第5話「ダンス」

6月13日、かかと党員の全員が揃った。

「なるほど、コイツが巷で噂の...」ザワザワ


 倉庫は100人余りの人間で賑わっている。


「お、オークと申します!!実家はッ―」


「挨拶なんて名前と役割だけでいーよ、

俺は『ガンズル』かかとの特攻隊長だ。」


「改めて挨拶、僕は『スワ』戦闘員だよ」


「とりあえずこれからの方針だけど―――――


 グチャっ


 その時、ルーシィの言葉を遮り馬一頭の腐乱死体が落ちてきた。

 上を見上げれば、星の輝きで埋め尽くされた藍色の夜空が見える。

 ―――――天井には真四角の穴が空いていた。

 

「な、なんだァ!?」


 瞬間――周りの木箱は八人の男達と入れ替わる。

しかし、その場の人間は腐乱死体に目を奪われ彼らに気づかない。

一部の人間とオーク以外は。


(あ、アイツらはサーカス団の...ッ!?)

「ルーシィィィィィィィィッッッッ!!!!」


ドグァアアアアアッッッッッ ボガァッッッ

 グンドォォッッッッッッ ブオオオオオオッッ

ドドドドッッッッ ダァン ブォッン ガァッ


 "彼ら"の出現から1.8秒―――

倉庫アジトは爆発と炎に包まれた。


「ゴホッゴホッ!!ルーシィ大丈夫か!」


「オークさん...!私も大丈夫っ!!」


 恐らく爆発あれは前と同じで炎の精霊だ。

前と違うのは事前に察知し魔力で防げた事。

 今生存者おれたちがするべきは同じく事前に察知し魔力でガードしていた者との合流_______!!


「アジトは壊れたけど、第二第三の予備があるの。

恐らく皆も其処そこを目指す。着いてきて!!」


「ああ!!」


 アジトを命からがら脱出した俺達は至って冷静だった、覚悟が出来ていたからだ。

 絶望したり、泣いたりするのは終わってからで良い、死なない限り戦い続けッ――――...

「...お前は!!?」


 炎の廃倉庫から脱出すると、

 一人の男が待ち伏せていた。

 彼は徐々に歩み寄る。


「魔力は生物と生物由来の存在もの以外受け付けない」

「この事から神が作った生物とだけ相容れる魔力は神が司る神聖なる力...と、我々は解釈した」

「話は変わるが、

科学は時に魔法と見分けがつかない...そうだろ?

これは邪道であるにも関わらず神と対等になろうとしていると捉えれるな?」――タッタッタッ

「あぁ...これは神への冒涜だ、

よって科学解放党は浄化しないといけない」ザッ


「『ダイ』...!!!」


「や、オック!!元気してた?」


「ルーシィ...逃げるぞ......」

「オークさん?どうしたの...?」

「あいつは...俺を___」


「調教ォ〜〜♪」ゲラゲラッ


「うッ...!!」

 ゾァ―――――ッッッ

足が震えて動かない、これは間違いなく例えようも無い恐怖だ。


「オックゥ!俺、寂しかったんだよ...

オックは肉が抉れる程度では再生するから便利だった...ムチも加減しないで思いっきり振れた!!!

オックと過ごした時間は楽しかったァ...」


 精霊の炎をバックに話す彼は悪魔のようだった。


「なァおい!逃げるな、殺すぞ」


 「オークさん、オークさん!!」


「よし、まずはうるさい方から先に殺そうか」


「「...ッ!!」」

「ウ、グ、ウア!や...めろ!」

「お願いオークさん...動いて!!」


 ルーシィは涙目になりながらも魔力を放出した。

「『調教師の極意スーパーテイム』!!」


「ルー、シッ!......」


「無駄だよ無駄!!"内通者"の情報でオックに『調教師の極意スーパーテイム』は効かないって知ってっから!」


「それでもッ!!オーク!!!命令!!!!」

「『『『私と逃げて!!!』』』」


 ダッ!!!

 オークはスワと共に駆け出す。


「なにっ、オックに『調教師の極意スーパーテイム』は効かないんじゃ!?

スワアイツに限って誤情報はありえねェ!

裏切りか?いやそれとも...!)」


 ダイは3.6秒のあらゆる思考の果てに、

 一つの結論にたどり着く。


「『覚醒』か!」


『覚醒』

 それは能力の突発的な変化と進化。

この現象は神が微笑んだことによる結果とされる。

("大いなる決意"と"決死の覚悟"を好むと言われる)


(様子から正しくは覚醒途中の段階だろう...)

(とはいえ覚醒した能力保持者は厄介だ、安全を取るなら皆と合流してから殺り合った方が良いだろう)


「ま、俺はそんなチキン野郎じゃねェけどな」ダッ


 ダイの魔力は密度を増す。

 禍々しく、殺意すら隠さない。


「覚醒したからなんだ!?俺から逃げれるとでも思ってんの!?ガキ一人殺せないとでも!!?

...いやお前も手足を切っちまえば浄化対象だ。

俺ァは優しいからなぁ、お前も仲間外れにはしねぇよォ」


 ジャグッ

 その瞬間ダイの肩に弓矢が突き刺さる。


「...あ?」


「俺はガンズル・ザイアリュー.......

――――――かかとの特攻隊長だ!!!!」


「チッ...いてぇなァ、それで?」


「クククッ!!!どうする!?もうお前のお仲間は俺にヤられちまったぜェ!!!」

(俺がコイツらを引き受ける、早く逃げろ...!)


ホラ付いてんじゃねェよぉボケが!!」

「俺達に一発入れたからって調子乗ってんじゃねェこのダボスケ!!!!」


 ブッカーバとライアンが業火から飛び出す。


「(ガンズルさん...ありがとうございます!!)」

 私はオークを連れ逃げ出した。


―――――「案外呆気なかったなァおい」

「俺の詩人鎌サイレンスで生首状態にしているから、まだまだ楽しめるぜ」

「ナイスだブッカーバ、お前の能力は便利だな」

 

 ブッカーバの能力である詩人鎌サイレンス

 『どんなに斬っても死に至らしめる事は出来ない』という性質がある為、胴体と首を離しても意識はあるし痛覚もハッキリしているのだッッッ!!!

 ブッカーバの攻撃性と粘着性を表した能力と言えるだろう。


「コイツらの倉庫アジトラジカセこれあったんだけどさァ〜!」

「お、久し振りに"アレ"踊るかァ!!!」

「団長も踊るゥ!?」


「いや、止めておこう」


「あ!スワは見て覚えておけよ!!俺達の仲間でいる以上五万回は踊るぜェ〜!」

「は、はい」


「名付けて『賛美歌』!!」カチッ

「〜♪」ズンチャズンチャ


 陽気で、しかしどこか狂気性を含む歌が流れる。

棒に刺して固定した生首はまだ意識がハッキリとしており、生首ソレを中心に彼ら七人はキレのあるダンスを踊る。

 民族音楽的要素があるな、それでいてロックだ。ボーカルは力強く、魂を叫んでいるようだ。


「お前も踊って来たらどうだ?」

「...え?でも――――」

「元々振り付けなんてない歌だ、そっから思い付きで付け足してって今の形になっている。

もしかしたらお前が自由に踊る事で、新たな形に発展するかもな」

「...俺踊ってきます!」

「あぁ、楽しんで」


 その夜は踊って、食べて、とても楽しかった。


 [To Be Continued....]

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る