ものがたりーお題メドレー

金木犀(๑'ᴗ'๑)

お題:リサイクルについて考える。


『リサイクルの勇者』



 世界は固ゆで卵なのさ。


 どういう意味かって?


 すまない。少し混乱してるだけだ。意味など無い。


「大丈夫ですか???」


 ついさっきまでおれはゴミを回収していた。


 積み終えて運転席に乗ろうとしたとき。


——特殊エキストラスキル『リサイクル』を覚えました。


 という謎の声が聞こえたのだ。


——必要としている異世界があります。『英雄』の称号を付与。英雄の付与に伴い、ノブリスオブリージュを実行。異世界に強制召喚されます。それに伴い今の肉体は分解、再構築されます。


 あら、幻聴かしら。いやあね。疲れてるんだわ私。


 と思った瞬間、肉体がびりびりと引き裂かれた。内臓とかいろんなものがあふれだし、あらふしぎ頭ももげて目玉などもろもろ散乱させて暗転しながらころころと転がる。


 全身が灼けるような熱が長い間続いたと思ったらいつのまにか眠っていたらしい。


 目を覚ますと、おれは直立しており、目の前には絶世の美少女が立っていたのだ。


 ふっ。


 なんだ夢か。


 と思ったさ。


 しかし目をつむって、開けてみても、そこには美少女が立っていた。


 前世ではとてもお近づきになれないだろうたぐいの美少女である。


 ブロンドの髪がくるくると腰まで届いている。


 均整のとれた顔から、優しそうなまなざしがおれに向けられていた。


「大丈夫ですか?」


 少女が首を傾げた。


 夢だよな?


 現実か確かめるために、胸をもみしだくことに一切のためらいはなかった。


 うむ。


 胸はまだまだじゃの。


 だが発展途上にしてはなかなかむふふ。


 弾力を楽しんでいると、しゃらんズカンと頭に鈍器の感触。


「大丈夫ですか?」


 先ほどの天使な表情はすっかり影をひそめ、頭大丈夫ですか? 死にますか?とでも言いたげに無表情でこちらを蔑む目で睨んできた。


 錫杖というやつだろうか。


 結構な金槌感のある杖の頭部で殴られた。

 痛いなんてもんじゃない。

 目の前がまっくらくらのすけである。

 プシュウーと血を噴き出すくらいのあれである。


「こ、これが大丈夫に見えるってうそでしょ」


 ずきずきぐわんぐわんする痛みは、今起きている非現実的な出来事が夢ではないことを証していた。


「こほん」


 が、少女は構わず続けた。


「私はあなたのスキルとして生まれた存在。そうですね。あなたの世界では女神のようなものでしょうか」


「女神? う、嘘だろ。いや、そ、それよりも、早く手当してくれ。死んじゃう」


「仕方ありませんね。これを私に向けて『リサイクル』と唱えてください」


 渡されたのは、ペットボトルだった。


 ゴミ収集車のゴミの中に入っていたやつだろう。


 おいおい何の冗談だ。と思いながら今は一縷の望みをかけてつぶやく。


「リサイクル」


 するとペットボトルが目の前の錫杖の輪に吸い込まれて消えた。


 白い光が少女の全身を包むと、

 

——リサイクルのレベルが上がりました。

 リサイクルレベル1

 『ヒールブレス』レベル1

 『ショックウエイブ』レベル1

 を取得しました


 と言った。脳内に響いてきた声と同じだ。


「ヒールブレスを使用しますか? 使用するなら、ヒールブレスと、唱えてください」


「ヒールブレス」


 言われるがまま唱えると、少女がおれの顔に向け息を吐いた。

 やばい良いにおいだ。

 女の子の。ハアハアと息を荒くし興奮して一瞬頭の痛みが一層激しくなったものの、瞬く間に傷は塞がり痛みが消えた。


「な、なんだこれは」


「これがあなたの力『リサイクル』です。あなたはこれからこの力を使い、この世界のあらゆるゴミを回収し、世界を救っていただきます。今この世界はゴミに溢れ帰っているのであなたの力が必要なのです」


「は?」


 こうして突如としておれは異世界を救うことになったのである。


 嘘だろ。


 どうなってんのこの世界。


 やはり世界は固ゆで卵だ。そんくらい意味が分からん。

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