第35話 漆黒の剣「ブラックソード」
ルンは驚いて目を見開く。
俺も基本的には後方から魔法で支援する魔術師だが、この緊急事態ではそうも言っていられない。
前衛もこなせるように、ある程度の剣技は習得しているのだ。
「大丈夫だ、俺はある程度、剣技にも心得がある」
俺は少し微笑んでみせた。
「わ、わかったよ〜。《第七級魔法/ステータス上昇!》」
ルンが震える声で呪文を唱えると、俺の身体が光に包まれた。
力が内側から湧き上がるような感覚がして、筋肉が普段以上に反応するのが分かる。
全身が活力に満ち、集中力も研ぎ澄まされていく。
身体の隅々まで感じるこの力は、まさに戦闘のために生まれたものだった。
(懐かしいな、剣を振るうのは)
俺は久しぶりに、前世の記憶を思い出していた。
原作では、俺は魔法使いとして後方支援が主だったが、パーティが足りない時には前衛として剣を手にすることも少なくなかった。
仲間たちと、プレイヤー達と共に戦った日々が、今の俺を支えている。
「それにしても……」
俺は心の中でつぶやく。
前世のゲームで共に冒険した仲間たち、あの時の戦闘や交流の記憶が今も鮮明に思い出される。
あの世界のプレイヤーたちは今、どうしているだろうか……。
懐かしい仲間たちのアバターが浮かぶと、心にほんの少しの温かさが広がる。
「いやぁ、すまないヤギンよ。過去の記憶を思い出していてな」
俺は冷静さを装って、空間を歪ませながら愛用のアイテムを取り出した。
視界の奥で揺らめく魔物の影を感じながら、気を引き締める。
剣を取り出すまでの間に、少しでも冷静でいられたことを感謝した。
「久しいな、この剣を使うのは」
「え、ど、どこからその剣出てきたの〜!?」
ルンが驚愕の表情で俺を見る。
「これは俺のアイテムボックスだ。空間を歪ませ、内部にアイテムを収納できる便利な魔法だよ」
俺が取り出したのは、漆黒の剣「ブラックソード」。
前世で黒重兵を倒し手に入れた、S級アイテムだ。
その闇の力は強大で、敵の体を闇に侵食させる能力を持っている。
「ウオォォォォォ!!!!!!」
ヤギンが怒りの声を上げ、猛然とこちらに突進してきた。
その動きは凄まじく速い。
だが、俺は焦らず一歩後ろに下がり、ブラックソードを構えた。
「そう焦るな──《第三級剣技/グリム・死影刃》!」
剣に闇の魔力を纏わせ、目視できない速さで俺はヤギンに近づく。
闇に包まれた剣がヤギンに触れた瞬間、黒い霧がその体を覆い、侵食を始めた。
「グゲェェェェ!?」
ヤギンが苦悶の声を上げ、もがき苦しむ。
黒い霧は徐々にヤギンの体を飲み込んでいき、肌は闇に侵されていく。
闇が広がる様子を見ていると、まるで生きているかのように這い回り、ヤギンの生命を吸い取っているようだった。
「どうした、まだ始まったばかりじゃないか」
俺は冷たい声で言い放つ。
挑発的な言葉にヤギンが再び咆哮を上げるが、すでにその体力は削られ、動きが鈍くなっているのが分かる。
俺は奴の体が完全に闇に飲まれる前に、角を叩き斬るべく、一瞬の隙を見逃さずに剣を振り下ろした。
そしてヤギンの巨体が崩れ落ちるのだった。
―――
これからも更新頻度あげていきますので、何卒、★とフォローをお願いしますm(__)m
あなたの★、そしてフォローがめちゃめちゃ励みになります!
※目次ページの「フォローする」ボタンを押せばフォローすることごできます。
※また★は、ページ下部にある星マークから行えます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます