【エピソード感想】Gemstone/@kumeharaさま 《1》

1◇「参加作」を読もうと思った理由:あり


 企画開始段階から、気になっていた作品です。真っ先に惹かれたのはタイトルですね。宝石という意味ですが、作者さまから〝差別を扱った作品である〟旨の丁寧なコメントを頂戴しましたので、「多種多様な色や輝きがある」といった暗喩であると推察することもできますね。事前にご質問をくださったことや、あらすじに注意書きがあることからも、読み手への温かな心遣いが感じられます。



2◇「ネタバレ」への配慮:おまかせ

3◇「1話あたりの文字数」に対する感想:なし

4◇「任意の登場人物」に関する感想:指定なし


 また、オプションにて指定されておりますので、文字数については言及いたしません。それら以外の文章と読みやすさに関しては、感想を書かせていただきます。ネタバレに関しましては、特に重要だと思われる部分のみ伏せる形といたします。人物への感想は、「主人公」および「好きな人物」と「嫌いな人物」のみ記載します。



 全体的に辛口の感想を求めておられるようなのですが、本作は私がかすりもしなかったコンテストを通過した作品でもあります。【オプションの確認】から時間が空いてしまったのですが、★の伸びもすごいです。そんな作品に批評じみたことを述べるのは正直なところ気が引けてしまうのですが、依頼された以上は全力を尽くします。



             *



◇第一幕 序章 / プロローグ:


 非常に短くて簡潔でわかりやすく、そして衝撃的なプロローグですね。まさに「これぞ!」といった完璧な始まりではないでしょうか。主人公が〝ロレッタ〟という第二王女であること、女王(政を取り仕切っていると書かれているので、もしかすると摂政のような立場かもしれません)である姉の命令によって、ほぼ無理やり辺境の村へ嫁がされたこと、そして夫となる相手からの嫌悪感の籠もった視線と〝「離婚を前提に、結婚してください」〟という言葉――。まさに完璧ですね。


 唯一気になる点があるとすれば、〝辺境〟を「辺鄙へんぴな田舎」的な意味で用いていないかといった具合ですね。勘違いされがちですが、辺境とは国境を指します。つまりは防衛の要であり、ここを突破されると国内へ敵がなだれ込んでくる可能性のある、非常に重要な拠点なんですよね。決して「どうでもいい領地」ではありません。最強の兵を置く必要があります。むしろ、この夫となる剣士〝リューズナート〟とロレッタが超強いということであるならば、姉の采配は適切であるとも言えますね。




◇第1章 政略結婚 / 1話:


 ロレッタとリューズナートと〝少年〟の三人が三日ものあいだ馬車に揺られ、舞台となる寒村へ到着する場面からのスタートですね。簡素とはいえ石の城壁があることから、それなりに守りを意識してはいるようですが、もっと防衛に力を入れるべきであると感じますね。どういう視点なんでしょうね、私は。


 リューズナートは自宅へ着くや態度を豹変――、してもいないですね。最初から第二王女であるロレッタに対していんぎんれいな態度をとっておりました。むしろ、あれを公の場で言っていたことにも驚きますが、ここでの重要な点は〝ロレッタの姉・ミランダがリューズナートに不本意な契約を突きつけた〟といったあたりでしょうか。それにしても、この姉は何者なのでしょう。二度目の言及にもかかわらず「国王」や「女王」といった呼称を使わないことから、国家元首ではないようにも思えますね。




◇2話:


 回想の場面ですね。やはり国王はロレッタたちの〝父〟とのこと。現在は病床に伏してはいるものの、健在ではあられるようですね。私の疑問が早くも解決いたしましたので、ここはスッキリポイントです。


 そんな国家の重要人物〝ミランダ〟の元へと呼び出されたロレッタ。そこへ姉・ミランダに対して刀を突きつける青年が登場します。わざわざ〝刀〟と言っていることにも意味がありそうですね。



【「うちの村の子供が世話になっているそうだな。その首をね飛ばされたくなければ、今すぐ開放しろ」】


 ここの〝開放〟は「解放」ではないでしょうか。〝世話になっている〟ということは、おそらくは囚われているものと推察します。やや説明台詞であることも気になりますが、この青年の真面目な感じは出ておりますね。


 この場面、〝そん〟あたりには「ふりがな」があると望ましいとは思われますが、全体的な筆致が硬めであることと、レイティングも付いていることから、このままでも充分であるかもしれません。無い方が雰囲気は締まりますからね。




◇3話:


 ロレッタたちの居る水の国が〝アクアマリン〟という名であったのと同様に、この青年が暮らす炎の国にも〝ルベライト〟という名称が付いているようですね。多種多様な輝きを放つ宝石は、「人」ではなく「国家」ということでしょうか。それとも両方を兼ねた意味なのかもしれません。


 どうやらミランダは〝彼〟との交渉を行なうために、少年を人質にしていた様子。彼が刀を使うということは、炎の国は日本的なイメージなんでしょうか。


 人質を前に刀を納め、膝を折る青年。おそらくリューズナートであることは明白なのですが、早めに名前を教えていただけると、読者的には助かりますね。


 ミランダが口にした〝ヒビトの村〟という呼称に強い不快感を示す青年。「ビト」もしくは「ビト」といったところでしょうか。前者はかっこいいですが、後者であれば最低ですね。もしくは、両方の意味を兼ねているのでしょう。



【 生まれつき高い魔力を持つ王族や、魔法の扱いに長けた者ならば、あの程度の武器など恐れるに足りない。自身の魔法で打ち消すことも難しくはないだろう。しかし、青年はそうしなかった。】


 ここの主語は、現在進行形で水の槍を突きつけられている〝青年〟であると思われますので、〝あの程度の武器〟ではなく「この程度の武器」が適切のようにも思えます。〝あの程度〟だと、直前に納めた〝刀〟の方を指してしまいますからね。




◇4話:


 やはり青年はリューズナートでした。どうやらミランダの目的は、彼を近衛兵として迎え入れたいといったものだったようです。近衛兵は戦の折には最前線へ送られるとのことですが、辺境に住ませるならば最初から最前線ですね。やはりミランダはやり手であると感じます。今の所、もっとも私の好感度が高いのは彼女ですね。


 この世界の魔法は体内器官によって生み出された魔力を用いる、先天的なものであるようですね。こうした設定の説明は大好きです。水の国は魔法に長けた〝魔法国家〟である一方、なにやらリューズナートの炎の国は魔法が苦手である様子。


 そして、人質解放と引き換えに近衛兵になることを拒絶したリューズナートに突きつけられた別の条件が、ロレッタとの結婚だったようですね。


 ここで気になる部分を挙げるならば、子供を人質にされている割には、あっさりと近衛兵の条件を断っているあたりですね。もしも私が人質をとった側ならば、この時点で子供に危害を加える素振りをみせます。まるで「ここは断っても大丈夫ですよ」と、両者の間で示し合わされていたようにも感じますね。


 このリューズナートの性格上、「子供の命」と「炎の国のプライド」を天秤に掛けるのならば、間違いなく「子供の命」を優先するでしょうし。そうでなければ、ここまで一人で来ませんよね。ここで両国の関係性を説明し、ロレッタを結婚させるために用意された「ご都合展開」にも見えかねません。もう少しリューズナートが迷いを見せたり、悔しそうにする様子などがあれば良かったかなと。おそらくはダブル主人公であろう、彼への好感度を上げることもできますからね。


 とはいえ、辛口のオプションを指定されていなければ、特に気に留める場面ではありませんでした。このままでも充分ではないかとは思われます。




◇5話:


 姉からの発言に対し、頭がショートしてしまうロレッタ。この世界の機械は魔力で動くらしいのですが、電気と同じようにショートするのかもしれませんね。つまり魔法を使える人間は電気ウナギのような発電器官を持っていると、ここでイメージすることもできます。とても簡易的ながら、見事な表現であると感じますね。


 ミランダの交渉術が炸裂しておりますね。いわゆる悪役令嬢にあたるのでしょうが、やはり私はミランダが一番好きかもしれません。ただ、外交の数値は高くとも、内政の数値は低そうですね。味方に背中を撃たれないか心配です。




◇6話:


 今のところ、このリューズナートの性質が今ひとつ掴みきれませんね。子供の命が優先なのか、自分のプライドが優先なのかといった一貫性がなく、ただただ目の前で起こる状況に対して、感情的なリアクションをしているだけのように思われます。


 ときおり「人間は単純じゃないんだから、こういうキャラの方がリアルだ」と仰られる方もおられるのですが、それは物語がある程度進行してから見せるべきものです。特に物語の序盤は「読者の脳内にある〝登場人物の履歴書〟」は、まっさらな状態です。そこへ読者自らが、キャラクタの特徴などを書き込みながら読むのです。


 「なろう系」が広く評価されているのは、序盤から「わかりやすいキャラ」が多数登場するからです。なので余計なことを考えることなく、物語に集中できるのです。「なろう系」への偏見等もあるかもしれませんが、やはり支持されている作品には、見習うべき部分も多くありますからね。


 本作の場合、たとえばロレッタならば「自己評価が低く、自己主張が苦手で、極端に周りに流されやすい」、そしてミランダならば「目的達成のためならば、実の妹すらも敵に売り渡す」といった感じです。この二名は非常にわかりやすいです。


 特にミランダは「悪役令嬢ですよ」と説明がなくとも、「あっ、悪役令嬢だな」とわかりますよね。こういった説得力がミランダにはあります。


 ですが、リューズナートにだけは「それ」がありません。強いて挙げるならば「感情に流されやすい」といった具合なのですが、これまでの彼は寡黙で武人気質で仲間思いな男として描かれております。そこで乖離が生じてしまうんですよね。


 たとえば彼が「モブ」であるならば、こうした挙動でも問題がないのですが、おそらくは長く付き合うことになる主要人物ですからね。しかも無駄に偉そうな態度。ちょっと、彼に関する場面を読むのがツラいところです。


 こういう「凄腕感のある人物」が中身のない動きを繰り返すと、どこかギャグのように思えてしまうんですよね。もしも彼が悪役でないのならば、地の文でのフォローがあると良いのかもしれません。いちおう「仲間が大切なのだろう」と書かれてはありますが、私の印象では「仲間(子供)よりもプライドを優先する、感情的な男」といったタイプに見えます。ここまで評価が落ちてしまうと、いくら後から「じつは彼は良い人なんです」と説明されても、読者の心には響きません。




◇7話:


 ロレッタに焦点があたる場面ですね。彼女は典型的な「世間知らず」といった感じで、意図せず、悪意も偏見もなく、ナチュラルに差別発言をするタイプになってしまうような予感がします。おそらくは村の生活でも、無知ゆえの不用意な発言によって村人たちと衝突してしまうんでしょうね。――この予想が外れることを願います。




◇8話:


 ロレッタとリューズナートの結婚が成立する場面ですね。プロローグへと繋がるシーンといったところでしょうか。


 ここでもリューズナートが〝仲間思い〟であることを強調されておりますが、やはり〝「断る」〟と即答したことが尾を引いておりますね。まったくもって仲間思いには見えません。決してあそこで要求を呑めというわけではなく、少しでも良いので迷いを見せてほしかったです。むしろ要求を呑めば、まっさきに「自身の村を滅ぼすように」と命じられるのは明白ですからね。そうした葛藤もなく、子供の命が掛かっている状態で要求を突っぱねる神経が理解できません。厨二病じゃないんですから、かっこよさよりも人命を優先してほしいです。


 もしも目の前で、子供の耳やら腕やらが切り落とされでもしたらどうしたのでしょう。魔法が使えないのならば、治療を受けさせることもできませんよね。子供にトラウマが残った場合、明らかにリューズナートの態度にも責任があると思います。



             *



 さて、これで〝第1章〟は終了となりますので、ここで各エピソードの感想を終えさせていただきます。やはり辛口ですと、文字数がかさんでしまいますね。あとは次のページにて、各オプションに基づいた感想のまとめを述べたいと思います。

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