極短ホラー くびおんな

宝力黎

 くびおんな

 流行の噂というものが時代時代にある。


「ねえ知ってる?くびおんなって居るんだってさ」

 小学生を中心にした噂は、それをマスコミが取り上げたことで一気に広まりを見せた。

「どんな噂か教えてくれる?」

 取材者が向けたマイクに、モザイクの掛かった少女と思われる人物が答えて言った。

「首から上を探してるんだって」

「首から上?頭が無いの?」

「そう。私のクビ……見た?って言うんだって」

「話せるの?」

「話すのはね、その女じゃ無いよ」

「誰が話すの?」

「見た人」

「どういうこと?」

「くびおんなを見ちゃった人はね、いつのまにか自分の首をとられちゃうんだよ。しはいされるの。だから、話すのは自分の口」

「支配されて――どうなるの?」

「返すの」

「え?」

「返すんだよ、首を。自分で切って返すの。でも、くびおんなは自分に合わないって言って、怒って捨てるの」


 他愛の無い子供の噂話――大人はそう思った。だが、その放送の三日後、都内某所にある公園で首から上の無い成人女性の惨殺体が発見された。その近くには、苦痛に歪んだ顔の女の首が転がっていた。


「くびおんなは居るんだってば。助かりたかったら、見つけてあげるしか無いの。いつくびおんなと会ってもいいように女二人で歩いて、自分以外の、友達とかの首をね、これでしょって言って突き出すの。その間に逃げるんだよ。だって、一番大事なのは自分でしょ?」

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極短ホラー くびおんな 宝力黎 @yamineko_kuro

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