第百六話 王都へ:①

 イニーたちが戻ってこないので、落ち着かずにトゲトゲ草の草むらでウロウロしていると、エアーが言った。


 [なんじゃ、落ちつかんのぉ。わらわが見てくるのじゃ]


『んっ、んんーん。バリンとホープにクロがついて行ってるから心配は無いと思うんだけどね』


 [そうじゃの、闇の精霊が一緒ならば暗い森の中でも平気なのじゃがのぉ]


 う〜ん、どうしようかな? やっぱり探しに言ってもらおうか? と思っているうちに、森の中からこちらに向かってくる生き物の気配……イニーたちだ! 


 まったく心配させやがって! 


 シャインに少し明るくトゲトゲ草の草むらを照らしてもらって待っていると、イニーたちがハァハァ息を荒くしながら駆け込んできたが、お前ら血だらけだし……臭〜い! 


 ちょっと来い! と草むらの外に出して、三匹の頭から身体に水をかけてから、ゴシゴシとこすって血とドロを落としてケガをしていないか確かめてから、風魔法で毛を乾かしてシッカリとクリーンをかけた。


 フンフンと匂いを嗅ぐと、お口がくちゃ〜い。


 三匹に口を大きく開けさせてクリーンをかけたら、なんとか匂いは取れた。


 草むらの中に戻ってから『どこまで行ってたの?』とくと『『『ギャァン〜! ギャギャギャン〜!(奥まで〜! 臭いのたくさんいた〜!)』』』と三匹揃って嬉しそうに鳴いた。


 一緒に行っていたバリンとホープに訊くと〈なんや臭い連中がかたまっとってなぁ。コイツらが次々に飛び込んで行って、そらりぁえらい大騒ぎでな。ワシラも楽しませてはもろうたんやが、ケモノっちゅうのは、狩りに夢中になるとあないなるもんかいなぁ〉とあきれた様子で言った。


 «でも、思いっきりバリバリできて、楽しかったぁ〜。臭いからいらないって言ってたから、み〜んな黒焦げにしちゃったよ! へへへへへ»


【たしかに、臭い生き物だった。アレは収納したくない……】とクロも言ったが【でも、闇の精霊魔法で身体を縛りつけたり、首を絞めたり……楽しかったぁ。またりたい……ジュルリ】


 クロも楽しんだのはいいけれど、開けてはいけない扉を開けたんじゃないかコイツ。


 獲物をる楽しさに目覚めた『厨二病』って、始末に負えない気がする。


 イニーたちにもアクアの池の水を玉にして飲ませて、フォレストイーグルの串焼き肉も食べるか尋ねたら『ギャャン(ちょっと食べる)』と鳴くので、ひとかたまりずつ口に入れてやると美味そうに食べている。


 オレだけじゃなくて、コイツらも普通の食事が食べたくなってきたのかな。


 空間収納の中にはオークの肉もあるし、りたてのフォレストイーグルもギガホーンディアも解体したっていいから、これからしばらくは食べ物には困らないし、街に出て冒険者登録をして獲物を売った金で何か別の美味しいものを食べることもできるだろう。


 おっと、そういえば冒険者たちから剥ぎ取った金貨や銀貨を確認しておくか。


 空間収納から革袋を取り出して数えてみると、金貨が二十一枚、銀貨が七十九枚、銅貨が七十七枚で、合わせて二十九万六千七百ゴルドあるな。


 王都での物価がどうなのかわからないが、単純に一ゴルドを一円と考えると、しばらくはノンビリと暮らせそうだが、仇をさがすためには冒険者ギルドに登録して、連中がどこにいるのかをさぐらないとダメだし、そのついでに空間収納にしまってある獲物を売れば、経済的にも楽になるかな。


 マークの知識から、魔素の濃い草原で薬草を採取して売ればいいとわかった。空間収納に採取した薬草はあるが、王都に行く途中でもう少し採取してもいいね。


 もうすっかり暗くなってしまった。柔らかいシールドの上に毛布と寝袋を敷いて寝よう。


 イニーたちもオレのそばで寝るようだし、クロが【見張りならまかせて!】と張り切っている。


 アクアやエアーも異常があれば教えると言ってくれた。


 フレアに焚き火を消してもらい、念の為にオレたちの周りにウォーターウォールを張りめぐらしてから寝袋の上に身体を横たえた。


 さて、明日はいよいよ王都に戻る。


 何がオレを待ち構えているのかわからないのが怖いけれど、オレは一人じゃない。


 イニーたちに精霊たちも一緒にいてくれるから心強いな。


 イニーたちの暖かい体温を感じながら、オレは眠った。

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