第6話
「今日は暑いからひやむぎにしようか。」と、一緒にスーパーに来ていた篠木目は又庭に言う。
「いいですね。」とは言ったものの、又庭には具体的な「理想のひやむぎ像」が思い付かない。
そんな又庭に、てきぱきと篠木目は指示を下す。
「揚げ茄子に茗荷、それにシソくらいでいいかな。ああ、今日は新鮮なほうれん草があったから、それと和えるシラスを買って。」
さて、自宅に帰った又庭は、材料の全てを見ながら首を傾げていた。
「博人さん、何からどうすれば良いですか?」
「まず、揚げ茄子は刻んだ茗荷と、味噌で和えるんだ。」と、手は出さずに篠木目が指示を出す。
「それは中火で。味噌いれたら、焦げないように弱火にして。ああ、みりんと料理酒も入れようか。シソは最後に。」
言われたとおりに、又庭は一生懸命に料理を作る。それが終わると、次はほうれん草とシラス和えの出番だった。
「ほうれん草はふにゃふにゃにならないように、さっと茹でて、茹でてから洗うんだ。根本に砂利が入ってるからそこを丹念に。で、根本を数センチ切って、大体六等分にする。」
「そんなにスラスラ言われたら、忘れちゃいます!」
まるで又庭は、篠木目の弟子のようである。
「はい、次はひやむぎを茹でる!最高級品の揖保乃糸だからね。5分くらいが私の好みの茹で具合だ。」
なんとか言われたとおりにこなして、「理想のひやむぎ像」が現れた時には、感動さえしていた。
「僕は言われたとおりにやっただけなんですけど、それでこんなに美味しいものができるんですね!」
ひやむぎは篠木目の分はなく、篠木目は相変わらずのダイエットを続けて、トッピングの茄子の和物とほうれん草だけである。
「博人さん、ひやむぎ、少し余ってて…」と誘惑する又庭だが、篠木目はぐっとこらえて、
「それは、木賊が食べなさい。育ち盛りなんだから。」
と、健康のために炭水化物の不食を貫いたのだった
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