08. 長いお化け

「地縛霊なんだ」

 そのお化けは言った。長いお化けだった。人魂をガムのようにびよんと引き伸ばした、そんな形をしていた。

「ここから離れようと思って頑張ったんだけど、からだが伸びるばかりで、根元のほうはそのまんま。結局ここから離れられなくて、このざまさ」

 そういうこともあるのかとアリソンは感心した。魔女でも、お化けのことはまだまだよく分からない。ただ一つ。みんな自由だ。

「まだここから離れたいと思う?」

「離れられるならね。もう諦めちゃったけれど」

 いつか成仏できるなら、そのときでもいいかな。のんきに頭の後ろで腕を組んで、そんなことを言った。

 おかしなことだ。こんなところで成仏だなんて。どうやら気も長いらしい。

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