第2話 異母妹に思いをよせる婚約者
オーギュドリュネ殿下は、
「話を続けることにする」
と言った後、
「わたしはきみと婚約・結婚するしかないとあきらめかけていた。これからの人生はもう絶望しかないと思って、苦しみ始めていたところだったんだ。そんな時、わたしはきみの異母妹であるルゼリアと出会った。きみにとっては継母、ルゼリアにとっては実の母親からの紹介だった。わたしはルゼリアと初めて会った時、『この人こそわたしが出会うべきだった女性だ』と思ったのだ。それは運命的な出会いだった」
と少し恥ずかしがりながら言った。
オーギュドリュネ殿下は信じられない言葉を口にしている。
「わたしの母の紹介? ルゼリアが『出会うべきだった女性』だというのですか? オーギュドリュネ殿下も冗談がお上手で」
わたしはそう言った後、高笑いをする、
しかし、内心は決して穏やかなものではない。
なぜここでわたしがずっと対立している継母と異母妹の話が出てくるのだろう?
継母はオーギュドリュネ殿下とわたしの婚約式に出席していた。
その時にオーギュドリュネ殿下とあいさつをしているので、オーギュドリュネ殿下とは面識はある。
でもルゼリアは、その時に出席はしていない。
しかも、ルゼリアとわたしは同じ女子校に通っているのに対して、オーギュドリュネ殿下は男子校に通っている。
通う学校が別なのだ。
どちらもこの王国の中で選抜された人たちが通う学校だ。
お互いの学校は隣接しているのだけれど、学校が違うので、普段はほぼ生徒たちどうしの交流はない。
学園祭などのイベント以外で親しくなるのはほぼ無理だ。
それでもその厳しい条件を乗り越えて親しくなる生徒たちは一定数いる。
しかし、今までルゼリアは、男子と付き合うどころか、おしゃべりすらほとんどしたことがない。
オーギュドリュネ殿下に対しても、学園祭の時にあいさつをしたぐらいの関係だったと聞いていた。
ということはオーギュドリュネ殿下とルゼリアは、まともにおしゃべりをしたことはないはずだ。
まして、わたしと言う婚約者がいるのに、いくら継母が言い、付き添うからといって、わたしをおしのけてオーギュドリュネ殿下に会いにいくなどということがありえるのだろうか?
わたしでさえ、婚約式以降、一週間に一度ほどしかオーギュドリュネ殿下には会っていない。
それ以上会いにいこうとしても、忙しさを理由に会ってくれないのだ。
まして、婚約者ではないルゼリアが、わたしの知らない間に会いにいくなどということは考えにくいし、考えたくもない。
したがって、オーギュドリュネ殿下とルゼリアの会う機会はわたしの知る限りないはず。
わたしはそう信じたかった。
しかし……。
「わたしはきみに決して冗談で言っているわけではない。わしはきみと婚約するべきではなかった。ルゼリアと婚約すべきだったのだ。ああ、どうしてわたしは、きみのようなどうしようもない人間と婚約をしてしまったのだろう……」
そういうとオーギュドリュネ殿下は頭を抱えてしまった。
わたしは次第に腹が立ってくる。
「オーギュドリュネ殿下、いったい先程から何をおっしゃっているのです? わたしにとっては冗談を言っているようにしか聞こえないのです。冗談だと言ってください。婚約者ならここにいるではありませんか? 才色兼備でオーギュドリュネ殿下にふさわしい女性である、わたしルナディアーヌという存在が」
わたしはそう言うと、高笑いをしようとする。
しかし。笑いきれない。
オーギュドリュネ殿下がわたしに対して冷たい表情を向けたからだ。
「きみにはわたしの悲しみやつらさがわからないのだろうね。わたしはきみのような人間を婚約者にして、これからの人生が絶望的になりかけたんだ。この気持ち、きみに理解をしてもらおうとしても無駄なんだろう」
「まだそんなことをおっしゃっているのですか?」
「ああ、何度でも言おう。きみのような傲慢な人間を婚約者に持って、わたしは人生に絶望しかけたということをね!」
オーギュドリュネ殿下は吐き捨てるように言う。
わたしはオーギュドリュネ殿下の気持ちが理解できないままだった。
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