第28話 水の剣士
ここは学園の訓練場。
前回カイルと対戦した場所であり、かなり設備の整った場所だ。
ここならお構い無しに魔法を使うことができるし、前回と違って観客もいない。
静寂の中に響くのは、リザラの決意に満ちた足音だけだった。
「そういえば、私の異名は水の剣士って言われてるの。意味が分かる?」
その言葉は自信に満ちており、まるで水面に浮かぶ光のように輝いていた。
「要は水属性の剣技が得意ということだな?」
俺はリザラの意気込みに軽く肩をすくめながら返す。
「ええ、私は水属性の剣技を極めた剣士だからね」
リザラはその言葉を胸に秘め、剣をしっかりと握りしめる。
「ふん、弱点になっても知らんぞ」
「別に、これぐらいハンデよ」
その言葉に、リザラの目には決意が宿る。
「そうか、なら始めるとしよう」
俺は、体内に秘めた魔力を解き放つ。
すると周囲の空気が一瞬震える。
リザラも同様に、腰に付いている鞘から剣を抜き、魔力を剣に込める。
リザラの剣から溢れる魔力は、周囲の空気を切り裂くように流れ始める。
「まずは私からいくわよ、第5
リザラの声が響き渡り、剣が水を纏う。
その瞬間、剣はまるで生き物のようにうねり、水の刃が形成され、青い光が周囲を照らし出す。
そしてリザラは地面を蹴り、俺に向かって急接近してくる。
まるで波のような速さで迫るリザラの姿。
剣技が放たれる瞬間、周囲の空気が緊張で張り詰める。
俺は瞬時に防御魔法を発動する。
《第5級魔法 バリア》
俺の周囲には、透明なバリアが展開される。
リザラが繰り出す水の刃が、バリアに触れた瞬間、衝撃が広がる。
水しぶきが舞い上がり、周囲に冷気が漂う。
「さ、流石ね、こんなに早く魔法を発動出来るなんて。私も早めに攻めたのに」
リザラは驚きと興奮の混じった表情で、次の動きを考えている。
「さあ、次の剣技はなんだ、リザラ?」
俺の問いかけに、リザラの瞳が燃えるように輝く。
「ならこのバリア、壊すわよ! 第4
リザラの剣が、再び魔力を纏い、鮫のような鋭さを帯びていく。
その刃先が急速に俺のバリアに突き刺さる。
バリアにひびが入り、粒子が舞い上がる。
まるで壊れたガラスのように、俺の防御が崩れていく。
「よし、これなら!」
「第3級魔法 《フェニックス・フレイム》」
俺は炎の塊を生み出し、リザラに向けて放つ。
燃え盛る炎が彼女を包み込み、周囲の温度が一気に上昇する。
「こ、この魔法って第3級魔法!?」
リザラは驚愕し、炎から逃れるようにバックステップする。
「まだまだいくぞ 第3
俺は両手から竜巻のような風を発生させる。
この魔法は、カイルが防ぎきれなかった風魔法だ。
猛々しい竜の姿を形作る竜巻が、リザラへと向かって突進していく。
「な、何て魔法なの」
リザラは目を見開き、驚きと恐怖が交錯する。
「どうした、もう降参か?」
「いえ、まだよ、第4
リザラの声が力強く響く。
彼女の剣は冷気を纏い、氷の刃となって竜巻に向かって突進していく。
まるで冬の嵐がその場に現れたかのようだ。
(ここまではカイルと一緒だ、どう動くかな?)
俺はそんなことを考えながら、竜巻を指で操り、走り回るリザラに向けて竜巻を動かす。
「ここよ!」
リザラの声が高らかに響く。
その瞬間、リザラは俺の竜巻の動きに鋭い感覚を働かせ、巧みに避けていく。
(普通、戦闘中に行動パターンを読み取るのは至難の業だ。それを、リザラはやってのけた。流石は生徒会に所属しているだけのことはある。)
リザラの動きはまさに舞うようで、冷静に敵の攻撃を見極めながら、次の一手を考えている。
俺は少々驚きつつも、さらに攻撃を続ける。
「これはどうだ、第3
俺は風を刃のように切り裂き、リザラの周囲に向けて放つ。
風の刃は音を立てて彼女に迫る。
「ちっ!」
リザラは素早く反応し、軽やかに横に跳ぶ。
その動きはまるで踊りのようで、剣を振るう姿は美しい。
「ここよ!」
その瞬間、リザラが俺に急接近し、一気に間合いを詰める。
「なかなかいい動きだ、第3級魔法 《ヴォイド・マニフェスト》」
俺は無の力を具現化し、周囲のエネルギーを消失させる。
この魔法は、リザラが剣に纏わせている魔力を完全に無くすもので、リザラにとっては致命的な一手だ。
周囲の空気が静まり、緊張感が一層高まる。
「う、嘘、何で私の魔力が」
リザラの驚愕の声が響き、表情が凍りつく。
―――
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