第4話 転生ヤモリ、ドラゴンと話す
『おやおや、まぁまぁ……!!
(なんなの、これは……!? 強敵なはずなのに、逃げようという気が起きない……理解出来ない……怖い!!)
逃げる事はもちろん、震える事すら出来ない。許されない。
それほどまでにどうしようもないくらいの大きな差が、私とドラゴンの間には存在していた。
寝そべっているドラゴンの体は、見上げても一番上が見えないくらいに大きくて、山のようだ。私など、簡単に
だが、何よりも恐ろしいのは、力の差でも大きさの差でもない。
強いはずなのに……逃げようという気にさせないところだ。
『……確かに君にとって僕は
(っ!? もしかしてドラゴンさん、私が考えてることわかったり……します?)
わざわざ体を寝かしてまで、私と目を合わせてくれたドラゴンさんに
もう、怖くはなかった。
私を見つけた瞬間に飛びかかってきた、「イ◯ゴ」やカエルの
真っ赤な体をしたドラゴンさんの金色の目は、とても
ドラゴンさんは、良い人……だと思う。
そもそも、今までみたいに会った時の「逃げなきゃ死ぬ」みたいな感覚がないって事は、危険じゃないって事なんじゃないかと思うし。
『うん、僕は君が考えてる事がわかるよ? だから、もし
ドラゴンさんはそう言って、真っ赤な尻尾を少しだけ左右に振った。
まるで、手を振るみたいに。
◇
(おうふ……もしかしなくても、この人めちゃくちゃ良い人だ!!あ、良いドラゴンさんか)
綺麗な翠色の体をしている小さな女の子は、体と同じで綺麗なエメラルド色をしている瞳を、キラキラと輝かせながら僕を見上げた。
僕がなんで自分の考えを知れるのかも質問しないままに、僕の事を「良い人」認定してしまう
(なんて呼べばいい? 貴方のお名前は?)
ほんの少しだけ考えてから、彼女は尻尾を嬉しそうにブンブンと振りながら尋ねてきた。
他にも、彼女の頭の中には次々と言葉が浮かんでは消えていく。
(私、貴方と一緒にここにいても良い?)
(貴方と仲良くしたい!!)
(やった!! やった!! 話し相手ができる!!
うん。色々と気になる。
なんだか、随分テンションが高いようだね……。
僕の最近の
とりあえず、ゆっくりと一個ずつ解決していくか……。
『……最初に訊く事が、名前かい?』
他にも、訊くべき事はもっと沢山あるだろうに……。
(うん!! 呼び方がわからないと困るでしょ?)
僕の考えなど知らない彼女は、不思議そうに首を傾げる。
それでも、訊かれたのなら答えようと思って……気がついた。
『……呼び名は、無いな。強いて言うなら、
(それ、名前じゃなくない?)
その通りだ。
体の赤い竜だから、紅竜。人間に付けられた、
う〜ん、どうしたものか……。
僕だって、長い間生きていて、初めて仲良くなれそうな様子のこんな可愛い子に「紅竜」なんて呼ばれたくない。あまり好きな呼ばれ方じゃないし。
本当に、どうしよう。
僕が
(ねぇ!! もしドラゴンさん……竜さん? が良ければなんだけどさ、私が名前を付けようか? その代わり、私の名前は竜さんが付けてよ!!)
◇
(あれ? ドラゴンさん改め竜さんが固まっちゃった。私、なんか変な事言った?)
挙手も出来ない不自由な短い前足を恨みながら、私は考える。
(私、ネーミングセンスは割とある方だし悪いようにはならないと思うんだけど……自分の名前を自分で付けるとかいう虚しい事、きっと竜さんもしたくないし、良い案だと思ったんだけどなぁ……)
私が少し目を伏せて
『僕はとても嬉しいのだけど……君は僕のセンスで名前を決められていいのかい?』
なんだ。嬉しくて固まってただけか。
竜さん、可愛いとこあんじゃん?
私は尻尾を振り、前足でタシタシと地面を叩きながら返事をする。
ヤモリに表情って
(もっちろん!! 「紅竜」を名前にカウントしないで嫌がってる時点で、多分私とセンス似てるし!!)
むふふっ!! OKもらった!!
(じゃあねぇ、じゃあねぇ!! 体の赤色が綺麗で、宝石のルビーみたいだから……竜さんの名前は『ルビア』でどう? 紅竜より全然良くない?)
うん、私やっぱりセンスあるねぇ!!
名付け終わってからそう自画自賛していると、急に眠くなってきて体を伏せる。
(な、なんか眠い……今まで、こんな事なかったのにぃ……スヤァ)
私は「ルビア」と名付けた大きな竜のすぐ横に伏せて目を閉じ……襲いくる
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