胡蝶の夢でアイに染まる
十南 玲名
プロローグ
もうちょっと、もうちょっとと自分を鼓舞する。目の前にはでこぼこな灰色の階段と、まだまだ遠い頂上。何度も見慣れた景色。何度来ても好きになれない景色。お気に入りの赤い運動靴がチラチラと目に映る。
この階段は嫌いだ。なんと言っても長いし、一段ずつ両足を揃えては、足を高く上げないと階段を上れない。そんなだから、まだ半分も来ていないのに、一段上るごとに足の重さが増しているような気がする。
ここでやめてしまえば、楽だろうか。足を止めてしまえば、楽だろうか。
でも。と、てっぺんを睨みつけて、また一つ階段を上る。僕がここを上ると決めたから。願いを叶えてもらうために頑張ると決めたから。また一歩足を踏み出す。
ハァハァと酸素を求める呼吸音がどこか遠くに聞こえる。髪をつたって落ちてきた汗が目に沁みる。
「つい、た、ぁ!」
ゼーハーと倒れ込むように一番上に上りきっては、視界いっぱいのオレンジ色に目を瞬かせたのを覚えている。
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