第38話

「流石にこのまま種や苗を植えることはできないよな」


 北の街の家に帰ってきたので、本来ならすぐに畑の方に行く予定だったが、今はマグマの番人から出た宝箱のアイテムをしっかりと見たくて家の中にいる。


「マグマの番人から直接インベントリに入ってきたアイテムはなかったから、あの硬そうなボス素材が手に入らなかったのは残念だけど、それでも宝箱はテンション上がったな」


 そう言いながらインベントリからアイテムを出していく。


 マグマな置物、マグマな楽譜、マグマ袋、宝の地図、魔法の笛、切れる鋏、この辺は説明がないので一旦置いておくとする。


魔獣用アイテム『変わらない道』

名前:変わらない道

効果:魔獣の体を現在の状態に保つ。体だけであり、スキル、ステータスに効果は無い。

説明

ドロップ品:特定の魔獣に使うことのできるアイテム。現在の姿のままにすることができる。外見以外に効果はないが、体の重さ、大きさが関係するスキル等は全て現在の姿が基準になるものとする。


装備品『怒りのアンクレット』

名前:怒りのアンクレット

効果:火耐性上昇、雷耐性上昇、スキル攻撃範囲・威力上昇、スキル使用不可(足)

説明

ドロップ品:火耐性、雷耐性を上昇させ、スキル攻撃範囲・威力を上昇させるが、足を使用するスキルを使用不可にする。


装備装飾品『暗闇の照明』

名前:暗闇の照明

効果:暗闇耐性上昇、接触時偽装解除、照明装置

説明

ドロップ品:暗闇耐性を上昇させ、接触した物全ての偽装を解除する。暗くなると周りを照らす。


 なかなかどれも面白そうな性能をしている。


 そして先程とばした中で最初から知っているのは、魔法の笛だ。

 魔法の笛は、1番カジノイベントの景品交換で当たりだったと言ってもいいくらいの活躍を見せている魔法シリーズなため、期待できる。

 何に使うのか具体的な場面は想像できないが、ただの楽器ではないはずだ。


 そして宝の地図も分かりやすい。地図に印が付いているため、おそらくそこに宝があるのだろうが、正直見てもどこなのかわからないので保留かな。


 切れる鋏は散髪用なのか、紙を切るのか、布や糸を切るのか、はたまた植物を切るのか、料理用なのか、全く分からないが、鋏なので何かを切る時に使ってみよう。


 そして残ったマグマシリーズの内、マグマな楽譜はおそらく曲が書いてあるのだろう。丁度いいし魔法の笛で演奏できればなにか起こるかもしれない。


 マグマ袋は、マグマを入れることができるのか、マグマのように熱いものも入れられるよってことなのか、袋の中がマグマの温度なのか、中からマグマが出てくるのか分からないが、どれも使い道は探せばありそうだ。


 最後のマグマな置物は、分からない。マグマな置物だ。本当にマグマな感じだ、うん。マグママグマ、なんだよマグマって。なんの効果があるんだ? いや、効果なんてないのかもしれない。

 神聖な置物もそうだけど、芸術って難しい。


 とりあえずマグマな置物はリビングに飾っておくことにする。

 絶対に冷蔵室・冷凍室に近い場所に置くと良くない気がするので、リビングでもそことはなるべく遠い反対側の方に置いておくことにする。


「良し! 一旦整理終了」

「クゥ」「アウ」


 俺が荷物整理をしている間、2人はギムナさんに焼いてもらった串焼きと、ベラさんのとこで買ったピザとパンを食べていた。


「うわ、もう無くなるな」


 ウルがいっぱい食べるようになり、食料の減りも早くなったのでまた今度多めに買いに行こう。


「ユーマ様、おはようございます」

「あ、おはようございます」


 セバスさんが今日もライドホースの様子を見に来てくれたので、一緒に居る白髪の人に一時的な立ち入り許可を出しておく。


「今日もよろしくお願いします」

「ええ、任せてください」


 セバスさん達にライドホースのことはお願いして、ウル達と一緒に俺も少しご飯を食べる。


「おはようございます」

「お、ユーマくんおはよう。どうしたんだい?」

「すみません。また相談したいことがあって……」


 俺はセバスさん達に挨拶しご飯を食べたあと、フカさんの家に来ていた。


「なるほど、不思議な種と不思議な苗か。確か苗の方は木が成長して立派な実ができることが多いはずだよ。そして種の方は何が出来るか本当に予想がつかないね。花が咲くかもしれないし、土の中に食べられるものが出来るかもしれない。ただ、どれも植えるだけで栄養を生み出すとされているから、周りにある種や苗にとっては良いはずさ」


 なるほど、肥料的な役割もあるんだな。


「じゃあ結構適当に蒔いても大丈夫そうなんですね」

「それでいいと思うよ」

「ありがとうございました」


 フカさんからのアドバイスはいつも頼りになる。ほとんどこっちが聞きたいことを知っているから、迷いなく動けるのはありがたい。


「じゃあこの前植えた場所の横に縦長で植えるか」


 これで今度植えたいものが出来た時もその横に植えることになるので、不思議な種・苗効果を得られるだろう。


「正直全く力を入れなくても耕せるけど、他に効果あるのかな?」


 いつもお世話になってる魔法シリーズの万能農具を使っているが、俺が気づいていない良い効果もあるんだろう。作業もスムーズで、あっという間に終わった。


「良しこれでオッケーかな」


 ちょっと何ができるのか楽しみだ。

 既に他の種も苗も成長していて、ゲーム内時間で3日間くらいしか経ってないが、目で見て育っているのがわかると嬉しい。


「じゃあこれからはここも水やりスペースだな」

「クゥ!」「アウ!」


 ウルの背中に乗ってルリが水を撒くのがいつもの光景になりつつある。

 本当にフカさんがこの家のために用意してくれたホースが長くて良かった。


「マウンテンモウもおはよう」

『モウ』『ムウ』


 2体は仲良く生えている草を食べている。


「で、これで一旦終了だな。ウルもルリもありがとう」

「クゥ!」「アウ!」


「丁度いいしマウンテンモウ達のミルクも絞ってみるか」


 魔法の手袋をはめて、万能瓶を片手に持つ。


 乳搾りなんてやったことはないが、相手はオスでもミルクが出るモンスターだし、それっぽく絞ればいいだろう。痛そうだったり、嫌そうだったらやめるし。


「よし、痛かったら言ってくれよ。あと、やめて欲しい時もな」

『ムウ』


 オスのマウンテンモウにまずは挑戦してみるが、思った以上に出てくる。


「ルリ、一旦この瓶持ってくれ。あと、ウルは錬金部屋から置いてた万能空き瓶全部持ってきて!」

「アウ!」「クゥ!」


 なんとなく同じ場所を絞るのは良くない気がしたので、全部の乳から満遍なく搾っておいた。


『モウモウ』

「分かった、お前もやるからちょっと待ってくれ」


 マウンテンモウは嫌がる素振りもなかったので、このままもう1体も絞ることにする。


「メスのほうが多く取れて、空き瓶が無くなったな」


 オスは4本、メスは6本ミルクを取ったが、どちらもまだまだ絞れそうだったので、追加で専用の容器が必要そうだ。


「ゲームだから直接飲めるんだろうけど、俺はやめとこうかな」


 ウルは直接マウンテンモウのミルクを飲んでいる。

 ルリも真似して飲もうとしたので、せめて瓶から飲むようにお願いして渡している。

 

「クゥ」「アウ」

「分かった分かった俺も飲むよ」


 結局2人に急かされてルリの残した瓶のミルクを飲むが、勧められただけあって美味しい。

 冷たいものに慣れているため少し違和感を感じるが、この温度だからこそミルクの美味しさがダイレクトに感じられる。


「ちょっとこれは職人ギルドの出番かな」


 マウンテンモウ2体だけなので、あまり量はないと思っていたが、全くそんなことはなかった。これは早急にミルクの容器が必要だろう。


『モウ』『ムウ』

「ありがとう、美味しかったよ」

「クゥ!」「アウ!」


「じゃあ先に鍛冶屋の方に行ってから、その後ミルクの容器を買いに行こっか」

「クゥ」「アウ」


 俺以外にもカジノイベントで鍛冶職人カヌスのオーダーメイドを交換している人が居るはずなので、早めに作ってもらうようお願いしに行きたい。




「ここか」


 西の街に移動して一直線でカヌスさんの工房まで来たが、思っていたよりも小さい。


「お、プレイヤー様が来たってことは、カジノの景品か?」

「そうです。今からお願いしてもいいですか?」

「あぁ、他のと同時に来られたらこっちも困るから、むしろありがたいな」


 話はトントン拍子に進んでいき、早速装備製作を頼むことに。


「この素材全部使っていいのか?」

「ええ、というかそれ以外にも余ってる素材を売りたいんです。はじめの街付近で倒したモンスターの素材なので、あまり強くはないと思いますけど」

「いや、今はそれでもありがたい。弟子に加えてプレイヤー様まで増えたからな」


 というわけではじめの街で取れたエリアボスの素材全てと、ワイルドベアーの爪と毛皮、ポイズンスライムゼリーと核、ワイルドボアの牙、ワイルドベアー亜種の爪と毛皮を渡す。


「随分あるな、これで全部か?」

「いや、まだありますよ。ウッドウォーカーの枝と大きな毒針、ポイズンベアーの爪とワイルドドッグの牙、レッドスライムの核とゼリー、ダークホーンラビットの角もあります」

「そうか、それならレッドスライムゼリーを混ぜ込むか。いや、ダークホーンラビットの角を……」


「あの、悩みそうなら全部渡しますよ。大きな毒針は500あるのでたぶん全部は要らないと思いますけど」

「ご、ごひゃく? それなら全て3、いや……5つまでで良い」

「なら数があるのは最大10まで渡すので、余ったのは買い取ってくれないですか?」

「そうだな、分かった。次装備を渡す時に、装備に使った分を引いて素材買取分の料金を払おう」

「分かりました。じゃあ要望としては……」

「なるほど、ではこの素材を使って……」


「ありがとうございました」

「おう、他の客が来たり、プレイヤー様が来なかったら3時間もあれば出来るだろう」


 アンさんの時もそうだったが、装備ができるのが早く感じる。

 実際は4種類の装備に武器1つの、計5つの装備を作る時間が3時間ということなので、鍛冶師をしているプレイヤーからしたらめちゃくちゃ遅いのだろうが、ただ作ってもらうだけのプレイヤー側としては本当に助かる。


「鍛冶師といえばガイルからの返事がまだないな」


 どの道ガイルが西の街に来ないと、カジノで交換した工房は使えないので、西の街に着いたらチャットして、とガイルに送っておく。


「で、ミルクを入れておく容器はどうしようかな。別にどこで買ってもいいけど、一応北の街の職人ギルドで買っておくか」


 西の街は色んな商品があるから良い物はありそうだけど、北の街も農業が発展してるから良い物が売ってそうだし、何より自分の家がある街には還元しておきたい。


「じゃあまた北の街に戻るぞー」

「クゥ」「アウ」


 こうして鍛冶職人カヌスに装備を依頼した俺達は、すぐに北の街へと戻るのだった。



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