第二百話 生命力吸収
キケルの店を出て、隣の革製品を扱っている店のオバサンに「キケルは元気に鍛冶師の仕事をしていたよ」と言って手を降って仕立て屋に向かって歩いた。
大きな噴水のそばを通り過ぎて仕立て屋の前に立ち、服の注文書兼支払い証明書を入り口の警備員に見せた。
警備員はうやうやしく一礼してオレを店内に案内した。
店内では注文を受け付けた店員が対応してくれたが、最初に聞いた通りまだ数日はかかると言われたので、隣の中古服売り場に行って生地の良い中古服を一着買って北西門に向かった。
途中で出来合いのブーツや靴を売っている店があったので、くるぶしの上まで頑丈な革で保護できる防水加工された編み上げブーツを買った。
北西門から王都を出て明日の護衛依頼で通る道を確かめながら歩いた。
森が大きく切り開かれていて、馬車が二、三台は余裕で走れる道幅で路面も硬い。
こんなところに魔物や魔獣が出てくるのかな? と思いながらノンビリと歩いたが、生き物の気配はない。
ここなら大丈夫かなと思ってシャドウパンサーのモーに声をかけた。
『モー、出ておいで』
口に子どもたちを入れた両手鍋を
『近くには他の生き物の気配は無いから、出ておいで』
モーは影から全身を出して、あたりを見渡している。
『影に潜っているのも退屈だろう。イニーたちと少し走ろうよ』
モーは子どもたちを入れた両手鍋を
『あー、そうだな。ちょっと待ってくれよ』
空間収納から大きめのバスタオルを出して、両手鍋から子どもたちを出してクリーンをかけてからゆるく包んだ。
両手鍋と底に敷いていた古着のシャツにもクリーンをかけた。
『子どもたちを運ぶバッグを作るけど、それまではこれで子どもたちを運んでくれ』
子どもたちを包んだバスタオルをモーの首から下げて
『どうだい? キツクないか?』
モーは首を回して『ニャァァ〜ン(大丈夫〜)』と鳴いた。
『じゃあ、この先に池があるからそこまで走るよ』
イニーたちとモーを連れてサロガ村の跡地にある記念碑まで走った。
そこは整備された大きな公園のようで、中央には『ミリバ王国発祥の地』と書かれた記念碑が建てられていて、大きな石像がまわりを囲んでいる。
王都の大きな噴水にあるのとは石像のポーズは違う。
初代のミリバ国王や重臣たちは、それぞれが剣や斧に槍を構え池を向いている。
その前には初代サウスエンド筆頭辺境伯のゴーンゾが膝をついて杖を構えて獲物を狙っている。
よく見ると、杖には手元に握りやすそうな横棒がついている。
右手で横棒を握り、左手で杖を支えている姿は、まるでライフルを構えているようだ。
たしか鍛錬の書にも、ゴーンゾは握りやすそうな横棒がついている杖を愛用していたと書かれていたな。
オレにはライフルのように見えるが、この世界の者には変わった杖としか見えないんだろうな。
閑散とした公園のそばに小さな池がある。
元々はこの公園全体が池だったようだが、少しずつ湧き水が減ってきていると池のそばにある案内板には書いている。
ミリバ王国発祥の地となった集落跡には数軒の粗末な掘っ立て小屋が残されている。
その粗末な掘っ立て小屋に肩を寄せ合って生活していたということだ。
ギルマスからもらった護衛依頼の資料によると、護衛対象の王族は馬車で来て、記念碑に花輪をたむけ、池に向かってミリバ王国の平穏と繁栄を祈るということだ。
池のまわりには遊歩道も整備されていて、水を飲みに来た魔物や魔獣を待ち構えて狩っていた狩猟小屋も残されている。
まぁ、これといって見るものも無いし、整備された観光地だからトラブルは無さそうだが、念の為に冒険者たちや近衛騎士たちに護衛させるんだろうな。
池の近くの森を気配察知で探ったが、生き物の気配は無い。
下見はもういいかなと思って、生命力を吸収する魔法の練習相手を探しに行くことにした。
なにがいいかな?
生命力を吸収すると獲物がどうなるか試すには、大型の魔物か魔獣がいいな。
革製品を扱っている店のオバサンは森の奥にオーガがいると言ってたな。
練習相手としては手ごろかな。
『エアー、アクア。森の奥に飛んで大きな獲物を見つけたいんだ』
[よいのじゃ、どのような獲物を見つければよいのじゃな]
『オーガっていうヤツなんだけど、人型の大きなヤツなんだ』
[飛んで……探しに……行く]
『そうだな、この近くにはもう用は無いから飛ぶか』
[
[アクアも……探す]
『頼むよ』
イニーたちをオレの影に潜らせてアクアの背中に乗った。
ふいっと空に浮かんで森の奥に飛ぶと、フォレストイーグルが上空から襲いかかってきた。
そうだ、短剣から斬撃を飛ばす練習もしておくか。
『エアー、アクア。アレはオレが
そう言って。短剣を抜いてフォレストイーグルの翼をめがけて風の刃を飛ばした。
勢いよく飛んだ風の刃はフォレストイーグルの左翼を斬り飛ばした。
片翼を失ったフォレストイーグルはバランスを崩して落下した。
風の精霊魔法で受け止めてオレのそばに運んだ。
斬り飛ばした翼から血をダラダラ流しながら、フォレストイーグルはもがいている。
短剣を左手に持ち、右手をフォレストイーグルに向けて『お前の生命力をオレによこせ!』と強く念じた。
フォレストイーグルはもがいていたが、やがて白いモヤが身体から出てきた。
コレが生命力か?
黒いモヤも出てきた。
んっ? コレはなんだ?
鑑定してみると、フォレストイーグルの恐怖心だとわかった。
死を感じて恐怖しているのか。
[マーク、このモノの生命力をもらってもよいかの]
『ん? いいけど、どうするの?』
[なにやら、美味そうなのじゃ]
『アクアも欲しいのか?』
[んー……美味しそう……]
『オレはいらないから、好きにしていいよ』
エアーとアクアはフォレストイーグルの生命力を吸収した。
『どうなの? 美味いの?』
[そうじゃの、精霊樹の葉や水に比べると美味くは無いが、少し力が増えた気がするの]
[そんな……気がする……]
『ふ〜ん、エアーたちの力が増えるなら、生命力を吸収するのはアリだな』
オレは黒いモヤを
その中に
なるほど、
方向性は真逆かもしれないがね。
生命力を吸収したフォレストイーグルは絶命した。
なんとなく身体がしぼんだように見えるな。
食べようかギルドに売るか迷ったが、そのまま森の中に落とした。
森に棲む魔物か魔獣が美味しくいただいてくれるだろう。
そのまま森の上を飛んでいくと、エアーが大型の魔物を三頭見つけた。
身長は三メトル程度で頭に角が生えている。
たくましい筋肉質の身体に錆びた剣や斧を持っている。
森の中で獲物を探しているようだな。
上空からそっと近づいて、
地上に下りて、フォレストイーグルと同様に『お前たちの生命力をオレによこせ!』と強く念じた。
三頭のオーガから白いモヤと黒いモヤが出た。
エアー・アクア・シャイン・バリンがオーガの生命力を吸収している間に、黒いモヤを球形の
青白い焰に包まれた黒いモヤは消えた。
ふむふむ、コレはいい練習相手になりそうだな。
絶命したオーガはそのまま放置して、他のオーガを探しにいった。
三〜五頭単位で行動しているオーガを見つけては、
コレは使えるね。
オーガから吸収した生命力はフレア・ノルム・ホープ・レスト・クロにも吸収させた。
黒いモヤは
絶命したオーガはすべて放置したから、森の魔物や魔獣たちは大喜びして喰い尽くしてくれるだろう。
夢中になって
どこかで肉を焼いて食べよう。
アクアの背中に乗ってテールドラゴンやワイバーンが棲んでいる山に飛んで、以前休憩した山の中腹にある草原に行くことにした。
精霊たちは、フレアとノルムはキケルのところに、ホープとレストは森に、シャインとバリンは狩りに行ってしまった。
オレのそばに残ったエアーとアクアを見ながら、精霊たちはまったく自由が好きなヤツらだぜと思ったよ。
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