28. 恐いお化け

 相対しただけで背筋が凍る。アリソンは身動き一つできなかった。黒猫も若鳥も、石になったかのように動かない。

 そのお化けは、アリソンを見つめているだけだった。視線が交差する。逃げ出したい――でも、逃げられない。

「それで?」

 お化けは、威圧するでもなく、何気なく口を開いただけだった。だけどアリソンは、ひどい緊張感を強いられた。腹に力を込めなければ、無様に叫びだしそうだった。

「あなたに……仲間になって欲しくて」

 喉が貼り付きそうなところを、どうにか声を絞り出す。恐いお化けは少しだけ目を細めた。

「いいだろう」

 答えてお化けは煙のように消えた。アリソンの身体から、途端に汗が噴き出した。

 安堵と達成感が湧き上がった。

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