第21話 冒険者ランキング3位
受付嬢が俺に手渡したのは、赤く輝く宝石――レッドストーンだった。
「ま、また入手できるなんて……」
レッドストーンは超低確率でしか手に入らない、極めて貴重なアイテムだ。
原作でも、何百回と周回しなければ入手できない代物。
まさか、こんなに早く再び手に入れるとは、正直思ってもいなかった。
「この宝石は俺が預かる、良いなユキ?」
「ええ、もちろんよ」
ユキが真剣な表情で俺に賛同してくれた。
ゴウとルンも黙って頷く。
「よし、それじゃあ俺はこの宝石を持って帰っ……」
その瞬間、ギルドの扉が勢いよく開け放たれ、3人の女性が堂々と入ってきた。
「待ちな、その宝石は私たちに渡してもらおう」
「だ、誰だ?」
目の前に現れたのは、冒険者らしき装いの女性3人。
先頭に立つのは、筋肉質で重装備を纏った女性。
そして、その横には上等な剣を携えた黒髪の女と、仮面をかぶりフードを深くかぶった小柄な少女。
「も、もしかしてこの人たち……」
「冒険者ランキング3位のパーティーじゃない~!?」
ユキとルンが驚愕の表情で叫ぶ。
どうやらこいつら、S級冒険者の中でも特に名の知れた連中らしい。
しかも、俺たちの目的である国家直属のパーティーだ。
そんな奴らにレッドストーンを渡せって言われてるからな、ちょっとばかし面倒臭い事になりそうだ。
「申し訳ないが、この宝石は俺たちが先に手に入れたものだ。渡すわけにはいかない」
「そりゃそうだろうな。でもお前、この宝石の本当の力を知らないんじゃないか?」
「もちろん知ってるさ。この宝石を持っていれば、ある組織に狙われることになるからな」
「な、何でそれを!?」
黒髪の剣士が驚き、俺に詰め寄ろうとする。
しかし、ユキがすかさず俺の前に立ちはだかる。
「この宝石は私たちが最初に手に入れたものです。渡すことはできません」
「困ったな……だが、我が主が回収しろと命じているのだ」
こいつらが善か悪か、まだ俺には判断がつかない。
少なくとも冒険者として活動している以上、悪党ではなさそうだが、誰かの命令で動いているのは確かだ。
「交渉次第だ、今この宝石の所有権は俺たちにある。そうだよな、受付嬢?」
「は、はい! 間違いありません」
俺が受付嬢に確認すると、彼女は少し緊張しながら答えた。
これで少なくとも、強奪は避けられるだろう。
「では、どういった交渉が望みだ?」
「まあ待て、まずはお互いに名前を知った方が良いだろう? 交渉するのに、名前も知らないままじゃ話にならない」
「そうだな、ではまず私たちから紹介をしよう。私はリン、このパーティーのリーダーだ。隣にいる重装備の彼女がモーナ、そして仮面を付けた小柄な少女はミリアだ」
リンがパーティーの紹介をしてくれたのを受けて、ユキが一歩前に出る。
「私はユキ、このパーティーのリーダーです。そして……」
「俺の名前はゴウ、剣士だ!」
「私はルン~! 魔法で後方支援してるよ~」
「俺はアレン、ルンと同じく魔法使いだ」
互いの自己紹介が終わり、いよいよ本題に入る。
「それで、交渉内容とは何だ?」
「まず、お前たちが善か悪かを確かめたい。お前たちの言う『主人』とは誰だ?」
「アレンと言ったか……なかなか核心を突くじゃないか」
すると、リンの隣にいた仮面を付けた小柄な少女、ミリアが口を開いた。
正直、俺が一番警戒しているのはこの少女だ。
見た目も怪しげだが、それ以上に放たれている魔力が厄介だ。
「ふん、お前たちがレッドストーンの危険性を理解しているなら、なおさらだ。素性の分からない奴にこの宝石を渡すつもりはない」
「そうだな……ギルドは狭い。場所を変えて話そう。ここから近くの広場でどうだ?」
「良いだろう」
俺とミリアのやり取りはスムーズに進み、話し合う場所を広場に変更することになった。
見たところ、こいつは魔力だけじゃなく、頭も切れるタイプのようだ。
「じゃあ決まりね! ささっと移動しましょう!」
ユキがそう言い、俺たちは王都の広場へと向かうのだった。
―――
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