第30話 ど、独占したい リザラ視点

私の名前はリザラ。


 ルグシア学園の生徒会に所属している書記だ。


 私の異名は『水の剣士』であり、貴族の中でも有名な存在。


 剣を振るう姿はまるで水の流れのようにしなやかで、いつも自分の鍛錬を怠らなかった。


 正直言って、私と戦える人間なんてあまりいないと思っていた。


 そう、数時間前までは。


「アレンって、本当に何者なの?」

 

 突然現れたアレンに、疑問が浮かぶ。


 アレンがエイダにスカウトされてから、全ての事が始まったのだ。


 最初はただの男だと思っていたのだが、その実態は全く違った。


「恐ろしく強い……なんて魔法なの」

 

 私とアレンは訓練場で勝負をしたが、全く歯が立たなかった。


 それどころか、アレンの余裕の表情に、半分遊ばれているのではないかとさえ感じた。


「アレンは凄いわ」

 

 人生で初めて、自分では勝てないと悟った相手があのアレンだ。


 評判を聞く限り、アレンは傲慢で誰に対しても悪質な行動をする悪名高き貴族だと聞いていた。


 しかし、実際に彼と対峙してみると全く違い、その強さは圧倒的で、心の中に湧き上がる感情があった。


 最初は、アレンが生徒会に入ってから全てが終わったと思ったけれど。


「聞いてた話と全然違うじゃない。しかも魔法が凄いだけじゃなくて、頭の回転も良い」

 

 今回、エイダから魔法書が無くなる事件を解決するために、アレンと共に行動することになったが、アレンはすぐに原因を予測し、深く考察を進めていた。


 私の思考を超えた視点で、原因を突き止めていく様はただ強いだけではなく、物事を冷静に考える力を持っている。


「それに、あんなに褒めてくれるなんて」

 

 私がアレンとの戦いに敗れた後、アレンは私の行動や考え方を褒めてくれた。


 正直、アレンの前で私はほとんど無力化されていた。


 だから、評判通りに厳しくダメ出しされると思っていたのに。


「惚れちゃうじゃない……」

 

 私は今まで人に褒められたことがほとんどなかった。


 それは、私の環境が厳しく、周りからの期待も高かったから、出来て当たり前の風潮だったのだ。


 だからこそ、アレンに褒められた時、本当に嬉しかった。


 アレンは私より遥かに強いのに、あんなにも優しく接してくれた。


「心の高鳴りが止まらない……」

 

 アレンと会話を交わしてから、私の心臓は止まることを知らない。


 もしかして、私はアレンのことが好きなのだろうか。


 まだ会って間もないのに、アレンの強さと優しさに触れて、私のハートはがっちりと掴まれてしまった。


「アレンは、私のもの」

 

 誰かに渡したくないという気持ちが溢れ出す。


 今まで私は恋をしたことがなかった。


 数々の剣士や魔術師と出会ってきたが、こんな感情は初めてだった。


「まずは、アレンに言われた仕事をしないと」

 

 私はアレンに王都周辺の地図を確認し、アジトになりそうな場所はないか調べてほしいと頼んだ。


「アレンに振り向いてもらいたい……頑張らないと」


―――



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