第1話


 ――ジルトル王国。騎士団本部。


「……」


 ジッと見つめる先にいるのは、現在訓練中の騎士たちの姿。


 俺は死んだ後。この国に転生し、この国の公爵『サファエル家』の長男として生まれ『リン』と言う名前を付けられた。


 つまり、この世界での俺の名前は『リン・サファエル』である。


「なぁに難しい顔してんだ?」

「ん? ああなんだ。ルイか」


 そして、そんな俺に話しかけて来た茶色の髪にこれまた茶色の目をした文字通り「好青年」をそのまま表現した様な男性が『ルイス・アルリア』だ。


「なんだとはなんだ。なんだとは」

「ハハ。悪い悪い」


 少し拗ねた様子で言う彼との付き合いは随分と長い。下手をすると前世の寿命よりも長い。


「……思ってないだろ」

「まぁな」


 そう返すと、彼も「やっぱり!」なんてこちらの予想通りの反応をしてくれるから面白い。


 このジルトル王国は国の大きさはそこまで大きくはないが、自然が豊かなで、地図から見て北の方には大海原が広がり、南の方は大きな山がそびえ立っている……そんな国だ。


 ただ、この国に「魔法」というモノは存在しない。


 それを踏まえて考えると、この国は中世ヨーロッパに近いのかも知れない。もちろん行った事などないが。



 前世よりも前の時代だと最初は思ったが、どうにも様子が少し違うと後になって買いが付いた。


 ところどころ前世を彷彿とさせる物などが存在しているところを見ると、もしかしたらこの国は厳密な中世ヨーロッパではなく「想像上の国」つまり、俺が前世の頃にたまに見ていた転生物でよくあるゲームや本などの世界なのかも知れない。


「それで? 何をそんな難しい顔をしていた訳ですか? 騎士団長殿は」

「……今度の合同演習の人選をどうしょうか考えていただけだ」


「合同演習? ああ。ミリタリア王国の」

「それくらい頭に入れておいてくれ」


 呆れた様子の俺に対し、ルイは少し慌てた様子だ。


「いやいや。それにしたってまだ先の話だろ」

「これだけの人数から選べって話なんだから早めに考えて当然だろ」


「真面目ですねぇ」

「悪いか」


「いやいや。それでこそ最年少で騎士団長になられた方ですよ」

「……さっきの仕返しか?」


 そう言うと、ルイはニヤッとした。ただ、それを言うなら自分こそ『最年少』騎士副団長のはずなのだが。


 見た目の好青年ぶりに対し、少しおちゃらけた言動が目立つが、剣の実力は申し分ない。それもまた彼の良いところなのである。

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