第4話一樹の願い事
一樹の願い事
お試し期間中に叶えられた願い事の状況を踏まえて、ティアナと本契約するかを判断することになった。
一方的にこちらが有利な契約内容は、やはり怪しさいっぱいではあるが、自分の願いが叶うのは嬉しいものだ。
何が良いかいろいろ考えてみたけれど、まずはティアナがいくつか提示していた中から一つ、お願いしてみることにする。
願い事が決まったので、さっそくスマホの電源を入れて、女神アプリを起動しティアナを呼び出した。
「一樹君、願い事が決まったのね?」
「いや、それよりどうしたの? 目の下にクマが出来てるよ」
「ああコレ? ちょっとね。 ライバルに大きな差をつけられてて、眠れなくて・・・」
ティアナは大きなあくびをしながらボソッと答える。
「ライバルって?」
「えっ、 ああ 気にしないで。 こっちの話なので」
とティアナは、掌をひらひらさせる。
「それで一樹君の願い事は何なの?」
「うん、ちょっと異世界に行って冒険をしてみたいなっと思って・・」
「あらあら、素敵な願い事じゃないの」 ティアナはニコニコと機嫌がよい。
「でもなぁ・・ もうすぐ中間テストなんだよ」
「それは心配ないわ。 こっちに戻って来るときは、向こうに行った直後の時間だからね」
「マジかよ。 ってことは、今異世界に行ったとしても、戻って来たときに時間は進んでいないってこと?」
「正解♪」
「すっげぇーーー」
「じゃあ俺、異世界に行く!」
「わかりました。 それでは女神ティアナの名のもとに、汝 斉藤一樹の願いを叶えましょう」
ティアナは、そういうと手に持った黄金の杖を天に向かって高く掲げた。
すると頭上に巨大な穴が開き、俺はその中へと吸い込まれて行った。
・・・
・・
・
「かずきくん・・ かずきくん・・ 着いたわよ。 起きなさい」
「う、う~ん」 やけに体が重い。 両手で地面を突っ張りゆっくりと起き上がる。
と、眼下には山々が連なって見えるではないか。
「ここは、いったいどこなんだ?」
「あー 今から説明するから良く聴いてね~」 ティアナの声はするけど姿が見えない。
「ここは天界の1階層よ。 天界は全部で10の階層に分かれているの」
「なんだ、異世界じゃないのかよ」
「天界は上層階に行くにつれて、位が高い神が住んでいるの」
「それって、タワマンの高層階マウントみたいなものなの?」
「ちょっと違うけど。 上層階に上がるのためには、ちゃんと試験に合格しないといけないのよ。
だから、実力も含めてその階層に相応しい神達が集まっているの」
「ふ~ん」
「それで、ここ1階層は生まれたばかりの神の最初の修行場と上級神の遊び場を兼ねているの」
「神様の修行場? それじゃあやっぱり異世界じゃないのか・・」
「そうよ。 でもね、設定は異世界そのものだから安心して」
「いま設定って言ったよね!」
「まあ、この1階層は上級神が創造したものだから、ある意味設定でいいんじゃないのかな」
「つまり、ここの修行場は異世界みたいなものってことか」
「そのとおりよ。 たぶん一樹君が想っている異世界に限りなく近いかと」
「ところで、姿が見えないけどティアナはどこにいるの?」
俺がキョロキョロしていると。
「ほら、ここよここ」 なんだか声が頭の上から聞こえるような。
かと言って頭上を見上げても、真っ青な空が広がっているだけだ。
いや、虫みたいなのがクルクルと輪を描いて飛んでいた。
それが目の前まで飛んで来てわかった。 それがちっさいティアナだったのだ。
「それじゃあ一樹君、早速出発しましょうか!」
第五話(冒険のはじまり)に続く
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