自作ゲームの世界に転生した私は悪役としての使命を全うします!

甘星

第1話 自作ゲームの世界に転生


私、星野愛佳(ほしのまなか)はゲームや絵を描くのが好きな現役女子高生だ。


私は今小さい頃からの親友である遥香ちゃん、愛莉ちゃんと一緒にとある同人イベントに作品を出品するために会場に向かっている。


「緊張するなぁ…」


「初めてのゲーム作品とはいえ、かなり作りこんだから少しでも手に取って欲しいよね〜」


「大丈夫大丈夫!!きっと手に取ってくれる人、たくさんいるよ!!」


そんな会話をしながら会場付近の駅に近づいていく。



この作品を手に取った人が楽しんでくれるといいなという期待感を胸に抱きながら電車に揺られていると…突然、大きな揺れが私達を襲った。


ガガガガガッ!!キキキィィィィ!!!


と不快な金属音とともに私達の視界は逆さまになっていって…

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁあ!!」


……………………


…………………………………………


………………………………………………………………


(………熱い………)


ドクン、ドクンと自分の大事ななにかが身体からこぼれ落ちていく感覚がする。


(誰か………生きている人は………)


現実とは思えないような地獄の光景が私の目の前に広がっていた。


みんな動かなくなっている、私の大事な友達も、他の人々も誰一人とて動いていない、私一人を除いて。


私は友達の上に倒れ伏しながら浅い息をする、なにか鋭いものが体を貫いており、動くことができない


「愛佳…ちゃん…???」


そんな私の下から声が聞こえてくる、遥香ちゃんだ、生きていた…だが私の方の意識が既に朦朧としてきている


「!?………愛佳ちゃん!?……お腹のそれは…」


「あはは……私もう……無理みたい、ごめんね………」


「そんな!?まだ…まだ何とか!!」


自分の体ことは自分がいちばんよく分かっている、もうこの体は長くない…どんどん冷たくなってきているのが…手に取るようにわかるのだ。


でも何故か私を中心になにか新しいものが生まれてきているような気配がする…この感覚は一体…


「ぅぅ…2人とも…大丈夫…???」


もう一人別の声も聞こえた、私の下で動いている…愛莉ちゃんだ。


「ま…愛佳ちゃん…も…もしかして………」


(うん…ごめんね……)


声に出したつもりが既に声が出なかった、最期に2人の声が聞けて良かったな…そんなことを思いながら2人の悲痛な声がどんどん遠くなっていって…


……………………


…………………………………………


………………………………………………………………


(………ここは???)


何も無い真っ暗な場所だった、死後天国だとか地獄だとかに行くとか、そういったことはどうやらないようだ……何も無い虚無だけが広がっている


(そっか……私は………死んだんだ)


(2人とも無事だったかな……お父さんやお母さん…弟に別れを言えなかったな……)


私の最期は呆気ないものだった、残ったものは後悔だけ…でももう蘇ることなんてない、悔しさに浸っているとぼんやりと何も無い空間になにかが現れた、巨大な…本当に巨大な目のような、宇宙のようななにかがこちらを見つめている


(え、何あれ…怖い)


何も分からない、何やら超常的な存在であることは本能的に理解できたような気がした。


そして死ぬ直前、なにかが自分を中心に生まれていくような感覚、それがまた私を包み込んだ…先程よりも遥かに強く、大きく広がっていく…誰かの声が聞こえた…


(あなたは…誰…)


なんだか見た事あるような…それでいてなんだか禍々しい姿をした誰かが気絶して倒れる場面が私の目に映りこんだ…そしてその人の中に私が吸い込まれていくような感覚がして…



私は目が覚めた


(………ここは………一体………)


病院のベットかと思い周囲を見回すが、そこはあまりにも豪華な部屋だった、その部屋に置かれた広いベッドの上で身体を起こす、身体は痛くない…それどころか以前より快調に感じる。


『今のは…私の声?いや、なんで私の声が聞こえてくるのよ……』


聞きなれない別人の声が聞こえる…可愛らしい声だったがなぜかそれは私の内側から聞こえてくる、それこそ魂が喋ってるんじゃないかと思えるような感覚だった


(え、なにこれ………どうなってるの?)


異様な感覚に包まれ私は体を起こした、辺りを見渡すと見覚えのあるような無いような部屋だった、赤や黒を基調としたどこか禍々しい雰囲気と華やかな雰囲気が調和した部屋だ。


それよりもなんだか体の方に違和感を感じる、内側の方からなにか別人の声が聞こえてくるし何やら以前とは違う部位が動くような…


「え、違う部位???」


慌てて飛び起きる、部屋にあった全身鏡の前に行くと


そこには見たことある人物が映った、しかしそれは自分の…愛佳の姿では無い、亀裂のような模様入りの捻れた黒い4本角、長く尖った耳、額にある第3の目、インナーブラックの美しい白髪、黒白目に真っ赤な瞳、コウモリと鳥を合わせたような黒い翼が6枚…外見年齢は12~14辺りのようだった


(え、これってもしかして…リアナ姫???)


リアナ姫、フルネームはサナト・リアナ、私達が作ったゲーム、マルプルワールドに登場する魔族の姫…私の作ったキャラの一人だ。


「え、もしかして私、自作ゲームの世界に転生したの!?」


これからどうなってしまうのだろう、そんな驚きと不安、期待が入り交じったような声を上げるのだった。

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