大罪

@RIZU__mozuku

2人だったら大丈夫。

「お姉ちゃん!また勉強してるの?一緒に公園行こーよー!」

「もー、昨日も行ったじゃーん。ほんと公園好きだねえ」

記憶の中で、姉妹が話している。

「違うよ違うよ!公園も好きだけど、お姉ちゃんの方がもっともーっと好きだもん!」

「嬉しいこと言ってくれるねえ。私も瑠香のこと大好きだよ!」

幸せそうなその記憶が、どうしようも無いほど苦しかった。

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「────香、瑠香!」

自分を呼ぶ声が聞こえる。

「えっ、何どうしたの」

「もう!さっきから何回も話しかけてるのに無視するとか酷くない?」

私に向かって怒るその子は、赤みがかった綺麗な髪に、透き通るような白い肌、そして、鈴を転がすような声をしている。

「ごめんって。そんな怒んないでよ有未ちゃん」

「まあいいけどっ、その代わりこの後ちょっと付き合ってよね!チーズケーキが美味しそうなカフェあってさ〜」

機嫌を治したのか、有未ちゃんは私の手を引き、足取りも軽快に歩き出した。

瑠香達の歩く道は、瑠香達と同じ制服を着た人達が、グループごとに固まって帰っている。

そんな中で一際目を引く美少女が私の手を引いて歩き出している。

見た目も可愛くて、運動も勉強もできる。そして何より人望がある……見た目も性格も根暗な私とは大違いだ。

そんな完璧な有未ちゃんが、幼なじみである私の前でだけ、こうして自由人になる。その事が、少し誇らしかった。

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数十分後、瑠香達は道に迷っていた。

「……有未ちゃん、もしかして、カフェがどこにあるか分からなくなってる?」

「うっ…この辺の地図丸暗記しても自分がどこにいるのか分からなかったら意味ないんだね……」

「丸暗記したの!?やっぱ有未ちゃんすごいね」

本当、有未ちゃんは努力家だな。

「瑠香だって、このくらい簡単に覚えれるでしょ?」

「いや……私にはできないよ」

それに……

「…私がどれだけ頑張っても、誰も幸せにならないから」

『貴方のせいで、あの子は死んじゃったんだよ』

幼い頃、あいつに言われた言葉を思い出す。

「瑠香……」

有未ちゃんがなにか言いたそうな顔をしていると、突然私の携帯から音が鳴った。

「……メール?」

見たことも無いアカウントから、URLが送られてきている。

「なに?このURL。見てみようよ」

「いやでも、このアカウント誰かわかんな……」

「え?」

私の説明を聞く前に、有未ちゃんはURLをタップしていた。

その瞬間、辺りが眩い光に包まれた。

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「……え…」

光が収まった頃に目を開くと、そこは、全く知らない場所だった。

「なに……ここ…」

隣で有未ちゃんが怯えた表情で問いかけてきた。

「瑠香…その服、どうしたの?」

見てみると、私の服は、さっきまで有未ちゃんが着ていたものそっくりになっていた。

逆に有未は、私が着ていた服を着ていた。

「有未ちゃんこそ、その服……」

「えっ!ほんとだ……」

周りを見渡すと、私達以外にもたくさん女の子がいた。

状況を理解する間もなく、携帯から通知音が鳴った。周りの子の携帯からも通知音が鳴っていた。

通知を開くと、さっきのURLのアカウントから、一通のメールが来ている。


『この度は『魔法少女デスバトル』にご参加いただき、ありがとうございます!

突然ですが、皆さんには殺し合いをしていただきます!

皆さんには、それぞれ固有魔法を付与させていただいております!

金森瑠香 さんの固有魔法は、『巻き戻し』です!巻き戻したいと思えばなんでも戻せますので、この魔法を使って、最後の一人になれるよう頑張ってください!』


「……は?」

殺し合い?魔法?日常生活で使うことのない言葉が並んでいて、理解するのに少し時間を要した。

どうやら私は、漫画でよく見る、デスゲームとやらに巻き込まれてしまったらしい。

「殺し合いって……どういうことよ!!!」

近くにいた高校生くらいの人が金切り声を上げた。その友達らしき人が

「ちょっと…!落ち着いてよ」

と、なだめようとしたが、落ち着けなかったのか、友達の手を振り払った。

すると、その手が点滅し──────弾け飛んだ。

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「…いやあぁあああぁぁあぁ!!」

人の手が弾け飛ぶ、そんな残酷な光景に耐えかねたのか、見知らぬ誰かが叫んだ。

そしてその叫び声をきっかけに、その場にいた人、私と有未ちゃんも、蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。

私達は、近くにあった廃墟に逃げ込んだ。

「どうしよう…!有未ちゃんどうしよう…私達殺し合わないといけないの?どうしよう」

混乱しているせいか、どうしようとしか言えない。

すると、有未ちゃんが私の手を強く握って、

「大丈夫、2人だったら、きっと大丈夫だよ。」

そう、力強く言ってくれた。

私の手を握るその手は、小刻みに震えていた。

有未ちゃんだって怯えているはずなのに、こうやって私を安心させようとしてくれている。恐怖心を煽るようなことしか言えない自分の口を呪いたくなった。

私は有未ちゃんの手を握り返し、無理やり笑顔を作って

「そうだよね、私と有未ちゃんなら、大丈夫だ。」

そう言った。

下手くそな笑顔だったかもしれない。私にこんなことを言われても、心強くなんてないのかもしれない。でも、今の私には、こうする以外に出来ることがなかった。

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数え切れないほどのモニターが置いてある部屋に、二人の少女がいた。

「……また、始まったのね。」

一人の少女は、悔しそうに呟き、振り返った。

「…貴方はどうするの?」

少女はもう一人の少女に向かって、問いかけた。

少女はゆっくりと顔を上げる。

「……今回は、私も出る。今回で最後だからか、イレギュラーがあまりに多い。私が行かないと、大変なことになるかもしれない。それに……」

少女は1枚のモニターを見る。

「…今回は、私の宝物がいるからさ。」

モニターには、瑠香の姿が映し出されていた。

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