Chapter 1
第1話
私は立花家の長女として生まれ、シングルマザーの母と5歳になる弟とで暮らしている。
私は20歳になり短期の大学を卒業した。
母を楽にさせてあげたいと常々思っていたが
長年働いていたバイトの時給も、
それほど高いとは言えず、大して生活費の足しにはならなかった。
好条件の仕事を探していたものの
そう簡単には見つからず苦戦していた私だったが
運の良い事に、真田家で使用人として採用をもらうことが出来た。
正直なところ、嬉しくて泣きそうだった。
なんでもしてやるという意気込みが空回りしてもいけない。
でも、浮かれる気持ちを抑えるのも難しいほどに私は手放しで喜んだ。
ひとつ奇妙だったことといえば、初出勤のことで電話をしたときの事だった。
当主の方から
「男性の格好で職務に当たってほしいのですが」
と条件を提示された。
なぜ、男装する理由が? と首を傾げたが深く追求はしなかった。
募集要項には事務としか書かれていなかったし
男装する理由も見当たらなかったが、何せお給料がとんでもなく良かったのだ。
そんな奇妙な条件さえも気にならない、気合と根性で乗り越えるぞ、と小さくガッツポーズをしてその条件をのんだ。
私が男装してバレないだろうかと、一抹の不安もあったが、努力はするつもりだ。
それなりに男性に見えるように整えていくしかないなと、まず美容院を予約するところからはじめた。
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