前世では恋人になった幼馴染を寝取られて短い生涯。今世ではBSSを経験。でも前世と今世で俺を苦しめた人たちのその後は……。今世では運命の人と恋人どうしになり、結婚して一緒に幸せになりたい。
のんびりとゆっくり
第1話 幼馴染で恋人を寝取られた俺
俺は桜里陸時(さくらざとりくとき)。高校二年生。
俺の家の隣には、幼馴染の冬板弥居子(ふゆいたやいこ)ちゃんが住んでいる。
恋人どうしになり、既にキスまで進んでいる俺たち。
そろそろ恋人としての最高の段階の一つである、
「二人だけの世界」
に入っていこうと思っていた。
しかし、俺の心はあっけなく壊れた。
今、俺の目の前で、弥居子ちゃんは他の男とキスをしていたのだ。
幸せそうな二人。
俺は恋人を寝取られていたのだった……。
高校二年生になった四月のある日。
桜が咲き終わって、葉桜になった頃。
夕方、俺は家に帰ってカバンを置き、着替えた後、隣にある弥居子ちゃんの家に行く。
俺も弥居子ちゃんもクラブに入っている。
俺が漫画部で弥居子ちゃんは美術部。
今日、弥居子ちゃんはクラブがないので、先に帰っていた。
いや、クラブがお互いにない日でも、一緒に下校することは高校二年生になってからなくなっていた。
登校についても高校二年生になってからは、弥居子ちゃんが先に学校に行くようになってからは、一緒にしていない。
高校一年生までは、登校はいつも一緒で、二人の時間が合えば下校も一緒にしていた。
最近のこの状況については寂しく思うことが多い。
弥居子ちゃんの両親は、別々の会社で働いていて、二人とも帰ってくるのが夜の八時頃。
俺が今日のように後から弥居子ちゃんの家に行く日は、弥居子ちゃんも俺の行動パターンを把握しているので、カギはもともとかけていない。
それでも俺は、弥居子ちゃんが玄関の前に来て、
「陸時ちゃん、上がっていいよ」
と言ってくれるのを待つ。
ただの幼馴染の頃から、返事があってもなくても、家の中に入っていいということを自然に取り決めはしていた。
それでも俺は、いつもその返事を聞いてから、ドアを開けるようにしている。
けじめの意味もあるが、弥居子ちゃんのきれいな声を聞きたいというのもある。
そして、俺は玄関に入った後、弥居子ちゃんに対して必ず、
「弥居子ちゃん、おじゃまします」
と言ってから家の中に入っていくのがパターンだった。
しかし、俺がチャイムを押した時、弥居子ちゃんが二階にいる場合は、弥居子ちゃんの返事が遅れることもあるし、返事自体がない場合がある。
弥居子ちゃんは、
「二階にいるとチャイムが聞き取りづらい時もあるし、聞えない時もあるの。ごめん」
と言っていた。
返事が初めてなかった日、俺はどうするか迷った。
しかし、家に来ること自体は、弥居子ちゃんは知っているし、返事がない場合も家に入ってかまわないことは、ただの幼馴染の頃から自然と取り決めていたことだったので、俺はドアを開けて家に入った。
弥居子ちゃんは予測した通り玄関にはいなかった。
そこで、直接弥居子ちゃんの部屋に行くことになった。
弥居子ちゃんは部屋にいて、俺がやってきたことに少し驚いていた。
怒られるかと思ったが、
「ちょっと驚いただけ。わたしがチャイムに気がつかないのがいけないの。気にしなくていいわよ」
と言って、怒るどころか恥ずかしそうに微笑んでいた。
そして、
「もう、わたしたちは恋人どうしなんだから、もし、わたしが玄関にいなかったら、二階のわたしの部屋に、今日のように直接来てもらっていいわよ」
と言ってくれた。
このように直接弥居子ちゃんの部屋に行く場合もあるが、この場合でも玄関で迎えてくれる場合でも、一度は二人で一緒に台所へと向かうことになる。
弥居子ちゃんは、台所で紅茶を用意してくれる。
そして、俺たちは台所とつながっているリビングのソファーに座り、紅茶を飲んでくつろぎながら唇と唇を重ねていく。
それが毎回、うれしくてたまらなかった。
ところがこの「儀式」も高校二年生になってからは行われなくなった。
高校二年生の新学期を迎えた日に、お互いクラブがない日にも関わらず、弥居子ちゃんから一緒に帰ることを断られてしまい、
「友達と遊んで少し遅くなるから、わたしの家には来ないでほしいの」
と言われたのがきっかけだ。
この時は一過性のものだと思ったが、その後も俺は、弥居子ちゃんと一緒に下校できる日は一緒に帰ることを断られるとともに、友達と遊ぶことを理由に弥居子ちゃんの家に行くことを断られ、別々に帰る日も、その後友達と遊ぶという理由で家に来ることを断られてしまうようになっていった。
では休日は、というと、こちらはこちらで友達と遊ぶという理由で、一緒にいることができなくなった。
こういう日が続くとさすがに俺も欲求不満が貯まってくる。
俺は弥居子ちゃんの恋人だというのに……。
だんだん俺の心の中に湧き上がってくるのは、浮気のことだった。
弥居子ちゃんは誰かと浮気しているので、俺と一緒にいるのを嫌がっているのではないか?
そう思い出すと、心はどんどん苦しくなってくる。
でも、弥居子ちゃんは奥手な子だ。
幼馴染の俺とでさえも、恋人になってからは恥ずかしがっていたほどの子だ。
浮気などできるわけがないと思っていた。
何かの間違いだと思った俺は、
「お願い。久しぶりに弥居子ちゃんと一緒にいたいんだ」
と言って、弥居子ちゃんに頭を下げてお願いをした。
弥居子ちゃんはそれに対し、
「うん。いいよ」
とあっさりOKをしてくれた。
俺はその時、
「浮気をしていれば、こんなにすぐにOKを出すはずはない。浮気をしていると思ったのは、俺のただの思い込みだ」
と思い、ホッとしていた。
しかし、それこそが俺のただの思い込みだったのだ。
既に弥居子ちゃんが俺のもとから離れていたことに、その時の俺は全く気がついていなかった。
俺は久しぶりに弥居子ちゃんとイチャイチャできると思うと、胸のドキドキが大きくなってきていた。
俺はチャイムを鳴らす。
しかし、弥居子ちゃんの返事がない。
弥居子ちゃんは二階にいるので、チャイムが聞えないのだろう。
チャイムが聞えない場合は、ドアを開けて、直接弥居子ちゃんの部屋に行くことにしている。
今日も同じことだろうと思って、俺はドアを開けて二階にある弥居子ちゃんの部屋に向かった。
しかし……。
階段の途中まで歩いてきたのだが、何やら声が聞こえてくる。
弥居子ちゃんが独り言を言っているのだと最初は思った。
でも、男と思われる声も聞こえてくる。
俺は部屋のドアの前に来た。
すると、
「わたし、集七郎(しゅうしちろう)先輩のことが好き」
という弥居子ちゃんの声と、
「俺も弥居子のことが好きだ」
という男の声が聞こえてきた。
これはいったいどういうことなんだ?
俺は今日、弥居子ちゃんの家に男の友達を呼んだ覚えはない。
だいたい自慢ではないが、俺には友達はほとんどいない。
唯一友達といえるのは、恋人でもある弥居子ちゃんだけだ。
そして、弥居子ちゃんの方も、俺と言う恋人がいる以上、男を連れ込むことなどありえない。
したがって、弥居子ちゃんの部屋に男が入ること自体、ありえないことなのだ。
では、この男はいったい誰なのだ?
「俺も弥居子のことが好きだ」
と言っているようだったが、弥居子ちゃんとどういう関係なのだ?
俺は混乱しつつ、
「弥居子ちゃん、帰ったよ」
と言ってドアを開けた。
するとそこには……。
俺が想像もしなかった世界が広がっていた。
(あとがき)
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