第2話 始まりの恋心(1)

 小さな島国の内で様々な思想がぶつかり合い、傷つけ合った幕末。

 人々の心は荒み、多くの怨嗟が生まれ、恨み辛みが至る所で溢れていた。


 そうして積もり募った負の念は、二百年ほども続いた平和によって力を失いかけていた物の怪共に力を与えてしまった。


 その結果、人は人だけでなく、物の怪共に淘汰される様になったのである。


 だが、その禍々しい事態が突如転機を迎える事になった。

 新政府の樹立、西洋の流入。明治と言う新時代の到来であった。


 強引に作り変えていく変化によって、人も、物の怪も、内だけの争いを繰り広げている場合ではなくなったのである。


 そしてそれは、人よりも物の怪の方が酸鼻を極めた。渡航してきた西洋のあやかしに自らの住処を追われ、淘汰される様になったのである。


 物の怪共は自らを確固たるものとする為に、西洋のあやかしと激しく争い始めた。無論、西洋からのあやかしも、やられるものかと迎撃に当たった。

 その戦いに巻き込まれ、人の怨嗟が重なっていく。それが、彼等の力の源となり、利用されている事も知らずに。


 そうして滾々と連なる負の連鎖によって、幕末期よりも小さな島国は荒れに荒れていった。


 これではいけない。と、新政府を樹立するに一役を担った岩倉具視いわくらともみは、当時の陰陽師と神父等をかき集め、対魔の部隊として聖陽軍せいようぐんを組織した。


 人々の為、そして日の本の治安を平定する為に、彼等聖陽軍は力を振るう様になったのだ。

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