だけど、おれは『氷結魔法』と『雷電魔法』ももってるから交換は可能だ」

「うおっ!ドンピシャで欲しかったやつだ!」

「私に『斬撃』…」

「な、悩むなぁ。そんなに選択肢があるなんて」

「まぁ、二人は決まってるから使いなよ」

 と二人の前にスキルボールを置く。

「い、いいの?一億くらいするよ?」

「あはは、金じゃないからな」

「使う!ありがと!」

 と叶が使うと、

「私もありがとー」

 と杏も使う。

「わ、わ、わたしは雷電魔法でお願いします!」

「よし、ほら」

「使います!!」

 とクリスも使う。

 3人ともステータスを見てるのだろう、呆けているな。

「失礼します」

「はい」

「お待たせしました、料理長からご挨拶させてください」

 と料理長が来たようだ。

「今回は貴重なミノタウルスの肉を卸してもらい大変ありがとうございます。丹精込めて作りましたので料理の方お楽しみください」

「分かりましたありがとうございます」

 料理が運ばれて来てもまだステータスを見てる3人に、

「ほら、せっかくの料理が冷めちゃうよ?」

「あ、はい!」

「うわぁ、綺麗!」

「勿体無いですね」

「よし食おう!乾杯」

「「「カンパーイ」」」

 ようやく3人も食べておしゃべりが弾む。

「ねえねぇ、なんでスキルボールそんなに持ってたの?」

「んー、必要なスキルは持ってるからな」

「げ!すごい自信!」

 杏が後ずさる。

「あはは、まぁ、強くなれてよかったな!」

「「「はい」」」

 満面の笑みの3人は料理を全て平らげてタクシーで帰っていった。


 俺はいつもの腹ごなしの散歩だ。

 

 月が綺麗に見えるとこだな。

 ビル群に入るとまた見えなくなるがな。


 自販機を見つけ缶コーヒーを買って飲みながら帰る。


 さて、つけてくるのは誰かな?

 と空き缶を投げると頭に当たり倒れる男。

「あはは!当たりだな」

「て、てめぇいつから気づいてやがった!」

「いや。俺の目は特殊だからさ、つけられても分かるんだよね?」

「く、くそ!にげるぞ!おわっ!!」

 『神速』で先回りをすると、

「どこに?どうせあの坊ちゃんあたりだろ?」

「そ、そうです!だから許して下さい!」

「んー。一緒に行くか!どうせ俺を連れてこいとか言われたんだろ?」

「は、はい」

 車を持って来させて後ろに乗り込むと車は廃工場まで行く。


「ハァ。手が込んでるな」

「つ、連れて来ました!そ、それでは!」

 と逃げて行く二人組み。

「…別に逃げなくても良いのにな?」

「て。テメェはもうおしまいだ!こっちはA級の助っ人を呼んだからな!」


「こいつ倒すだけで百万なら安いな!」

「へぇ、A級なのにこんなことするんだ?」

「うるせぇよ、お前は倒されとけば良いんだよ!『強打』!」

 普通にスキルを使ってくるが『強打』なんてBランクスキルだろ?

「当たらないよ?てか、お前本当にAか?」

「な!お、おい!話が違うぞ?」

「いや、だってこいつはF級」

「今はCだけどな」


「な、なんだ、ビビらせんじゃねーよ!なら俺にもぉ…」

 と腹を殴ると失神してしまう。

「何だ。やっぱり弱いな」

「ひ、ひぃ!お、お前!どんなスキルボール当てたんだよ!」

「…だから、お前のスキルボールはクソだったんだよ!俺のスキルで生き返ったけどな!」

「く、くそ!おまえぇ!!?」

 俺は坊ちゃんの首を掴んで持ち上げると、

「次は殺すからな?」

「は、はひぃ」

“ドン”

 と床に放り投げると失神する坊ちゃん。

「はぁ、こんな奴に使われてたなんてな…」

 と廃工場から出たのは良いが。

「あいつら逃すんじゃなかったな」

 歩いてタクシー乗り場を探し、ようやく家に辿り着いたのは明け方だった。

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