第31話  偶然なのか?

 コトが片陰の街に戻って来て数日が

経過した。

 隼人の部屋で、出前の料理を並べ

缶ビールを飲む隼人、レイ、コトの三人。

 

 「う~ん。う……ん。ん?」

 首を傾げ呟くコト。

 「コトのヤツ、どうしたんだよ」

 隼人がレイに聞いた。

 「コトのヤツ、ドリーム・タウンから

戻って来てから、ずっとこうなんだよ」

 「コト、どうした? あん時のこと、

俺等に教えてほしいんだけど」

 隼人がコトにそう伝えると、

首を傾げながらコトが……

「それが……思い出せないんだよね。

所々は覚えてるんだよ。でもね、肝心な

所が抜け落ちてるというか……

 なにか、大事なこと……伝えないと

いけないような気がするんだけど。

 思い出そうとすると頭痛がして……」

 「ははは、コト~、

それってまるでヒカルみた……い

じゃない……か……」

 レイが隼人の顔を見ながら、

 「考えたくないけど……

兄貴……これってなんかヤバくない?

 コト……ヒカルと同じで記憶が

欠落してる。身体は何ともないのに……」

 レイが隼人に呟いた。

 「ああ、なんか気になるな……

偶然とは思えない……。

 村山が最後に言った言葉や、

俺にくれたこのナイフのことも気になるし……」


 「兄貴……俺、ドリーム・タウンに行って

少し調べてみるよ……」

 レイが言った。


 「レイ……俺が行くよ」

 「いいよ、兄貴はここにいて……

もし、コトになんかあったら、

兄貴のほうが、間違いなく守れるからさ。

 大丈夫だよ。危なくなったらすぐに

逃げ帰ってくるからさ……」

 レイが微笑んだ。


 「わかった。くれぐれも無理はするなよ」

 隼人が呟いた。


 次の日の早朝……、

バイクの排気音と共に、レイは

ドリーム・タウンを目指してバイクを

走らせた。

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