第百四話 思い出巡り:③

 ここにたどり着けて、なんとか生き延びることができたんだよなぁと感慨深くトゲトゲ草を見ていると木と植物の精霊:ホープが言った。


〈なんやこれ、さっきマークが種のまわりに植えたやつちゃうん?〉


『そうだよ、このトゲトゲ草の草むらでしばらく暮らしていたんだ』


〈ほー、さよか。んで、ここで寝るんか?〉


 あれ? もうそんな時間かな? と思って空を見上げるとたしかに暗くなりかかってはいるな。


『んっ? ああ、そうだね』


〈ええねんけど、マークはどこで寝るん?〉


 どこでか……、またトゲトゲ草をかりながら真ん中に行って寝るか。


 トゲトゲ草を刈るそばから空間収納に吸い込んで草むらの真ん中まで行くと、なんとなくオレが寝場所にしていた痕跡があった。


 その周囲三メトル程度をざっと刈り取って今夜の寝場所にすることにした。


〈なぁマーク、この草は少し魔素が足りんのとちゃうかな?〉


『魔素が足りない?』


〈せや、水は足りてるようやけど、魔素がちーと足りんな〉


『じゃあ、地下の魔脈に穴を空けてここに出すか』


〈おう、そやな。やってみたらええで〉


 土の精霊:ノルムと一緒に魔脈を探して、ランス二本分・直径五セン程度の穴を地面から掘っていった。


 掘った穴が崩れないようにカチカチに固めながら掘り進めると、魔脈に到達して魔素が噴き出してきた。


 穴の周りに土を盛り上げて煙突状にして、トゲトゲ草の草むら全体に魔素が広がるようにしたら、心なしかトゲトゲ草が元気になったようだ。


 精霊たちも魔素が周辺に広がっていくのは気持ちがいいみたいで、のんびりくつろぎはじめた。


 地面に柔らかいシールドを厚めに敷いて座り込むと、イニー・ミニー・マイニーもシールドの上でゴロゴロと寝転んでいる。


 だんだん暗くなってきたけれど、光の精霊:シャインがほのかな明かりで照らしてくれた。


 闇の精霊:クロはオレの影から顔を出して【もっと暗くなったら、クロが警戒するからみんな安心していいよ!】と張り切った声で言った。


『うん、頼むなクロ』と答えると、ニュルンと影から出てきて【まかせろ!】と胸を張った。


 火の精霊:フレアが何かやりたそうでウロウロとただよっているので、焚き火の着火と管理をまかせるかと思い、枯れたトゲトゲ草を集めて短剣で細かく切ってから土を盛り上げたカマドに入れて、フレアを呼んだ。


『フレア、コレに火をつけてくれ。あとはあまり大きな火にならないように見ていてくれよ』と言うと、嬉しそうに火をつけて焚き火の上でフワフワ浮いている。


 何も役に立たないと思わせるといじけてしまいそうだから、なんとか仕事を見つけてやるのが大変だよ。


 くつろいでいたイニー・ミニー・マイニーがガバっと起き上がって森の中を見ている。


 ん? と思って気配察知をすると、生き物の気配がする……、あれはゴブリンかな? 


『ギャァ〜ン(狩りたい〜)』と鳴くから、三匹と雷の精霊:バリンに『行って来〜い』と言うと、ホープもついて行くと言うのでミニーの背中に分身を乗せてやった。クロも【暗い森の中ならまかせて!】と言うので『いいけど、臭い魔獣だったら持って帰ってこなくていいからね。そのまま捨ててきてよ』と注意して送り出した。


『ギャン、ギャァン(わかった、臭いの捨ててくる)』と鳴きながら三匹は森の中に走って行った。


 なんだか狩りの楽しさに目覚めちゃったみたいだな。


 楽しんでくれているなら、それでいいけどね。


 ふいに、トゲトゲ草の草むらの外に何かが落ちてきた。


 シャインにそれを照らしてもらうと、首の無いフォレストイーグルが何羽か落ちている。


 風の精霊:エアーが舞い降りてきて満足そうに言った。


 [手ごたえのないヤツラじゃったわ。チョンとウィンドカッターでてやったら、ポロリポロリと首が落ちてしもうたのじゃ。マークはコレを食べるのじゃろうと思うて持ち帰ったのじゃが、いらぬか?]


『いや、もらっておくよ。ありがとう』


 オレは空間収納にフォレストイーグルをそのまま吸い込んだ。街に出て冒険者登録をしたら売れるだろうからね。


 [おや?、子どもたちはどうしたのじゃ?]


『森の中に臭い生き物がいるから、それを狩りに行ったよ』


 [臭い生き物じゃと! わらわは行かずともよいわな]


『ああ、クロとバリンが一緒に行ってるから、エアーはここでのんびりしたらどうだ?』


 [そうじゃな、ここは……魔素が少し濃いが……穴を掘ったのじゃな]


『ああ、ホープが少し魔素が足りないというから、ノルムと掘ったんだ。いい感じに魔素が濃くなっただろう?』


 [そうじゃな、これくらいの濃さはよいな]


 エアーもトゲトゲ草の草むら周辺をフワリフワリとただよいながらのんびりとし始めた。


 


 

 

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