恋人を寝取られて苦しみ、心と体を壊した前世の俺。しかし、俺を苦しめた二人は……。今世の幼馴染は美少女だが、俺の前では無表情。俺は幼馴染を理解したい。そして、相思相愛になり、結婚して幸せになりたい。

のんびりとゆっくり

第92話 紗淑乃ちゃんの想い

 紗淑乃ちゃんとしては、俺が病気から回復するのをずっと祈り続けていたのに、それが報われることはなかったので、俺に申し訳ない気持ちで一杯になっていたところに、この話が伝わったので、涙が止まらない状況になっていた。


 当時の俺としては、申し訳ない気持ちになってもらう必要は一切なかった。


 紗淑乃ちゃんには、体を治した後、再婚して、幸せな生活をおくることを願っていたのだが……。


 紗淑乃ちゃんは、その後一旦は病状が回復の方向に向かった。


 しかし、それは一時的なもので、病状はまた悪化していくことになった。


 俺の祈りは通じないわけではなかったのだが、、病気の勢いの方が勝ってしまったのだ。


 そして、危篤状態になった当時の紗淑乃ちゃんは、俺と同様、周囲の人たちの悲しみを集めながらこの世を去った。


 今世の紗淑乃ちゃんが俺に対して、無表情で対応するようになったのは、この時、心に受けた大きな打撃が要因のようで、その紗淑乃ちゃんの思いが紗淑乃ちゃんの手から流れ込んでくる。


 紗淑乃ちゃんは、それ以降、俺に対して申し訳ないという気持ちが心の底に残り続けていた。


 俺のことが好きだという想いの方も残り続けてはいたのだが、この申し訳ないという気持ちが残り続けたことで、俺に笑顔を見せたり、明るい態度をとったりするのは、失礼なことだと心の底で思うようになったようだ。


 俺が紗淑乃ちゃんとその後、また一緒の時代に生まれていれば、どこかでその思いを修正できたのかもしれない。


 しかし、この時代以降、俺たちは今世まで一緒に生まれることはなかったので、残念ながらその思いを修正する機会が訪れることはなかった。


 その間に、紗淑乃ちゃんの心の底では、俺に対する想いが一層固められるようになってはきたが、その一方で、俺に対して失礼な態度をとらない為には、無表情でいるのが一番いいという思いも固められることになったようだ。


 それが、今世の俺に対する無表情での対応につながっているのだと思う。


 しかし、この紗淑乃ちゃんの対応は俺の望むべきものではない。


 俺としては、紗淑乃ちゃんには、江戸時代後期の過去世の時のように、俺に対して笑顔を見せ、明るい態度をとってほしかった。


 俺はそうした紗淑乃ちゃんの方がより一層好きだということを認識していた。


 そこで、俺は、紗淑乃ちゃんと心の底が通じ合っている今の状態で話をすることにした。


 口を使って会話をするのではなく。心の底と心の底での会話だ。


 紗淑乃ちゃんが、俺に対して無表情になる理由が心の底にある以上、普通の状態に戻って話をしても、根本的な解決はできるようには思えなかったからだ。


 外からは、お互い無言で対峙しているように見えることになる。


「紗淑乃ちゃん、この状態で話をしてもいいかな?」


 紗淑乃ちゃんはうなずいた。


「紗淑乃ちゃんが俺に対して無表情な対応をしていた理由はだいたい把握することができた。紗淑乃ちゃんは俺に対して、ずっと申し訳ないという気持ちを持ち続けていてくれたんだね。俺が若くしてこの世を去ることがなければ、紗淑乃ちゃんもこんなに苦しむことはなかったと思う。俺は紗淑乃ちゃんに対して、申し訳ない気持ち一杯になっているんだ、まずそのことを謝らせてくれ」


 俺が心の底でそう言うと、紗淑乃ちゃんは、


「定陸ちゃんが謝ることではないわ。全部わたしが悪いの」


 と心の底で応えてくる。


 俺の想像以上に、紗淑乃ちゃんは俺に対して申し訳ない気持ちでいるようだ。


 でも、もう紗淑乃ちゃんはそういうことを思う必要はない。


 これからは、二人で新しい人生を切り開いていく必要がある。


 そう思った俺は、


「紗淑乃ちゃん、俺は紗淑乃ちゃんのことが今も昔も好きだ。今世では申し訳ないことに、それがなかなか恋というところまで到達しなかった。でも、今は違う。俺は紗淑乃ちゃんに対して恋をしているんだ。好きだ、紗淑乃ちゃん、愛してる。もう過去のことは過去のこととして、それを心の底にしまうようにしてほしい。もう、俺に遠慮して、無表情でいる必要はないんだ。江戸時代後期の過去世の時みたいに、笑顔を見せてほしいし、明るい態度をとってほしい。俺はそんな紗淑乃ちゃんのことが素敵だあと思うし、大好きなんだ。そして、今、俺の恋人になり、大人になったら結婚してほしい!」


 俺は心の底で力強くそう言った。




(あとがき)


「面白い」


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