第33話 巨大な影
霧の中に巨大な影がゆらりと浮かび上がり、俺たちは思わず立ち止まる。
その姿は、暗い森の中で一層の威圧感を放っているトロールだ。
奴はヤギンと同じA級の魔物で、その体躯は建物のように巨大。
まるで山が歩いているかのような魔物だ。
無骨で強靭な両腕が、霧の中でも見えるほどに太く、筋肉が盛り上がっている。
その強力な腕を振り下ろせば、地面さえも揺れ、俺たちの体を粉々に砕いてしまいかねないほどの破壊力がある。
「ちょっ!? 皆、戦闘態勢に……」
ユキが叫んだその瞬間、トロールが雄叫びと共に両腕を振り上げ、地面を叩きつけた。
その一撃が地面に衝撃を与え、あたり一面が激しく揺れる。
俺たちはその揺れに耐えながらも、バランスを崩してしまいそうになる。
(まずい、この音で他の魔物たちに気づかれたら……)
俺は一瞬の判断で状況を把握し、何とかここから離れなければならないと考える。
今の衝撃で、ユキとゴウが俺たちから少し離れてしまった。
近くにいるのはルンだけだ。
この状態で転移魔法を使うと、離れている者は誤差が生じてしまい、無事に転移できる保証はない。
しかし、もう時間がなさそうだった。
「ユキ! こちらに来い!」
俺の声は霧に飲まれてかき消されるが、何とか聞こえてほしいと祈るような気持ちで叫ぶ。
だが、ユキとゴウがこちらに駆け寄るより早く、トロールの拳が迫っているのが見えた。
あの拳がユキらに当たれば、一瞬で命を奪われかねない。
「グゴガァァァァァァ!!!!」
霧が震えるような雄叫びが響く。
俺は、もう時間がないと悟り、ユキとゴウを無事に逃がすために転移魔法を唱えることを決意した。
「第三級魔法/テレポーテーション・マジックッッッ!!!」
魔力を込め、ユキとゴウを霧の向こうへと転移させる。
霧の影響もあり、精度が完璧ではないが、ユキらの姿は霧の中へと消え去った。
少し離れた場所に転移してしまったようだが、無事であることを願う。
「ア、アレン~! ユキ達は~!」
心配そうに俺を見上げるルンの声に、俺もまた急かされるような気持ちになる。
「今転移魔法で少し離れた場所に転移をさせた! 俺たちも転移するぞ!」
再び魔力を込め、呪文を唱える。
そうして俺たちはその瞬間、霧の中から別の場所へと転移し、トロールから逃れるのだった。
―――
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