Angelic night

影山 みはつ

第1話 ユリア


羽を生やした天使が

 羽を羽ばたかせようとして

   羽はいつの間にか落ちていた。


私は、ユリア。

まだ私は見習いの天使。

そこら辺に居る鳥よりも飛べない、そんな私は無意識の内に、エンジェリックウォールの前に来ていた。

ガラガラと扉を開けて、そこにはユリアを見つめる沢山の見習い天使が居た。

ナツメが「あんたさ。そんな所でボサボサしていないで、さっさと座りなよ」とユリアを横から睨み付けた。

ユリアは「何あの子?何も知らない私に対して知らんぷりして、どういう神経をしているのかしら?」とカンカンに怒って居た。

ミラールが「ユリア、初めまして。私はミラールよ。最近、ここら辺で困っているおばあちゃんが居て、荷物をたくさん背負っていて可哀想なの」と話を始めた。

ユリアは「じゃ、私、そのおばあちゃんの荷物を持つ手伝いをしようかな」とミラールの話を信じた。

ナツメが「あら、また、ミラール嘘の話を始めたのね?あの子まんまと信じているわよ」とユリアを見てケラケラ笑っていた。

ユリアは「感じ悪い子?」とナツメを見てすごい形相で睨んで見ていた。

ナツメは「へ、どうとでも思って居れば良いわ」とユリアを睨んで、2人とも険悪なムードを漂わせていた。

リシアが「ちょっと2人共?そんなに睨み合って居ても拉致が開かないわ?此処は見習い天使の修練場、エンジェリックウォールよ。覚えておきなさい」と手を腰に当てて偉そうに立っていた。

ナツメが「しょうがないな?リシアの言う事なら聞くよ」とリシアの命令に忠実であった。

ユリアは「あの子凄いんだな」とリシアの事を見惚れて居た。

リオが「ユリア、あんまり、逆らわない方がいいよ。天使界を追放されたくなければ」とユリアを宥【なだ】めていた。

ナツメが「あんた命拾いしたね?今後は逆らわないようにね」とシレっとした態度でユリアの前を悠然と横切って行った。

ユリアは「ムカつく?あいつさえ居なければ」と手をグーにして今にもパンチをしたいくらいイライラしていた。

ユリアは羽を広げてバサバサと空を飛んで行った。

リオは、上を見上げてユリアに「何処へ行くの?ユリア。もう、知らないからね」と大きな声でユリアに向かって叫んだ。

ユリアは「もう、あんな子が居るから修練場には居られないわ」と呟いていると、カラスがチョンチョンと背中の羽を突っついていた。

ユリアが「痛い。何よ」と叫んで、上空から地上に降り立った。

ユリアの羽は、赤くなり、血が出ていて、羽を広げ飛ぼうとすると痛みが走った。

ユリアは「痛い。どうしよう?飛べなくなっちゃった」と大きな空を下から眺めていた。

リサが「ね?そこに居るのは誰?」とユリアが寝ている所で顔を覗かせて様子を見ていた。

タカシが「リサ、何やっているんだよ。もう、授業始まるぞ」と大きな声でリサを呼んだ。

ユリアは「あなたは?」と眩しい陽の光で暗くて顔が見えなくて、リサの方に顔を向けた。

ユリアが寝ている間に保健室に運び、リサは、ユリアの羽の傷の手当てをしていた。

ユリアが目を覚ますと、「あ、気づいて良かった?あなた羽に傷があって痛々しそうだったから消毒をしてカットバン貼っておいたから安静にしてね」とリサは声を掛けた。

ユリアが「ありがとう。私はユリア。あなたはリサちゃんかな?」と訊ねた。

リサが「何で私の名前を?」とユリアに逆に聞き返した。

ユリアが「さっき名前を呼ばれていたみたいだったから」と照れくさそうに後ろの髪を撫でた。

リサが「そう。私は誰とも仲良く出来ないし、他の人とうまくやろうとすると声を掛けられないの」と落ち込んでいた。

天使のユリアは「そうなんだ。じゃ、私が呪文唱えるね?ブリリアン、ブリリアン、皆と仲良く出来ますように」と白いキラキラとした光と共に祈りを込めて呪文を唱えると、リサの周りには人だかりが集まっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る