おっさんSクラスジョブで無双する

あに

第0話


「ありあとやしたー」

「ご馳走様です」

 仕事帰りに安い定食屋で腹一杯食べて、寮に帰る。

 しがない派遣業でいまや大冒険時代に取り残された俺は化石だ。


 数十年前にモノリスと言う石板が乱立し、そこからダンジョンという謎の迷宮が出来た。

 モノリスに触るとその人にあった職業や魔法、スキルなんかが付与されてステータスってのが見れるようになる。

 異世界説と地球説があったが、どちらかはわからない。


 俺も学生時代だったから好奇心で胸がいっぱいだったなぁ。


 結局は夢敗れてこんな生活になってるけどな!

 剣聖だ、大魔導士だと皆が騒いでる時に、おれは『ビルダー』と言うハズレ職業についちまった。

 スキルは『構築』と『分解』、あとユニークはインベントリと言う異空間収納だ。ユニークだけ当たりな職業だ。


 最初はSクラスのスキルだったので試行錯誤してみたが、『分解』でなんでも『分解』でき、『構築』で元に戻せるだけだった。


 それから10年、今年でもう33だ。


「おいおっさん!さっさと直せよ!」

「はい!いまやってますから」

 俺の仕事は設備のメンテナンスだ。

「ったく、これしかできねーんだからちゃんとやれよな?」  

 オッサンオッサンって、4つしか変わんねーじゃねーか!

「それ終わったらこの荷物運んでけよ!」

 

「おい!お前ら!サボってねぇで仕事しろ!!」

 班長の山田さんが来て檄を飛ばす。

「だって、こいつが!」

「お前らがサボってることは知ってるんだぞ?相葉ばかりに働かせるな!」

 コイツらにはメンテナンスは無理だろ?

「はいはい、山田さんだってコイツが使えないの知ってるでしょ?」

「それでもだ!」

「クッ!わかりましたよ!どけ!このカス!」

「ウグッ!」

「はぁ、お前ら仲良くやれ」

 と口ではなんとでも言える。

「あ?やれって言ったのはあんただろ!」

「誰に向かって口聞いてんだ!あ?」

「すいません」

「お前らそこやっとけよ?」

「はいはーい」

 山田さんは俺に向かうと、

「おまえももう長いんだからそこらへんちゃんとしろよ?」

「はは、すいません」

「今日は早上がりだ、さっさと済ませろよ?」

「あぁ、大晦日でしたね」


 大晦日はうちの派遣会社で行われるビンゴ大会がある。金持ちの坊ちゃんの道楽である。

 それでスキルボールでも当たれば売って金ができるのになぁ。


 なんてことを思って参加したビンゴ大会。

 今年も最後の方でDVDプレイヤーだと思っていたら、


「お!ビンゴ!!ビンゴだ!」

 俺のビンゴカードが1番になった!


「おー!冴えないおっさんが最初のビンゴだ!こりゃ大どんでん返しもあるんじゃないか?」

 前に出て商品を受け取ると、

「一等は鑑定なしのスキルボール10個セットだ!」

「お、おぉ?」

 鑑定なし?

「いや。いつも中身がわかってたら楽しくないだろ?だから『鑑定』してないスキルボールだ!使うまで何が出るかわかんないぞ?」

 た、ただのゴミじゃねーか!

「な、なんだそりゃー!!!」

「あはははは!!その顔が見たかった!じゃー、おっさんは降りて次の番号は15!!」

「あははは」


 …なんてこった、『鑑定』してなけりゃただのゴミなんだよ。『鑑定』して初めて価値がわかるのに『鑑定』は一回10万。

 そんな金どこから出てくんだよ。


 俺はその箱をインベントリにいれて、たらふく食べ、飲んで寮に帰って寝た。


 目が覚めると頭が割れるように痛い…

 顔を洗いにいくと髭面の浮腫んだおっさんだ。

 顔を洗ってインベントリからタオルを出し、顔を拭くとさっぱりする。


 今日は一年の始まりだ。


 テレビをつけると冒険者…お笑いはどこに行ったのやら。


 それでもアニメはやってるのが不思議なとこだな。

 需要があるのだろうな。


 ふとインベントリにあるものが入っているので出してみるとスキルボールの詰め合わせだ。

 『鑑定』なしの10個、クソの役にも立たない。

 一矢報いたかったが、こんなものではどうにもならない。

 豪華な箱に入っているが中身はどうせガラクタだから箱を破いてインベントリに入れる…と、中身がわかるな。


 F「精神集中」…精神を集中する。

 F「瞬間」…瞬く間。

 F「牛歩」…牛の歩み。

 E「修練」…磨き鍛えること。

 F「金眼」…金色の目。

 E「剣舞」…剣による舞。

 F「得心」…納得すること。

 E「鋭利」…刃物などが鋭く切れ味の良い事。

 E「寝技」…柔道などで寝て技をかける事。

 F「美術」…視覚で捉えることを目的として表現された芸術。


「は、はは!何にもいい事ないじゃないか!涙でボヤけてくる」

 せめて、せめて一つだけでもいいものがあればまた違っただろうに。


 俺は涙で霞む目でインベントリを消そうとしたが、文字が動いた?!


 涙を拭き文字を動かしてみると動く。

 もしかしてこれも『分解』しているのか?


 とりあえずE『剣舞』とF『美術』から動かしてA『剣術』に変えてみる。

 そしてスキルボールを出して割ると俺のステータスに剣術が足されていた!!


 俺の10年間は帰ってこないが、いまからでも希望が見えて来た。


 このまま S『神眼』A『瞬歩』S『錬金』B『精鋭』B『集中』C『美技』B『修得』と変えていき、残った文字は外すと消えて行った。10個あったスキルボールは8個になりブランクのボールが2個になった。

 

 俺はこれで冒険者になれる!


ステータス!

ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・

相葉 優アイバ ユウ 33歳

 ベースレベル1


 ビルダーLv12

 剣士 Lv1

 錬金術師Lv1


 スキル

 S構築、S分解、A剣術、S神眼、A瞬歩、S錬金、B精鋭、B集中、C美技、B修得、


 ユニーク

 インベントリ

ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・


 よし!すぐに会社はやめよう!!

 今年から俺は変わったんだ!

 さぁ!今からの俺を見ていろ世界!!


「とりあえず飲むか!」


 ビールを開けて流し込む。

 さて、久しぶりに冒険者証を更新しないとな。

 髭も剃って髪も切りに行くか!

 安月給で使い潰されそうだった!


 俺は今から自由だぁーー!!


 明日から動くぞ!


 なけなしの金で剣を買わないとな。

 昔の登録証を引っ張り出さないといけないか!


 再登録にも金がかかったはずだし、貯金を崩すしかない。


 やることがいっぱいだが、このビールを飲んでからだな!!


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