『スキルをリサイクルします』
「ファイア!!」
手の先からロウソクの炎のようなものがでた。
集めてきた薪の中にティッシュをありったけ入れておいたからだろうか。
あっさりと燃える。
「おおう便利!」
やはり火は偉大である。
文明は火と共に始まった。
ならば今おれは文明を起こしているのと変わらないのでは??
なわけないですね。
もう日が沈んで、肌寒い。
このまま歩いても迷うだけ。
ならば、と寝る準備をするため火を起こしてみたのだ。
ついでに倒れたイノシシから切り取った肉を熱した石で焼く。
さすがに生肉では食べれないからな。
近くにあった川で採れた石を研いで、なんとか頸動脈を裂いて、血抜きした肉である。
調味料は無いが、油がしたたり落ちて蒸発する音だけでおれはどうにかなってしまいそうだった。
「いや、サツマイモ倒したおかげで色んなスキル覚えちゃったな。よし、この際確認するぞアマネ!」
『はい!』
じゅわーと焼けた肉を頬張りながら、『ステータスオープン』と唱える。
すると、例のごとくアマネが胸をはだけた。
「ごほっごほっ」
忘れていた。
なにこの仕様。
「う、ウオーター」
手の先から溢れる水を飲もうとしたのだが——
「み、みず」
『同時に複数の詠唱やスキルの行使はできないんです』
「ごほっごほっ、ああ!」
一応煮沸しようかと汲んできたペットボトルの水と一緒に喉に詰まりかけた肉を飲み下す。
「はあ、死ぬかと思った」
『あ、あの。できれば早く終わらせていただけると』
すまない。
あまりにも突然だとおれの中の童貞が「やあ」と顔を出してしまうんだ。
ステータス
名前:楠木正成(35)
種族:ヒューマン
ギフト:『リサイクル』LV50
加護:『アマネの加護』(フェアリー)
称号:『英雄』『リサイクル見習い』『フェアリーハート』
???:『ヒールブレス』LV2『ショックウエイブ』LV1
魔術:『ファイア』LV1『アース』LV1『ダーク』LV1
法術:『ウオーター』LV1『ライト』LV1『ウインド』レベル1
技能:『資源精製』『エネルギー変換』『芋爆弾』『サツマイモ召喚』『鑑定』LV1『蔓操作』LV1
耐性:『マナ攻撃耐性』LV1『状態異常耐性』LV1
能力値
体力:45/100(+100000)
生成マナ:0(+100000)
俊敏性:60
力:60(+3)
マナ耐性:0(+100000)
器用さ:5
装備:ゴミ回収の作業着 防+1
ゴミ回収の作業パンツ 防+1
アディオスのスニーカー防+1
新しく覚えたスキルを見ようとしたら、わからなかった項目が映し出されていたのでびっくりした。
10万というのがどれくらいのすごいのかはわからないが、予想していた数字より桁違いである。
と、この前は権限ができないと先に進めなかったが、今はどうだろうか。
画面をタップしてみる。
——権限解放可能。
権限解放のため、ステータスをリサイクルしてください。
リサイクルのレベルがあがったことにより、以下の機能を獲得、性能がアップしています。
①リサイクル可能な対象の拡大:手に入れたスキルや魔物の心臓をリサイクルすることができます。
②融合:取り込んだものを組み合わせてより最適化、強力なものを手に入れることができます。
リサイクル可能
『英雄』『リサイクル見習い』『フェアリーハート』『ヒールブレス』LV2『ショックウエイブ』LV1『ファイア』LV1『ウインド』LV1『アース』LV1『ウオーター』LV1『ダーク』LV1『ライト』LV1『鑑定』LV1『蔓操作』LV1 『資源精製』『エネルギー変換』『芋爆弾』『サツマイモ召喚』『マナ攻撃耐性』LV1『状態異常耐性』LV1
ふむ、殆ど全てのスキルがリサイクルできるらしい。
どうしたものか。
なんかデメリットとかないんだろうか。
今までのスキルが使えなくなるとか……。
「どう思う?」
『んーそうですね。とりあえずリサイクルしたら強力になるというのですから、やる価値はあるかと。物は試しに無難なものから試してみてはどうでしょう』
「まだかたいな」
『はい?』
「もうちょっと敬語やめようぜ。徐々にでいいからさ」
虚をつかれて、おろおろとしている。
目が点になっていてなんだかほのぼのとする。
『もう、笑うのひどいです! 真剣なんですよ私! どういう距離感で接すれば良いかまだわからないんです』
「ははは、ま、そのうちな。じゃあ、とりあえずいらなそうなの……」
称号とかは下手にいじらないほうがいいだろう。
ファイアとかウオーターとかはこの先いくらでも必要になりそうだ。
ならば……これとかどうだ。
——サツマイモ召喚と芋爆弾をリサイクルしますか?
『リサイクルするなら、リサイクルと唱えてください』
「リサイクル」
——リサイクル中……。
リサイクルの結果。ゴミ・サツマイモ召喚の中にあるフェアリーハートを確認。
レアリサイクル発生。
サツマイモが変態し、『大精霊カーバンクル』になりました。さらに大精霊カーバンクルと芋爆弾の組み合わせによりゴミ成分の中に入っている『絶滅危惧物・伝言板』を入手・読み取ることが可能になりました。
おおう。
なんだかすごそうである。
試しにステータスオープンをやめ唱えてみることにした。
「いでよ、カーバンクル」
なんとなしに唱えると、アマネの錫杖か輝いた。
ひゅんと光の玉が樹海の地面に降り立つと、額に宝石をつけた、玉虫色に輝く毛並みをした小動物が現れた。
ポケモンのイー○イに似ている。
「コル?」
小首をかしげながらおれの顔をみるや、はっはっはと興奮しだし、俺の体をよじ登ってぺろぺろと舐め回し始める。
嫌なにおいは全くしない。
むしろ良いにおいだ。
はあ、めっちゃかわいい。
『ああいいな!』
アマネがうらやましがって触れようとしていたが、小動物はどうやらわからないらしい。
うう、と残念そうな顔をしていた。
うむむ。なんだろ。
なんか、おれまで悲しい気持ちになるな。
なんでアマネは認識されないんだ?
ちくりと、心のどっかがささくれるような気持ちだった。
『そういえば、伝言板なんちゃらとか言ってましたよね。あれはなんなんでしょう』
「アマネもわからないのか」
『はい」
「んじゃ、やってみるか」
アマネにかくかくじかじか教えてもらい、唱える。
「『絶滅危惧物:伝言板』作成」
錫杖から飛び出してきたのは、風化した石板だった。
あの錫杖の円から到底出てきそうにないくらい大きい。
全長4メートルくらいはあるだろうか。
カーバンクルがその石板をじーと見ると、額の宝石が輝きだした。
すると文字盤をなぞるように宝石の光に照らされた石板からホログラムが映し出されていた。
映し出されたのは、壁に背をあずけて座る白いあごひげが印象的な初老の男である。
ごほごほと咳をすると、男は血を吐いた。
ぜえぜえと見るからに、死の間際という感じだ。
『これから話すのはこれから失われるだろう歴史の記録。滅亡する直前の世界から発信している。これが誰かに届くかはわからない。だが一縷の望みをかけてゴミの中にこの伝言を埋め込んでいる。新しい『ゴミ』の受け入れ先となる世界の黙示録となることを願って——』
またもや男は激しい咳をした。
『いいか、「ゴミ」というのは地球という星から輪廻のはずれをたどって迷い込む魂のことだ。その魂にはチート能力が付与されていることがほとんど。なぜそうなっているのかはわからない。わからないが強力だ。だから我々の世界もその強力な力に魅せられ——希望という光を託してきた』
しかし——と男は声を荒げた。
『それは闇を濃くしていくことでもあったのだ! 本来その世界にはなかった力が入る事で、マナが無尽蔵にあふれだした世界はバランスを徐々に崩すとも知らず! 最初は魔王軍の凶悪化だった。徐々に奴らは強力になる。その魔王軍の対処に追われていると、今度は不自然な自然災害が起こり始めた。あとからわかった。あれはゴミが急激に集まり始める凶兆だったのだ。そうしたいびつなものが混ざり合って世界の諸外国は伝播するように狂い始めた。そして滅びに誘う魂を選んでいく。その汚れた魂が望むままに、欲望が膨れ上がり、終末を起こす魔神を生むのだ。なぜそうなるかはわからなかった。全てがうまくいかなくなるのだ。それがゴミのせいであるとわかったころにはもう遅かった。わかったとて我々はそのゴミを捨てる手段を見いだせないーー。だから、まずはその手段を見つけることだ。ゴミを……そう、地球から捨てられた魂の怨念たちをどうにかする物理的な手段を……! どうか!』
最後大きな血反吐を吐いて、男がガクと頭を垂れた。
瞬間、ホログラムはぷつんと切れた。
うむむ。
気軽に選んだら、思った以上に重い内容でびっくりんこである。
正直内容の殆どが雲をつかむようなかんじで、よくわからない。
すまない。
おっさん。
でも、この肉食べたらおれ、頑張るから……。
むしゃむしゃばくばく。ごっくん。
「あー……。じゃ次いこうか」
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