01. 赤いお化け

 道すがらリンゴの木があった。赤い実一つ生っていた。足元でじたばたとヒヨコが騒ぐ。

「欲しいの?」

 ヒヨコはアリソンを振り返り、キラキラ目を輝かせた。

 アリソンは人差し指を振った。ポトリとリンゴが落ちる。ヒヨコが大喜びで飛びついた。小さなくちばしでツンとつつくと、悲鳴があがる。

 近づくと、リンゴのほうがわんわん泣いていた。違う。これは赤いお化けだ。

 人見知りなの。お化けは言った。アリソンたちが来たから、リンゴのふりして隠れたと。シャイなお化けの顔は真っ赤。でもこっそりと、こちらを窺っている。

 アリソンは微笑みかける。

「友達にならない?」

 赤いお化けは驚いて、嬉しそうに頷いた。

 やれやれ、と黒猫が溜め息を吐いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る