第6話 訓練と研究

「さて、今日はわたくしが当番ですわ〜!!」


快活な声で私とともに訓練場に入る吸血鬼ルテリカ、始祖吸血鬼である彼女は四魔相のひとりだ、魔族のトップに並ぶ存在…そんな彼女と私はこれから戦意のコントロールと同時に技術の訓練をするのだ


「よ、よろしくお願いします」


「む、そんなによそよそしくして欲しくは無いのですわ!わたくし、姫様のこと以前からお友達になりたいと思っておりましたの!」


「そ、そう?それなら普段通り行くわね」


「ええ!その通りですわ!」


リアナと友達になりたいと思っていた…私の知らない設定だった、リアナ周りの関係はあまり深く設定しなかったはずだがこれは現実化の影響だろうか


「さて早速始めていきましょう!まずは昨日のことを意識しつつわたくしの剣技をご覧あれ!」


そう言いルテリカは赤い血のような液体を剣の形に変化させ握る、そしてそのまま踊るかのような優雅な動きで硬い的石をバラバラに切り刻んだ


「えっへん!ですわ!」


「おぉ〜」


決めポーズをとるルテリカ、私は自然と拍手をしていた、斬られた的石は綺麗に小さなキューブ状にされており周りに飛び散ることなく切り刻まれていた


完璧な力の制御…そして技術がそこにあった


「す、すごいわ…これが神業ってやつね…」


「ふふん!わたくし剣技に関しては四魔相最強を自負しておりますの!さぁ姫様!わたくしが手とり足とり教えて差し上げますわ〜!」


そうした感じに私は数日剣技と戦意コントロールの同時進行で時間が過ぎて行った。


最初は剣を握ったらそのまま握りつぶしてしまったり、握れても振ったら訓練所ごと壊してしまったりと散々だったがなんとか形になってきた


「うん!良い感じですわ!さてわたくしはそろそろ自分の領土運営もありますし獣相に交代の連絡を入れておきますわ!姫様!そちらの方も頑張ってくださいまし!」


「ありがとうルテリカ、おかげである程度掴めてきたわ」


「どういたしましてですわ〜!」




その翌日訓練場にはグルアスが私よりも早く到着していた


「おう!来たな姫さん、さて今日から数日間は俺様が姫さんの訓練相手をすることになる!よろしくな!」


「ええ、よろしくねグルアス」


「よし、さてルテリカからは剣技を学んだんだったな、だが俺様は武器を使うことはしない、拳こそが最大の武器!というわけで俺様は体術を教えていくとしよう!」


強く意気込んだ彼は的石めがけて軽く拳を振った、すると的石は綺麗に拳と全くおなじ形で抉られ、その抉られた部分がひび割れることなくくり抜かれていた


「ま、こんなもんだな」


「おお〜」


余裕の表情を見せるグルアス、私は自然と拍手をしていた、拳型に穴の空いた的石は芸術作品と言っても遜色ないほど綺麗なままだった、なんかこういう作品あってもいいレベルだ


「すごいわ…まるで芸術みたい…」


「はははっ!!お褒め頂き光栄だ姫さん!姫さんには強い力をただ放つだけじゃないってことを覚えて貰わなきゃな!」


そんな感じに私の体術訓練が始まった、剣を使う時と違い風圧やらが発生してしまい破壊の矛先をコントロールするのが難しくういうっかり空間がひしゃげたりしてしまったがだんだんと形になってきた


「…よし、まずまずだな、少なくともうっかり世界壊すことは無いだろう」


「ありがとうグルアス、とても勉強になったわ」


「おう!てなわけで次は悪相に引き継ぐことになるが、まぁ上手くやってくれ!」


「えぇ、ありがとね」




その翌日訓練場に向かおうと部屋から出た私の前に


「おはようございますリアナ姫、本日から数日間私が貴方様の訓練を担当致します」


座禅して空中浮遊している悪魔族…アデムリだ


「あら、てっきり訓練場にいるとばかり思っていたのに、わざわざ出迎えてくれたのね、ありがとう」


「いえ、この程度どうということもありませんよ、さて先日はグルアスから体術の訓練を受けていたようですが…どうでしたか?」


「そうね…なんというか何やっても放出される力の規模が大きすぎるから世界壊さない程度に抑えるのが精一杯って感じね…とりあえずは空間が歪まないくらいにはなってるわ」


「なるほど、概ね想定通りですね、私からは魔法の訓練を魔王様より任されております、私は四魔相最高の魔法使いですから最適という訳ですね」


「確かにあなたの魔法には興味があるわ」


「ありがとうございます、ではまずはお手本をお見せしましょう」


訓練場につきさっそくアデムリは6本の手に様々な属性の魔法を光らせ始めた炎、水、風、地、光、闇

全属性の魔法が展開される、そしてそれらが握られていき黒い光を放つ高密度の魔力体へと変わった、凄まじい力を感じる。


的石めがけて放たれたその黒い光は石にちょんと触れたその瞬間に画面が乱れたかのように歪んだ後なんの音もなく的石は消え去ってしまった


「これが消滅魔法、ニヒルオクルージョンです、全属性魔法を極めると使える魔法となります」


「おぉ〜」


普段と変わらぬ表情で解説するアデムリ、私は自然と拍手をしていた、強大な破壊の嵐を感じさせる魔力にもかかわらず消滅させたのは的石のみ、しかもそれは音もなく消えてしまったのだ。


魔法の極地ここにありと言った感じだ、こうなってみたい


そんな感じで私の魔法訓練が始ま…


「さて訓練を始める前に結界魔法を使えるようにしましょう、姫様がこのまま魔法を放つと確実に世界が終わってしまうので結界内で処理できるようにします」


「あ、はい」


「では魔法を授けますので額に失礼しますね」


アデムリは私のおでこに指を当て微弱な結界魔法の魔力を流し込んできた、すると私の中に結界魔法発動イメージが湧いてくる、どのようにすれば使えるのか…それが自然とわかるのだ


「へぇ、すごいわ…なんだか実技で得た経験と知識を強制的に頭に刻み込まれたような…」


「悪魔族は他者に知恵や力を授けることに慣れていますからね、魔法をさずけるなど造作もありません」


確かこれも私がつけた設定だ、人間に召喚された時魂と引替えに力や知識を授けたりする悪魔族だからこその発言だろう。


そんな感じで私の魔法訓練が始まった、私が展開した結界魔法は強烈でこの中でなら問題なく魔法を使えそうだ、もちろん制御訓練な上全力魔法なんて打ったら結界諸共世界滅ぶのでかなり苦労した、しかしそれに見合った魔法制御はできるようになったと思う。


「ふむ、まだ改善の余地はありますがこれなら十分実践的な魔法も使えるかもしれませんね、では私はこの辺で領地に戻らせていただきます、次は堕相ですか」


「ええ、そうなるわね、ありがとうとてもいい時間を過ごせたわ」


「はい、魔力制御が上手く行けば他者に力を授けたり新たな魔法を生み出すこともできるようになるでしょう、期待していますよ」


「それは楽しそうね、頑張ってみるわ」



そうして翌日


コンコン、と私の部屋の扉を叩く音が鳴った


「入ってちょうだい」


「失礼致します」


「フフフ…さて3週間ぶりでしょうか、お元気ですかお姫様?」

「ご機嫌麗しゅう?お姫様?およそ3ぶりですね」


ネイアに連れられ6対の黒い翼を携えた堕天使夫婦が入ってくる、四魔相、堕相の2人組


「フフフ…さて本日からお姫様の訓練、主に座学の面を務めさせていただくことになるルールシエールと」

「シーエルルーエよ、よろしくね」


「ええ、よろしくね今までは実技だったけど座学になるのね」


「フフフ…その通りですよ、武器の扱い、体術、魔法、そして座学、それが魔王様のお姫様教育のご方針との事ですから」

「分からないことがあったら遠慮なく聞いてちょうだいね」


「ありがとう、頼りにしているわ」


そうして私のこの世界…主に魔族の一般常識や知識、スキルや魔法の習得方法等の教育が始まった。

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