その4
暖斗は家に帰っていつものように掃除をして食事の用意をして義純を待った。義純はいつもの時間に帰って来た。
しかし義純は恐ろしい顔をして帰って来るなり、物も言わず暖斗を捕まえるとそのまま部屋に引き摺ったのだ。
義純は暖斗を部屋に引きずり込むと、部屋のふすまをパシン! と閉めて、暖斗の胸倉を掴んで引き寄せ、ギッと恐ろしい顔で睨み付けた。
「オイ、男がいるのかてめえは」
低い少しかすれたどすのきいた声だった。この声だけで普通の人間なら一遍で震え上がる。しかし暖斗は健気に睨み返して言った。
「いるわけないだろ。あんたしか知らないのに」
「じゃあ、あいつは何でい!」義純が畳み掛ける。
「誰の事だよ」
「ちゃらちゃらした野郎が追っかけて来たって?」
義純の言葉に暖斗は暫らく考えて思い至った。
「ああ、葉月なら前の学校の友人だ」
「おめえを追いかけて来るぐれえだ。何かあったに違いねえ」
義純はどすのきいた声を少しも弛めず、さらに暖斗に詰め寄った。どうやら誰かが注進したようだ。義純が決めた学校だから義純の息のかかったものがいてもおかしくないと暖斗は気付いた。これは負けていられないと暖斗は思った。義純をまっすぐ見て言い返す。
「あるかい!」
「気にいらねえな」
「何でさ、いつもあんたに言ってるじゃないか。好きだって。愛してるって」
(あんなに何度も言わせて、今更何だって言うんだ)
「本気で言ってんのか?」
義純は少し驚いたように暖斗に聞いた。それこそ暖斗にとって驚きだった。
「何だとー!」
「おめえは割と単純だし、思い込みしやすいから、暗示にかけりゃあいいと思ったんだが」
あまりと言えばあんまりな義純の言葉であった。暖斗は昼休みに学校の屋上で義純に対する気持ちを確認したばかりなのに。
「バカーー!! あんたなんかもう嫌いだー!!」
暖斗は義純を突き飛ばして、そのまま部屋を飛び出した。猛烈に腹が立って腹が立って仕方がなかった。
「おいこら、はる」
義純が慌てて追いかける。固唾を飲んで様子を窺っていた子分さんたちも鉄砲玉のような暖斗に慌てた。
暖斗は部屋を飛び出してそのまま玄関に向かったが「姐さん、ダメです」と、子分さんたちが外に出してくれない。後からすぐに義純が追いかけて来た。暖斗は捕まりたくなくて廊下からそのまま庭に飛び降りた。
子分さんたちが慌てて捕まえようとするが、義純が「てめえら手出しするな」と言ったので手出しせずに様子を見ている。
広い庭で暖斗と義純の追いかけっこが始まった。暖斗は庭の植え込みの中を逃げ回った。小柄な体の所為でちょろちょろと木々の間を逃げ回り、中々義純には捕まえられない。最後にいい枝ぶりの庭木に行き当たりそれに登った。義純がその下まで追いかけて来て猫なで声で呼びかける。
「おい、はる。風邪引くぞ。帰って来い」
「やだ!」
暖斗は木に登って掴まったまま義純を睨んだ。
「しようの無い奴だな。何が気にいらねえ」
義純が木の下で少し譲歩する。
「あんたなんか嫌いだ!」
「……、俺は気に入ってるぞ」
「身体だけだろ」
「顔も」
「あんたなんか嫌いだー!!」
「分かった分かった。全部気に入っている」
「その分かった分かったって、何だよ」
「……いいから降りて来い!」
「──」
「ばかやろう! おめえに惚れてねえで嫁にするか!」
「ホント?」
義純は頷いておめえにゃあ負けると呟いた。子分さんたちが当てられたように散ってゆく。義純が手を広げてほらと言う。暖斗はその腕の中に飛び降りた。
* * *
暖斗は義純の腕の中で勝利宣言をしたが甘かった。屋敷に連れ帰られた後、義純の愛情溢れるお仕置きが待っていたのだ。
「このクソがきが!! てめえにはもっと躾が必要だ!!」
「わーーん!! どこが愛情溢れるだよー!!」
義純は暖斗を抱えたまま浴室に連れ込んだ。裸に剥かれていつもは脩二がしていることを義純にされた。
さすがに恥ずかしくて暖斗は「いやだよう」と駄々を捏ねたが「黙れ! よっく調べてやる」と義純は止めようとしない。
「俺が信じられないのかよ」と聞くと「あほう! おめえみたいな弱っちいのを捻るのは造作もねえんだぞ!」と尻を引っ叩かれた。慌ててトイレに駆け込むと次はお風呂が待っている。
一緒にお風呂に入って隅々まで丁寧に身体を洗われ、隅の隅まで点検された。特に蕾は入念に外も中も調べられ指を出し入れされている内に暖斗の身体に火が点いた。
「ああん……、義さん……」
足をもじもじさせて暖斗がせがむと「この淫乱が!」義純はわざと暖斗の胸やら太股やら首筋やら感じるところを手で弄んで焦らした。
「ぴいっ!」
「そらっ! 何て言うんだ! ちゃんと言ってみろ!」
「愛してる。義さん大好き」
「それから?」
「義さんのコレも好き。義さんとするのも好き」
「それから?」
「入れて、お願い。義さんの大きいのが欲しいよう……」
「よしよし」
義純は洗い場に座って暖斗の足を開かせ膝の上に乗せた。義純の大きなモノが入ってくる。暖斗の身体を一杯一杯押し広げて。奥の奥まで一杯になる。
「はう……」
暖斗の唇から満足のため息が零れる。義純の身体に掴まって自分からその唇に口づけた。
暖斗は義純の大砲の味を骨の髄まで教え込まれた──。
翌日、くったりと動けない暖斗が昼頃になってやっと重い腰を引き摺って起き出すと、脩二が義純からの手紙を渡した。
『はるへ』
(ハイハイ。今度は何だよ)
『お前の事を信じない訳ではないが、何か間違いがあってからでは遅い』
(間違いって、あんたとの事じゃあないのかよ)
『危険な男には近付かないこと、側に寄らないこと、話しかけないこと、話しかけられても返事をしないこと。身を慎み、義さん愛してると唱えつつ日々過ごすよう』
(だーーー!! あの野郎!!)
暖斗は手紙を破り捨てようとしたが側に脩二が怖い顔をして控えている。仕方無しにもう一回手紙を覗き込んだが、何故か顔がにへらと緩んだ。
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