第10話 入学式

「学長の話……長すぎだろ」


 俺たちは講堂にて、入学の説明、そして魔法のパーフォーマンスなど様々なものを見せられた。


 魔法の所までは良かったんだが、最後にある学長の話が長すぎてな、凄い退屈だった。


 そんな事を思いながら俺は講堂から出ようとする。


 すると、周りの貴族たちがザワザワと言い始める。

 

(もしかして俺……いや、貴族の目線は俺じゃなく、あそこにいる少年だな)

 

 視線の先には、粗末な服装をした少年が立っている。


 まさしく、その少年こそこの世界の勇者であり、最強のスキル《剣聖》を持っている主人公だ。


 まさかここで出くわすとは思わなかったが、もうこのイベントは始まったのか。


 俺の知っているイベントだと、平民のカイルを悪役貴族である俺がたまたま見つけ、カイルをこの学園から追い払おうと勝負を仕掛けるイベントだったはずだ。


 だがこの場面で、どこかに生徒会長である公爵令嬢、エリーゼが見ているはず。


 原作通りだと、カイルの凄まじい戦闘能力にエリーゼは驚き、目を付け始めるだったか。


「まあ、俺はここで関わらず、このまま邸宅に帰るのが……」


「おい! そこの金髪!」


 俺は人混みを搔い潜って講堂から出ようとすると、突然カイルが大声を上げて俺の方に指を指す。


「お前はあの悪名高い貴族、アレンじゃないか!」


 カイルがそう言った瞬間、周囲の空気がピリッと張り詰める。


 先ほどまで周りにいた貴族達の視線は、いつの間にか変わっており、俺の方を見ている。


「見てあれ、あのグレイス家の令息、アレンよ」

「ああ、あいつは人に対して残虐で、幼少期から人をゴミのように扱っていたらしいぞ」

「てかあの平民勇気あるわね、このままアレンを追い払ってくれないかしら」


 小さな声で俺に対する悪口が耳に入ってくる。


 すると横にいたリュカが鬼の血相で周囲にいる貴族を睨みつける。


「アレン様、いかがいたしましょうか」


「ふん、無視するぞ、こんな奴らに構っていたら俺の貴重な時間が失われてしまう」


「承知いたしました」


 俺はリュカの怒りを抑えて、カイルの方向を向き、口を開く。


「ああ、俺があのアレン・レイト・グレイスだ。我がグレイス家の公爵領は王国東部にあり、異国から国境を守る要としてある。父は第3級魔法まで使え、王国の代表レベルでもある魔術師だ」


 俺は父の功績を言い、周囲の貴族達を黙らせる。


 実際、俺は悪役貴族として評判は最悪ではあるが、父は魔術師として評判が非常に良い。


 ただ、アレンが好き勝手していたので親としては教育に失敗しているという印象が強くなっているが。


「く、だ、だが、お前は魔術師としての才能が無いでは……」


「それは今決める事ではないだろう。 というか、先ほどから俺を挑発しているが、何か用でもあるのか?」


「お、お前がいると学園生活に支障が起きるんだよ! だから」


「おいおい、騒がしいじゃねえか」


 俺とカイルが言い争っていると、横から豪華な服装を着た少年がやって来る。


 俺はそいつを見た瞬間、少し冷や汗をかく。


 どうやら俺だけではなく、カイルも同様、額に汗をかきはじめる。


 横から来た男はこの王国の第二王子、クロドだ。


 王族の中でもかなり残虐であり、面白い事には何でも喰らいついてくる男。


「貴方は、第二王子のクロド殿下ではありませんか」


「ああ、てか面白いなこの光景。右には悪名高いアレン、そんで左には平民の……カイルだっけ?」


「そ、そうだ。僕の名前はカイル・リューコスだ」


「こりゃあご親切にどうもカイル君。そんでさ、話を横で聞いてたらなんだが面白そうな展開だし、決闘とかしてみたらどう?」


「何!?」


 俺は奴の言葉を聞いて驚いてしまう。


 まさか王子からこの話を切り出されるなんて、思いもしなかった。


「それはいい案です、クロド殿下! 是非、僕とアレンを戦わせてください!」


「ああ、いい案だろう? ちょっとばかし横で聞いてたらさ、アレン君、父親の事ばかり自慢してて恥ずかしくないのって思ってさ?」


 今の一言を聞いて俺は確信する。


 間違いなく、こういう奴らは調子に乗らせては駄目なタイプだ。


 もし俺が断ってしまえば奴らの思う壺だろう。


(まあいいか、実力の差を見せつければ、あいつらも俺に突っかかってこなくなる)


「ふん良いだろう、その勝負、このアレン・レイト・グレイスが受けて立つ」


―――



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