1章 訓練と旅立ち
第4話 ネフィアと情報整理
父と母である2人と一通り話しを終え、今後の方針も決まった私は自分の部屋に戻っていた。
「お帰りなさいませ姫様、簡単にではありますがお話は通信水晶で魔王様から伺いました」
「ただいまネフィア、そうだったのね、それなら私がこれから旅に出ようとしていることも把握しているのね」
一足先に戻っていたネイアが出迎えるそして既に連絡を受けていたようだった、話が早い。
「はい、出発はいつ頃にされるのでしょうか」
「ん〜まだはっきりとは決まってないのよね…先に情報収集を済ませたいからその後ってことになるかしら」
「かしこまりました、その…それともし良ければ旅に私を連れて行っては貰えないでしょうか?」
「…へ?」
つい変な声が出てしまった、かなり予想外の返答だった
「私は姫様にこの命を救われました…本来ならあの時天使どもに狩り殺されていたことでしょう…ですがその運命から私を救ってくれたのは姫様です」
「ですのでこの命は姫様のために捧げたいのです…どうかご同行の許可を」
と、そんなことを言い出した、そう言われて思い出す、私が彼女に着けた設定を
【ネフィアは魔族の姫であるサナト・リアナによって天使との戦いを生き延びた、それ以降彼女に絶対服従を誓い彼女を支えるようになった】
(そっか…リアナのために着いてきたいんだ、でも…)
彼女の過去を思い連れていきたい気持ちが湧く、きっと一人で行くよりも二人で行く旅の方が楽しいだろう、しかし私にはあの呪われた力が…うっかりで世界を滅ぼしかねない力があるのだ…共に旅するとなると、彼女を命の危険に晒しかねない…その上私は本物のリアナでは無い…
「ごめんなさい…本当は私も一緒に行きたいわ…でもあなたも見たでしょう?あの呪われた力を…あれに巻き込まれたら…あなた確実に死ぬのよ?」
彼女を殺したくないからこその判断だった、私にとって好きなキャラでもある彼女を自らの手で殺してしまう、それだけは避けたくて…
「姫様!」
私はビクッとする、私が共に行く冒険を拒否するとネフィアは少し震えた声で私を呼んだ、そして抱きついてきたのだ。
「ね、ネフィア!?一体どうしたの…!?」
「…姫様はご自身の力を呪われた力だとおっしゃいました…確かに見たことも聞いたこともないほど強大なお力でした…ですがあれは呪われた力などではありません!」
彼女は力強くそう言った、そして続ける
「その力は姫様が魔族のための世界を切り開くための力!魔王様と魔王妃様が起こした奇跡の力だと思っています…ですから…呪われてるだなんて…言わないでください…!!」
そんなふうに言われてしまった、そして彼女は最後に
「それに力のある無しは関係ないんです…姫様だからこそついて行きたいんです、もしその力が抱えきれないほどだとしたら…私は共に背負って行きたいのです…ですからお願いします、私を連れて行ってください!」
そんなこと言われたら断れないじゃないか、彼女にこの運命を与えたのだってシナリオライターである私の責任もあるはずだし…彼女のためにこの力が役に立てるのなら、共に背負ってくれるのなら…
「わかったわ…でも、後で後悔とかは許さないわ、こちらこそ…よろしくね」
「!はい姫様!このネフィア、全てを姫様のために捧げます!」
力強い宣言だった、少し気恥しいが彼女の覚悟を断るなんてことは私にはできない
落ち着いてから私たちは旅の準備を進めることにした、私は適当なメモ帳を広げ今後の方針と気になること、そして優先事項などをメモしていく。
・力の制御訓練
・魔族サイド、人間サイド両方の主人公が辿ろうとしているルートの確認
・ゲームが現実になったことによって変化した内容の確認
・天使と女神の動向確認
…といった感じにメモをしていく、最優先事項から上に書いているがもうひとつ…それは旅の目的だ、もちろんシンプルに現実となった自作ゲームの世界を旅したいというのもあるがもうひとつは…やはり魔族を内側から変えていかねばならないだろう
いくら魔族に生まれ変わったとはいえ元は人間な私としては魔族達の持つ”人間は下等種”という思想に同意できない、本能が魔族のものに書き換わってるせいで引っ張られてしまいそうになるもののここは明確に死守したい所であった。
この世界において魔族サイドは基本悪役の立ち位置だ、人間からは恐れられ、天使は魔族を世を乱す存在として浄化を試みているが魔族達はずる賢くさらに個の力が強い…数で優る人間と天使の軍をもってしても攻めあぐねているという形だ。
悪の立場を約束されたこの身だがやはりできることなら人間は最優先で守りたい、そして魔族も天使も私が作り出した存在だ…できることならみなが幸せになれるようにこの立場を利用して悪役である魔族を内側から変えていくべきだろう、だが…
(そのためには乗り越えなきゃいけない壁が多いなぁ)
種族間の対立、肉体的な差、思想の違い、固定観念、そして何より魔族の性質…
大層な理想を掲げてみたはいいもののそんな世界を変える力なんてあるか分からないし、その技量もない、転生しても中身は一般人のままなのだ、とはいえステータスだけは高い…挑戦してみてもいいだろう。冒険には出るのだし目的があった方が燃えるというものだ
「姫様、一通り荷物はまとめ終わりました、荷物は全て空間魔法内に収納してありますのでいつでも取り出せます」
「は、早いわね…でもまだ出発するわけじゃないのよ?」
「はい、大きめの物を収納しただけですのでお気になさらずに…普段使う小物などは直前に入れるつもりです」
「なるほどね、ありがとうネフィア、それとお兄様はどこにいるか知ってる?」
「お兄様は確か訓練場にいるはずです、なにか緊急の用事でしょうか?」
リアナの兄、ルグス…彼は魔族サイドの主人公として作ったキャラだ、非常に優秀な才能があり最終ステータスは人間サイドの主人公勇者より高い、勇者サイドからすると様々なルートでラスボスとして登場するキャラでもある。
彼の選択次第でストーリーは大きく変わる、なのでこの早い段階でルートがどこへ向かおうとしているのか把握しておきたいのだ。
「ええ、結構緊急めの用事ね、通信水晶繋いでくれる?」
「かしこまりました」
そうして繋がる通信水晶、そこには見慣れた顔と見た目のキャラ、魔族主人公のルグスの姿が映っていた
「あー繋がってるか?よっ!リアナ!珍しいなお前から俺に連絡よこすなんて」
「あら?そうかしら、とりあえず緊急の用で連絡したの、聞きたいことがあるから答えてくれる?」
「ん?おぉ、いいぜ?なんでも聞いてくれや」
「あなたがどんな目標で旅に出るか知りたいの、教えてくれる?」
ストレートに聞いてみる、これでおそらく目指しているルートは絞れるはずだ
「そうだなぁ、とりあえずは俺が新しい魔王になるつもりだな、いずれはとーちゃんも引退することになるだろうし一魔族として魔王クラスの力は欲しいだろ?そのために旅に出て力をつけてくるんだ、あとは勇者とか言うやつもボコすつもりだな」
なるほど、あっさりと答えが聞けた、彼は魔王ルートを辿るつもりのようだ。
魔王ルート、魔族サイドのノーマルEND枠のひとつ、天使と女神を滅ぼすことで人間の抵抗力をうしなわせ、そして力で持って人間を家畜として支配、最後に父と決闘をし認められて新たな魔王として君臨して終わりのルートだ。
私の目指ざす所と似ているもののこの場合人間は不遇な立場に置かれる、天使と女神はもちろん勇者一行も全員殺されてしまうルートのため私としてはあまり歓迎できるルートでは無い。
「なるほどねありがと、応援しているわ」
「おうよ!俺が魔王になったらお前にも美味い飯食わしてやるからな!」
とりあえず当たり障りのない返答をしておく、そして
どうやらまだ私の力のことは伝わってないような雰囲気だった、なのでもうひとつ聞いてみる
「ねぇもうひとつ聞きたいのだけど…私の力ってどのくらいだと認識してるの?」
「ん?お前の力か?まぁ並の魔族よりは強いって程度だな、支援魔法が得意だったイメージがあるぜ?」
なるほど、やはり私の力のことはまだ伝わってないらしい、ちょうどいいのでしばらくはそのままの認識でいてもらおう。
「なるほど、答えてくれてありがとうね」
「あいよ!また今度な〜」
そう言って通信は切れた、とりあえず知りたい情報は知ることができた、今回はこれでいいだろう…あとは…
「お父様、お母様、早速だけどちょっとお願いしてもいい?」
そのまますぐ父と母に連絡を入れ私の力を訓練に付き合ってくれる四魔相以外に公言しないように伝えた、そしてあっさり快諾を得てそのまま私は通信を終わる。
「さてネフィア、一通りの情報収集が終わったわ」
「お疲れ様でした、この後はどうされますか?」
「そうね…とりあえずは力の制御が最優先だから訓練がしたいわ」
「かしこまりました、それでは四魔相の方々が到着され次第玉座の間へ向かいましょう」
そうして私たちは魔族のトップに立つ4柱の魔族たちと訓練を始めることを決めるのだった。
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