第5話 土精霊
何か不思議な感じがするので、真ん中の窪みを観察していた。
・・・ふと、その窪みの真ん中の砂が<ボコボコ・・ウネウネ>しだした。
まずい! ガスか?噴火か?~
ボコッ!って何かが噴き出してきたようだが・・・何だろう、見えない。
やっぱガスなのか!~
いや、違うな、匂いもないし、僕の気分もなんともない。まさか、無臭無毒の何かか?
「※X〇※X〇!!」
なんだ?誰?何か声?がしたけど・・・気のせい?
「※X〇※X〇!!!」
まただ! すまん! 誰かいるのか? 言葉が分からないんだ・・・
途端に、急に僕の腕も手も動かせなくなって、じっと見れば、動きを止めた僕の腕に小人? 小さな男の子が座ってる。
「これでいいだろ? どうだ俺様が見えるか? 声は聞き取れるか?」
「あ!はいはい、見えます。小人の男の子、それに話し声もわかるようになりました」
「ほう? あんた人間だろ?なんでこんなところにいるんだよ? それに凄いなその適応力、一瞬だな! もうちょっと時間がかかるかと思ったが・・・」
「えっと? はい、僕は人間です。2か月くらい前にこの世界にやってきました。あなたは?」
「そうか・・・不思議な人間だな。俺様は土の精霊だ! 上級精霊だぞ!~」
「はい、精霊様、えっと~僕の手が動きませんが・・・・」
「ああ、あんたが驚いたはずみで俺様に危害を加えるといけないからな、止めてある」
「いえいえ、決して! そんなことはしませんので、動くようにしていただけますか?」
「まあいいだろう、でも、俺様があんたから離れたらまた見えなくなるし、話もできないぞ?」
「ええ、そのことですが・・・きっと・・・大丈夫です。僕から離れて、僕の手を動くようにしてください」
「そうか?・・・」
精霊が腕の上から離れて窪みのあたりに避難して、そして僕の手が動くようになった。
やっぱりな! 思った通りだ。見えてるし・・・
(精霊さん、ありがとうございます。見えますよあなたが・・・その窪みがあなたの住んでいる場所なんですね)
(何だって!~ 見えるんかい!それに何故、精霊の言葉を話せるんだ!~)
(ええ、だから、今、ありがとう、ってお礼を言いました。あなたから<精霊のスキル>をいただけたようです、これ僕の特技なんです)
(う~ん、そうなの? 人間、あんた凄いな!)
(いえ、僕は普通の人間で、名前はミチナガって言います。さきほども言いましたが、この世界へ来てからまだ2か月くらいしか経っていません)
・獲得スキル:精霊魔法、精霊土魔法、
いろいろ話してくれた。どうやら僕が無害な奴って認めてくれたようだ。
この山には二人の精霊が住んでいる。ときどき他の精霊も来るって言ってたが・・・
この土精霊と、山の中には火山精霊がいて、火山精霊は現在休眠中であと1000年は目覚めないだろう、って言ってる。
それって? 休火山って状態なんだな。
(人間のくせに何故こんな魔物の世界にいるんだよ?
しかも、ここまでどうやって上がってきたんだ?
いきなり精霊言葉を話すから驚いたし!~・・・)
この世界に最初に現れた場所がこの山の麓のオークの村だったこと、この山の少し下にある滝壺まで飛んできて、そこからは自力で登ってきたこと、精霊言葉を話せるようになったのは、僕のスキルで土精霊であるあなたの魔力を参考にさせていただいたから・・・
(びっくりだぜ!~ こんな人間もいるんだ~ それで?これからどうすんだ?)
(ええ、特に決めてませんが、土精霊さんにもう少しいろいろ話を聞かせていただければ・・・それでいろいろ教えて欲しいのですが?)
(別に良いけどさ・・・)
(ああ、お礼は、こういう物ならありますけど・・・)
収納の革袋から、果物をたくさん出してあげたが・・・こんなんじゃ駄目だろうな・・・
(おおお~~~これはおいしそうだな! これもらっても良いのか?)
(ええ、まだありますが・・・)
(いや、とりあえずこれだけもらう。なくなったらまたくれ!)
(はい、それで良いです)
(よし、契約成立だ! 人間たちはこう言うのだろう? 知ってるぞ!)
(はい、そのとおりです)
(では、まず・・・これを食べようかな?)
(はいどうぞ、水は必要ですか? 下の滝つぼの水ならあります。でも、器がありません)
・・・と、僕の手の中に突然、石作りの器が現れた。少し重めの丼椀だな。
(これは?お持ちでしたか?)
(いや、今、作ったよ、そんなんで良いだろ? あそこの水、おいしいんだよな)
収納革袋からお椀に水を注いであげた。既にバナナを3本も食べてしまってる。あのちっさい体のどこに消えていくんだ?・・・
今度はスイカウリにとりついてるがどうやって食べるんだ?切らなくても良いのか?
どこからか小さな金属製のナイフを取り出して、それでスイカの一部の皮を丸く切り取って穴を開けた、と思ったら、そこからスイカの内部へ潜り込んでいったよ。
なんか、見てると、ほっこりする・・・
あれ? 出てこないよ・・・
(土精霊さん? 大丈夫ですか?)
(うん、平気平気・・・この赤い実、甘くておいしいな・・・・)
くぐもった声が聞こえてくる、が、まだ出てくる気配さえしない。
まあ、この間に、僕のレベルを確認してみよう・・・
*ミチナガ 26歳
・レベル 880
・獲得スキル:精霊魔法、精霊土魔法、
精霊魔法スキル :精霊の加護、精霊空間収納(無限)、精霊通信、精霊結界、
精霊土魔法スキル:精霊土魔法、地中転移、精霊錬金、鉱脈探査
精霊土魔法は、土や地面など大地に対する魔法。人間の世界なら、農業用地や菜園などの土作りといったものから、道路の新設、整備、城壁構築・・・そういったものに利用できる魔法。
地中転移は、土精霊が得意な転移で、大地の地中を伝わって転移できるスキル。
精霊錬金は、土や鉱石に含まれている金属素材を分離精製して、それを加工して物を作りだすことができる。金属加工の他、土の加工、石の加工も同じ。そして、この錬金で作り出した物には魔法やスキルを付加することもできる。
鉱脈探査は、鉱脈の在処を詳しく探査できる。
あれ? なんかとんでもない能力を得られた!? これが精霊の力?
<モグモグ、プハァ~>
(うん、ミチナガよ、満足満足、おいしかったよ!)
(まさか~ 全部食べきったのですか?(うん!) おなかは平気?(うん!))
(そうですか・・・それは良かったです。まだありますし、それにどこにあるのかも分かっていますから)
(うん、いいね! さて、じゃあ、水浴びしようかな・・・)
ああ、そういうことですか~ 先ほどのお椀に飛び込んでスイカの汁などの汚れをきれいにしているんだな・・・
(よし、さっぱりした~)
と、どこからともなく、暖かい風が吹いてきた。あっ!これ良いですね~
(あははは、良いだろ? これ<温風>っていう魔法。精霊の生活魔法って奴かな?)
何だって!~ <温風>って・・・
ひょっとして僕にも使えるのか? 精霊魔法のところだよな・・・どれどれ・・・
(うん? ミチナガ、上手いじゃん! 温風、出来てる、あんた凄いよ!)
(ええ、土精霊さんのお陰です! ありがとうございます)
(うん、うん、そうだね、別に良いよ・・・)
(ところで、土精霊さんはお名前は?)
(う~ん、確か・・あったよ・・・使ってないし、忘れちゃったよ~~ なんだっけ? ナム? 違うな、ノム? そうだ! ノームだよきっと、思い出した」
なるほど、大地の精霊の名前だっけ・・・
(では、ノーム先生、僕に精霊魔法の手ほどきをお願いします)
(うん、良いよ。契約したからさ・・・)
ほぼ複製できてるので、確認のためノームに見てもらう。
(ははは、ミチナガ、どこで覚えたのさ~ 全部完璧!)
(ええ、ノーム先生のを参考にしているだけですよ)
「ふ~ん・・・」
(ところで、この近くに鉱脈みたいなものは?)
(うん、この山にもたくさんあるよ、深いところは駄目だよ、あいつが起きてきちゃうと、世界が変わっちゃうからね・・・、でも、あいつの寝てる場所の近くって、キラキラの綺麗なのがたくさんあるんだけどね~)
いやいや、そんな深いところの、恐らく溶岩でドロドロの近くは・・・遠慮いたしますよ!
(そうだなぁ~ ミチナガは何が欲しいの? 金、銀、白金、ミスリル、銅、鉄、それとも宝石? ダイヤ、ルビー、サファイア、エメラルド・・・とか?)
(あの~<錬金>というものを練習したいのですが)
(そう? ならまずはミスリルかな? そのあたりにあるよ、探ってみれば?)
と、ノームが教えてくれたあたりを中心にして、<鉱脈探査>を使ってみた。
なるほど、こういう感じに分かるんだ!~
縦だったり、横だったり、層になっているんだな。
場所は分かった。
(ノーム先生? ここ、掘っても良いの?)
(良いよ、壊れたらあとで治せば良いし・・・でも、<鉱脈探査>をコウ使うと、掘らなくても金属だけ取り出せる・・・)
あっ!という間に、ノームの所に、ミスリルの金属の塊が転がっている。
(あれ? 先生? どうやったの?)
(ふふふ、ミチナガ君、よ~く見て感じるんだよ!)って、わざわざ僕の肩の上に乗ってくれてソノ技を使ってくれた! ラッキー! ノームって僕の考えてること全部分かってるよ、きっと・・・
おかげさまで、<鉱脈探査>の裏技<金属抽出>を得られた。
*鉱脈探査
*金属抽出
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