第2話 キーホルダーで繋ぐ2人の距離感

スポットライトのように太陽が雲から覗いていた。

あの光に当たったら目立つだろうかと考えながら、空を見ていた。

今日は、先日初対面で話盛り上がった菅原瑠乃と一緒にハシビロコウのキーホルダーを探しに行こうと市内図書館から歩いて10分もかからないところにある駅で待ち合わせた。今の時代は待ち合わせの時間も配慮が必要だ。一昔前のおじいちゃんおばあちゃん世代の待ち合わせ時間は20分前に集合が当たり前だったらしい。性格にもよるが、とりあえず、遅刻しない程度にすると聞いたことがある。僕は誰かと待ち合わせをするときは時間ぴったりに行くマイルールを作っている。これは学校の部活や登校時間とは別でプライベートでの話だ。誰かの家に遊びに行くときも掃除をまだ終えてない可能性があるから早く行ってはいけないらしい。遅刻するのが暗黙のルールとか。せかせかしないようにという時代の流れだろうか。まぁ、どんな時間でも誰でも怒られるのが嫌というのは共通点だろうけど、こんなにもジェネレーションギャップを祖父母と感じると、ありえないと感じてしまう。今日も実家から出て来る時に同居している祖母から声をかけられた。


ー回想ー


ひかる! 女の子を待たせたらいかんよ。お前が待つ方がモテるから」


 祖母の幸田まゆこは、いいねのポーズをして、なぜか僕のジャージを着ている。よくそのサイズが入ったなと思いながら、玄関を出た。母は、パートに出かけていていなかった。デートのこともしらない。いつもどこに行くとか聞いてくるのは祖母の方だった。しわくちゃな顔で笑うのが、僕にとっては安心するんだ。母のことが嫌いなわけじゃないが、両親は共働きでいつも僕の世話をしてくれたのは祖母だった。宿題をするしないで喧嘩したこともある。僕も高校生で、そろそろいや、既に宿題以上の勉強を1人でしている。祖母からの助言なんて必要ないくらい勉強し続けて来た。まぁ、自慢になるからあまり大きくは言わないでおこう。

 図書館通いもいつか綺麗な女性や可愛い女性とめぐり会って、付き合えるといいなとか妄想はしていた。学校の同級生や先輩後輩とは近すぎて恋愛対象にしたくないっていうのはあった。親友はすぐにクラスメイトと付きあい始めたが嫉妬はない。これでいいって思っている。


ー回想終了ー


〈我ながら、作戦成功ってところか……このまま彼女になってほしいなんて言えたら苦労ないけど、僕には無理な気がしていた。キーホルダー探しで終わりでいいか。誘われることなんてないだろうし……〉


「あ、お待たせ。えっと、幸田くんだよね?」

「はい。幸田 煕です。全然待ってないですよ、今来たところです」

「……嘘が上手ですねぇ」

「え?」

「ううん。大丈夫、行こうか」

 

 くすくすと笑いながら、瑠乃は、ごくごく自然に煕の腕に手をまわして、まるで彼氏彼女のような歩き方になっていた。煕は何とも言えない表情をして、何とも思ってないっと強気な態度で接した。パーソナルスペース近すぎてどう動けばいいかわからない。会って、2回目でこれって結構ハード。僕の心臓は耐えられるだろうか。


「幸田くん、どうしたの?」

「いえ、ちょっと腕がかゆくて……蚊に刺されたかな」

「ん? ちょきちょき?」

 

 璃乃は、両手をちょきにしてカニを表した。どうつっこめばいいか混乱する。


「冗談だよ。蚊ね! さされるとかゆいよね」

「…………」


 息をのんで、深呼吸した。屈託のない純粋な笑顔に胸さされた。


「やばい、やられました」

「え? 今刺されたの?」

「ええ、ものすごく強烈なものに」

「ど、どういうこと!?」


 璃乃は本気にして、腕をさすった。また肌に触れている。鼓動が早まってもう息も荒くなるかもしれない。煕は、ドキドキしながらも目的地であるショッピングモールへと電車に乗って、璃乃のぴったり隣で向かった。移動中はなぜか時間が長く感じた。緊張していて何も話せなくなったのかはわからない。瑠乃とのデートはどうなるかは想像できなかった。

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