第40話 僅かな狂気
ルンが少し迷いを見せるような素振りを見せる。
しかし、その表情は次第に変わり、内に秘めた怒りが浮かび上がってくるのが分かった。
「ルン、仲間のユキ達が殺された可能性もあるんだぞ。それに、こいつはゴウの剣も持っている」
俺の言葉に、ルンの瞳には再び怒りの炎が燃え上がる。
ルンの額には怒りに震える血管が浮かび上がり、その様子からもルンが強い感情を抑え込んでいるのが伝わってきた。
俺はルンが冷静に判断できるよう、時間を与えるつもりでルンの反応をじっと見守る。
「お、おねがいします、助けてくだ……」
レードが怯えた表情でルンに許しを請う。
その言葉には微かに涙が滲んでおり、かつての尊大な態度とは程遠い。
だが、その涙を見たルンの表情は冷え切っていた。
「ユキ達も同じ事を言ってなかった~?」
ルンの言葉に、レードの顔色が青白くなり、恐怖に震えだす。
レードの過去の非情な行為が、自身に返ってきたことをようやく理解したようだ。
すがりつこうとする手も震えており、もはやその姿は哀れさすら感じさせる。
「い、言っておりました……」
自分が奪った命が、いま自分に返ってくる。
その恐怖が彼女の顔に浮かび上がる瞬間、ルンはその表情を冷たく見下ろし、決然とした口調で静かに言い放つ。
「そっか~、じゃあ死んで」
ルンは片手をゆっくりと挙げ、その手から真紅の魔力が放たれた。
《第六級魔法/フレイム・バースト》──その魔法は放たれると同時に、赤い光がレードの頭をめがけて放たれる。
ルンの小柄な体からは想像もできないような強大な魔力が、空気を震わせる。
瞬間、放たれた炎弾がレードの頭部に命中し、わずか一瞬のうちにその頭部は消し飛び、燃え上がる火柱が舞い上がった。
炎はその場に残ることなく瞬く間に消え去り、跡には何も残っていなかった。
ルンの魔法により、レードの命はあっけなく終わりを告げた。
「意外と、惨いんだな」
俺は驚きと共にルンに視線を向ける。
彼女のその行為に、少しだけ驚きと同時に敬意を抱かざるを得なかった。
小柄で愛らしい外見とは裏腹に、ルンは冷酷さすら備えているのだ。
「アレンが私にそう仕掛けてきたんだよ~」
ルンは少し不満げに言いながら、ぷいっと顔を背ける。
しかしその目は僅かに狂気が宿っているようにも見え、先ほどまでの彼女とは少し異なった面を感じさせた。
「取り合えず、ユキ達がまだ生きている可能性があるから、急いで探すぞ」
レードの執拗な攻撃を受け、ユキ達が無事であるかは不明だが、あの頑強な仲間たちなら、きっとどこかで生き延びているはずだ。
俺はレードの近くに落ちているゴウの剣を持って、ユキ達を探しに行くのだった。
―――
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