第9話 いざ、異世界へ

「ど、どういうことですか!!?」


メナちゃんは、慌てた様子でユーリさんに詰め寄る。


「いやあ、すまないね。私はてっきり知っているものかと思っていたよ」

「すまないじゃ済まないです!そんなの聞いてないですよ!」

「私も、完全に私と空音の二人だけだと思ってました……」

「ね!でも確かに、冒険といえば四人一組だもんね!それに、女神様が仲間ってすごい!」

「はっはっは。そうだろうそうだろう。安心したまえ、私がバッチリとサポートあげるよ。君達二人をね」


言いながら、ユーリさんが私に目配せをしてくる。

いや、あなたが一番の不安材料なんですけど……。


「……はぁ。ですが、あまりに突然過ぎて困りますよ……」

「でもねメナちゃん。これは君にとっても君にとってもメリットのあることなんだよ」

「メリット?」

「ああ。異世界転生者が魔王を世界を救ったら、転生者には復活というご褒美が与えられるだろう?サポート役となった女神見習いにも、何かないとね」

「……?それは一体……?」

「見習い卒業だよ。転生者が世界を救うのに貢献したとして、特例として女神への昇格が認められる」

「!??」


女神への昇格、と聞いた途端、メナちゃんは目の色を変えてユーリさんに飛びつく。


「ほ、本当ですか?本当に、そんなことが認められているのですか?」

「ああ。私はそんな嘘はつかないよ」

「……分かりました。ユーリさんを信じます」

「それじゃあ、メナさんも一緒に来てくれるってことですか?」

「はい。僭越ながら、皆さんの旅をサポートするためにご一緒させていただきます」

「よろしく!メナちゃんのためにもしっかり頑張らないとだね!」

「うん。よろしくお願いします、メナさん」

「はいっ」

「……しかし意外だったね。女神への昇格に、メナちゃんがあれほどまで食いつくとは」


そういえば確かに。

メナちゃんは、まだまだ勉強中なので、とか、きちんとした手順を踏んでから、とかいう理由で遠慮しそうなイメージがあった。


「……まあ、早く独り立ちして、こんな上司の下から離れたいですからね」

「あ、なるほど」

「な!?メ、メナちゃん!?」

「……ふふっ、冗談です」

「び、びっくりしたぁ……。メナちゃん、一体どうしてそんな怖い冗談言うような子になっちゃったの……」

「さぁ……誰の影響なんでしょうね」

「さあねえ。きっと面白くてユーモアに溢れた方なんだろうね」


ユーリさんの言葉に、メナちゃんがくすっと笑いながら呆れたように肩をすくめる。


「ていうか、普通に納得してた琴葉が何気に一番失礼だよね」

「しっ!!……それじゃあユーリさん、そろそろ……」

「ああ、そうだね。無事に全員のOKも出たところだし、そろそろ異世界に旅立つとしようか」

「あれ?そういえば、ユーリさんにとってのご褒美はなんなんですか?」

「ん?私かい?それはもちろん……ねぇ?」


ユーリさんがニヤニヤしながら私に目配せをしてくる。


「ユーリさん、言わなくていいです」

「言わなくていいですよ、ユーリ様」

「ええっ!?ふ、二人ともなんで!?」

「フフフ。ま、『その時』までのお楽しみということにしておこうかな。フフフ……」

「???」


一人不思議そうな顔の空音をよそに、ユーリさんは魔法陣を床に作り出す。


「よし……と。諸々の手続きはさっき済ませておいたから、後はもう行くだけさ。みんな準備はいいかな?」

「はい、ユーリ様」

「はい!いよいよだね、琴葉!」

「うん。……ユーリさん、お願いします!」

「では、しゅっぱーーーつ!!!」


—————こうして私は、未知の世界へのワクワクとドキドキ、そしてこれからの生活への期待と不安を胸に抱きながら、異世界へと旅だった。
















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