旅シリーズ3 ドイツを旅して 修正版

飛鳥竜二

第1話 旅立ち 修正版

※この小説は「ドイツを旅して」の修正版です。実は、パソコンの操作ミスで編集中に保存できなくなり、新しいページで再開した次第です。文言や表現を一部修正しています。もう一度読み直していただければと思います。


トラベル小説


 冬に妻を亡くした。以前から高血圧の症状があり薬を処方されていたが、忙しさにかまけて飲むことを忘れることが多々あった。脳溢血。63才だった。

 先日、100か日法要と納骨を終えて、一連の葬儀が終わった。そこで1週間前にネットでエアーチケットをとった。マイレージがたまっていたので、閑散期のためヨーロッパ便がとれた。ミュンヘン行きだ。若い時にヨーロッパ駐在していたことがあり、その時に妻といっしょに旅したところを周ってみようと思った。

 成田までクルマで行き、大手のビジネスホテルに泊まった。提携のパーキングに格安でクルマを停めることができる。それに、このホテルから見える景色を妻が好きだった。滑走路や駐機場が見え、妻は窓に顔をくっつけて、飛行機の写真を撮り続けていた。夕陽をバックに離陸する飛行機を撮れた時には、いい笑顔を見せていた。

 翌朝8時にホテルを出て、空港までシャトルバスで行く。閑散期なので、バスはがら空きだ。外国人が多いといっぱいになることもあるようだが、コロナが解禁になったばかりなので、まだ旅行者は少ない。

 航空会社でのチェックインはスムーズだった。スーツケースはセルフでドロップインだ。カウンターでパスポートを提示し、チケットを受け取る。国内線はスマホだけで通過できるが、さすがに国際線はそうはいかない。でも、荷物を開ける手間がない分、スムーズになった。旅行保険の手続きと予約していた海外用のレンタルスマホの受け取りを行ったあと、時間に余裕ができたので、本屋へ行った。機内で読む本がないかをさがした。星新一のショートSFを見つけたのでそれを購入した。長い文章より、こういう短い文章の方が気楽でいい。それと数独の本があったのでそれも購入した。頭を使うと眠りやすくなる。もっとも機内で寝ると時差ボケが厳しくなるので、できるかぎり起きていた方がいい。

 出発1時間前に出国審査。手荷物検査も出国審査もスムーズだ。パスポートを機械にかざし、顔写真を登録するだけで通過できる。以前のような出国審査で質問されることはなくなった。搭乗口に行くと、それなりの人はいたが、満員というわけではないようだ。案の定、搭乗すると空席が半数ほどあり、隣に座っていた男性はCAさんに話をして、隣が空いている席へ移動したいった。おかげで私も2席分使うことができるようになった。横になるつもりはないが、座席に余裕があるのはうれしい。窓までの距離が少しあり、写真を撮るには今ひとつだが、離着陸時に写真を撮ることは、もうしなくなった。それよりはトイレに近いし、後尾のデッキにいるCAさんと話ができることもある。

 機体は787。国内線で使われている737よりはシート幅が広い。エコノミーでもさほど窮屈には感じない。それに最後尾の席なので、気兼ねなくリクライニングできる。モニター画面も大きく、プログラムは充実している。数独も入っており、本を買った意味がなかった。

 機内食がでてきた。ワンプレートだが、充実メニューだ。さすがに日系の航空会社は違う。日本人の好みをよく知っている。以前に、K国乗り換えでヨーロッパに行ったことがあるが、機内食は食べられるものではなかった。

 食事が終わるとシネマタイムだ。邦画の最新作を見ることができた。阿部サダオの演技は秀逸だ。その後、数独をしたりして時間をつぶす。機内が暗くなり、オヤスミタイムだが、ここで寝てしまうと時差ボケになってしまう。なんとかがまん。後尾デッキにいって、ドリンクと軽食をもらった。その際に、そこにいたCAさんと話をすることができた。

「この時間はCAさんもオヤスミタイムじゃないんですか?」

「えぇ、交代で休んでいます。今は私が当番でお客さんの呼び出しに対応しています」

「立ち仕事ですから大変ですよね」

「正直、フライトが終わると足にきていますよ。でも、これが仕事ですし、今では慣れました」

「CAさんの喜びって何ですか?」

「あら、シビアな質問ですわね。ふつうはお客さまに感謝されるのが一番ですね。と言っています。でも、正直言って最近はトラブルなくフライトを終えて、ホテルで乾杯というのが一番ですわね」

「CAさんはいける口ですね」

「ミュンヘン便でビールが飲めなかったら、人生の楽しみの半分は損していますわよ」

「たしかに私もそう思います」

 そこで、CAさんを呼び出すランプが点灯した。

「すみません。呼び出しがありました。どうぞごゆっくり」

 と言って、そのCAさんは客席に向かっていった。

 到着2時間前に、機内のライトが点いてCAさんがあわただしく動きだした。2度目の機内食の時間だ。軽食中心のメニューで夜食にはちょうどいい。朝食の感覚で食べている人もいるが、日本時間では夜の11時。ヨーロッパ時間では午後4時。機内で寝るとこの後がつらい。

 1時間前から徐々に着陸態勢に入った。高度が下がっていく。雲の中を過ぎると、陸地が見え始めた。農村地帯が見える。遠くには雪をまとったアルプスが見える。そして急に滑走路が見えた。着陸だ。

 午後6時ミュンヘン空港着。入国審査などで1時間かかり、空港横のHホテルにチェックイン。日本時間では夜中の2時だ。さすがに眠い。もう何もすることもなく、ベッドインした。

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