恋愛下手な美人の姉を慰めていたら、気づけばハーレム状態になっていた件について。
@とむ
第1話 姉貴のいじけタイム
48回も振られた美人の姉を慰めるのは、もう俺の仕事になってしまった。
「なんでよぉぉぉぉ! 待ってよ、あきら、ねえってば!」
悲しそうに叫ぶお姉さん――いや、俺の姉貴だ。いつも同じ光景。どんまい、きっと次は良いことあるよ、と声をかけたいところだが、振られたのはこれで48回目。うちの姉貴「
「
彼氏いない歴=年齢の姉貴が、泣きじゃくってファミレスで大騒ぎ。美人で頭も良くて、おまけにボイン――まあ、才色兼備なんだけど、なぜか男運だけは絶望的。
「はいはい、いーこ、いーこ」
「そんなんじゃだめっ! 奏くん、もっとちゃんと慰めてぇぇ!」
涙で俺のズボンがびしょ濡れ。バッチリ決めてたメイクはぐちゃぐちゃになって、顔が真っ赤。これ、毎度のことだ。
「おいおい、泣くなよ、姉貴。次があるって」
「私、こんなに可愛いのにぃぃぃ!」
そう、いじけタイムに突入。こうなった姉貴を止められるのは俺だけ。
「はいはい」
「ちゃんと聞いてるの!? ねぇ、奏くんってば!」
「はいはい」
「いつも言ってるじゃん! お姉ちゃんの話はちゃんと聞いてって!ひ、ひどいよ、話を聞いてよぉぉ……」
泣き声はますます大きくなる。いやほんと、次があるよ、姉貴。頼むからもう少しだけ冷静になってくれ。
「ちゃんと聞いてるさ、ほら、オラウータンがどのように誕生したかだったよな?」
「違うよおぉぉぉぉ!お姉ちゃんの話、ちゃんと聞いてないじゃん!!」
「姉貴が好きなデラックスフルーツもり合わせホイップ頼んで良いからさ」
「ほんとに!!」
注文するのはとても早かった。立ち直りもな。
注文したデザートが届き、姉貴はすっかりご機嫌だ。メロン、マンゴー、葡萄、みかん、いちご、バナナなど、彩り豊かなフルーツが角切りでぎっしりとグラスに詰められ、その隙間を埋めるようにフレークが詰まっている。さらに、その上にはこれでもかというほどホイップクリームが山盛りにされている。見るからに甘い一品だ。
「うーん、おいしぃぃ!」と姉貴は嬉しそうに頬張る。
「奏くんも食べなよ、はい、あーん!」
これが男キラーたる理由その2――誰にでも間接キスをさせるこの行為だ。相手が誰であろうと、平然とこういうことをする。それが好きな人だけに向けた特別なものだったら、もう少し恋愛もうまくいくんじゃないかと俺は思わなくもない。
仕方なく、俺は姉貴の差し出したスプーンに口を開け、生クリームをすくって食べる。甘い……甘すぎる。生クリームも、姉貴の言動も、そして今のこの状況も。全部がやたらと甘ったるいんだ。
「そういえば、奏くんは好きな人できた? お姉さんが相談に乗るよー」と、姉貴はスプーンをくるくると回しながら、無邪気な笑顔を浮かべて言う。
その無防備な笑顔を見て、俺は一瞬「こんな姉貴が恋人だったらな……」とか、ありえないことを考えてしまった。だが、待てよ。これは警告だ。そこの君に告ぐ――今すぐ他の女のところへ行きなさい。これは弟だからこそ言えることだ。
姉貴の無邪気な笑顔に惑わされてはいけない。何も言わずに去るのが君のためだ。
「できない。俺も姉貴と同じだよ。あと一歩のところで誰かに邪魔されたり、さっきの姉貴みたいに他の女の子に取られたりして、うまくいかないんだよな」
「ふーん、そうなんだ」
姉貴はスプーンを回しながら、どこか嬉しそうな表情を浮かべている。普通、姉としては弟の恋愛を心配するものじゃないのか?そう思うんだけど、何かが違う気がする。
俺は姉貴の幸せを本当に願っている。それは、嘘偽りのない本心だ。だけど……こうやって隣で無邪気に笑う姉貴を見ると、どうにも複雑な気持ちが胸に湧いてくる。
俺は姉貴に、ただ幸せになってほしい。それだけなんだ。うん、本当に。
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